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248話 皇国への道のり②

 二日目も同様にアキト一行はオンボロ荷馬車に乗車し、皇国を目指していた。

 二日目に入ろうとも少し外れた道を使うという一貫したパルスの道選択により、アキトは再び振動地獄真っ只中だった。

 リ・ストランテから皇国の道のりの序盤は普通の道だが、序盤が終わると中盤から終盤まではずっと荒道が続く。

 何故かと言うと帝国と皇国の間にある大森林を越えなければならないからだ。

 その大森林は、普通の森林とは違い恐ろしいほど面積が大きい。

 アキトとシロネが最初に出会った森の何倍あるか分からない。

 皇国自体、冒険者ギルドに入ったばっかりの新人が行くような国では無いと受付にも言われた位だったのでアキトもある程度覚悟していたが別の意味も重なって精神的に辛かった。


 お昼頃から超巨大森林:ヴェルゼビュートに入り、辺りは緑一面になる。

 少し山形にもなっており、木々の大きさ、高さも他の森林区よりも育っており日の光が入りづらくなっている。

 なので、ずっと薄暗い。


「凄いのー」

「ほぇー」


 シロネとミシロは、高い木々を物珍しそうに見物している。

 二人のように声には出さないもののアキトも外を見て驚いていた。

 それくらい日の光と木々に生い茂る葉っぱとの間に生まれる幻想的な光景は美しかった。

 良いものが見れて回復したアキト達一行は、夜まで何回か休憩を繰り返しながら夜になる前、野営地点を設けて夜ごはんの準備をしていた。


「すげぇ……」

「どうだい、凄いだろ」


 パルスは、胸を張るように夜ご飯に使う食材達を並べる。

 食材を見るだけで超豪華な食事事風景が想像出来る程豪華だった。


「良いんですか?俺なんかに」

「いや、今回誰であろうと食事は振る舞いたいと思っていたからね」

「ありがとうございます」


 基本、ギルドの依頼では相手から指示が無い限り、自分の事は自分でまかなう事が基本なのでこう振る舞ってもらえる事はよほど気前が良く無いとやらない事だ。


**


「凄い美味しいです」

「どうだい、僕はこう見えて料理の腕は結構あるんだよ」


 この世界に来て一番美味しかった。

 それほどパルスの調理技術が卓越していたのだ。

 片付けをして、それを終えると火の前でアキトとパルスは少し時間を潰す事にした。


「ここは昼間は幻想的だが夜はとても怖いよね」

「そうですね、同じ森とは思えないです」


 夜になるとこの森は真っ暗になり、草木が大きく大量に生息している分視覚やアイテムでカバー出来る範囲が限られてくる。

 危険極まりない状況になる。


「普通はもっと人が通りやすく整備された道があるんだが、少し遠回りでね」


 パルスは、明らかに周りを警戒しながら話をしており、若干額に汗までかいている。


「なんでそんな急いでいるんですか?」

「うーん……確かにそう思われても仕方ないよね……」


 パルスは顎に手をやり考える。


「何か言えない事情があるならこれ以上は詮索しないので大丈夫ですよ」

「まあ……いっかな」


 パルスは、覚悟を決めたように口を開く。


「実を言うと僕は……」


 パルスが、話始めた途端張り巡らせてある複数のアイテムから通知飛んでくる。


(アキト!!)


 アキトにシロネとミシロは同時に警告する。


(分かってる、シロネ頼む)

(うむ)


「来たか……」


 アキトはパルスを見ると、何故か瞳から涙を流していた。


「ここは、僕が囮になるからアキト君は逃げなさい」

「だめです、依頼者を護衛するのが俺の仕事なんで」


 少し取り合っている時間だけで向かってきた何者かがアキト達の前に到達する。

 アキトは、パルスの前に立つ。


「早すぎる……」

「こんばんわ……商人さん……と、坊や」


 アキトとパルスの前に現れたのは盗賊や野盗のような生やさしいものではなかった。

 敵は三人、殺意を撒き散らしながら一人は地上、残り二人は木の上から様子を伺っている。

 人間は一人もおらず、皆人間とは乖離した生物が三体そこに立っていた。


「まさか、あなた以外にも人がついてるとは思わなかったわ……パ・ル・ス」

「逃げなさい……アキト君」

「嫌です」


 パルスの必死の説得をアキトは完全に否定する。


 地上に立つのは髪が長い爆弾のように膨れ上がった紫色の体を持つ生物、口から舌を出しありえない量の唾液を地面にこぼしている。

 そして、木の上に立っている二体は全身が黄金色と銀色に輝く四足獣。

 顎が異様に発達しており、鋭い爪と牙はとてつもなく硬く出来ている。


「久しぶりに見たな」


 アキトは、下にいる生物は知っていた。

 OOPARTSオンラインで戦った経験がる。

 だが、今のアキトのレベルで戦うような相手ではなかった。

 それに、容姿が所々違い、喋り、自立している。

 これだけで、もうOOPARTSオンラインで戦った経験など無意味に等しくなる。


「私たちはその男に用があるのよ、もし逃げるのなら見逃してあげるわよ」

「ほら、アキト君!」

「だから、俺は大丈夫です」

「あらあら、残念だわせっかく背を向けた瞬間に殺してあげようと思ったのに」

「ほんと、そう言うの好きそうだよなお前」

「そうよ、大好物よ!」


 アキトと、パルスは気づかれないよう少しずつ後退するが、完全に気づかれており意味がなかった。


「パルスさんは知っているんですか?あれ」

「ああ、連邦国の兵だ」

「連邦国……」


 アキトは、連邦国と聞いて納得する。

 学園で情報を漁っている時偶に出てきた国名だ。

 人間を食糧とみなしており、要注意とされている国家。

 人間以外の種族を異口同種(バルゼルガ)という名をつけて一つの種とし、統率している。

 人間のように様々な国を行き来したり、貿易したりせず自国だけで全て完結するというとんでもない国土を持つ国だ。


(久しぶりに聞いたの……その国名)

(知ってるのか)

(昔の……人間に間違われて襲われた事があるのじゃ)

(なるほど)


 シロネは吸血鬼だが、人間と違いは無いに等しいので間違われるのも無理もない。


(と言う事は人型の時点でアウトだな)

(まあ、人型でもわしくらいになると無理じゃ)


「そう、私達はフレイス連邦国、咎罪(むざい)に仕えるクシャトリガ(超級兵)の一人、ヴァネッサ。そして上にいるこの子達は私の可愛い部下、ヴァイス(上級兵)のエットとトッポよ」

「早く殺しましょう」

「そうしましょう」

「まあ、待ちなさい二人とも」

「ご親切にどうも……」


 真ん中を陣取るヴァネッサは、種族ゴーバンという様々な種族を混ぜたハイブリット種OOPARTSオンラインオリジナルの敵キャラで、適正レベル七十を超える。

 他二体に関しては見たことも無かった。

 ……アキトが想定出来るのはここまでだった。


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