244話 明日からの予定
レイ・クラウド帝国領リ・ストランテーー
宿屋パイオニアには魔導学園の三年間を終えたアキト達が集まっていた。
魔導修練祭のてっぺんを三つ、しかも連続で取った栄誉はこれまで……いや今後合わせても、もうないだろうとウタゲは最後に言っていた。
単純にアキトのレベルが上がったのもあったが、敵である学園に才ある人が少なかったというのもある。
一年で初めて経験した魔導修練祭が最高に最悪な敵だった。
戦ったオーパーツアイテムやけんについても調査したが、2年間行動範囲が限られてしまったので大きいな収穫はなかったが小さな収穫はいくつかあった。
一番大きいかったのは、この世界固有のオーパーツアイテムがあるという事ーー
オーパーツアイテムに対してレベル五十でも対応できたという事は収穫だった。
2年、3年と2年間でレベル六十まで上げ切ったが50からの経験値の重さを痛感していた。
ただ、これからはかなり自由に動けるようになるのでレベルを上げつつ国を渡りながら情報を集めていきたいとアキトは考えていた。
そして、けんについてだが魔導修練祭の過去の履歴をアキトは遡ってみた。
すると、一時期圧倒的な三年間の戦績を叩き出した学園がカイルド皇国にあったのでそこからあらっていくため最初の目的地はカイルド皇国にしようとシロネとミシロの三人で話し合った事だ。
基本、ミシロはアキトの意識の中におり、影の中にいるシロネとは犬猿の仲なのか毎日のように和衷協同を介して喧嘩をしていた。
これまでの事をベッドの上で整理していると一階が騒がしくなってきたので準備を済ませて一階に降りる。
「お!アキト!早いな」
「ってバルト、なんでそんな目の下に隈作ってんだ?」
朝っぱらから……いや、昨日の夜からずっと起きていたバルトの目の下にははっきりと隈があり、寝不足を知らせてくれていた。
バルトもまた、一年生の時とは見違える程強くなった。
そもそも、アキト周辺にいた人達は皆、魔導学園三年間で成長する成長幅を一年生で達成していた。
なので残り二年間分は余剰となる。
強くなっているに決まっている。
半分くらいはウタゲのせいでもあるが、バルト達にとっては良い方向に向いていた。
アキトが次の言葉を発しようとした時、もうすでにバルトはアキトの視界から消えていた。
「全く……悪いアキト」
「いや大丈夫だぞ、いつものことだし」
眠りに入ったバルトをしっかり地面に倒れた事を確認してからバルトを起き上がらせユイが支える。
なんだかんだ不恰好ではあるがこの二人は仲は良かった。
「手伝うよ」
バルトを二階の部屋に連れて行き、ベッドに放り投げるように寝転ばせる。
「二人はこのまま帝国に残るんだっけ」
「そう……だね。私は、お姉様と対等になるまで上り詰めたいから」
「バルトも同じだったな確か……」
「バルトもライバルみたいなものだからね」
バルトも兄を追うのと同時に国の兵士として故郷の自分の村を守りたいと言っていたくらいだからな……
アキトは過去を遡ってそんなような事を言っていた場面を思い出そうとはしたが、あまりにもバルトらしくないからか記憶から出てくることはなかった。
「一階戻るか」
「うん」
アキトとユイが一階に行くとエル、トルス、エーフの三人が朝ごはんを食べている所だった。
「おはよう!アキト、ユイ」
エルがアキトとユイに気づく。
「おはよう」
適当に朝の挨拶をかわし、アキトとユイもテーブルにつく。
ホルドはアキト達が来る事をまるで分かっていたかのように手際良く朝ごはんを並べてくれる。
それに礼を言って食事をしながらアキトとユイは三人と話し合う。
「僕達は、一旦村に帰ってから決めようと思っててね」
「まあ、そんなすぐに答え出せって方が難しいもんな」
「アキト達は凄いよね、既に目標があるんだから」
「別に早いもの勝ちじゃないんだから焦る必要はない」
「うーユイちゃん!」
ユイがフォローを入れるとエーフはユイに抱きつく。
エル、トルス、エーフの三人は一旦村に帰るとはいえ絶対に何かしら己の道を見つけるとアキトは思っていた。
それくらいの実力はもう、一人々に備わっている。
アキトも人探しという何ともいえない目標なので人の事をとやかく言える立場ではないいが、少なくともここまで付き合ってきて感じた事なので信じてもいいだろう。
「あっ!またシロネちゃん隠れてる!」
ユイがシロネがアキトの影に居る事に気づくとアキトに目配せする。
するとアキトは合点承知と言わんばかりにシロネをひきづり出す。
寝ていたらしくエーフの思いのままだった。
「やめるのじゃエーフ……zzz……ああーああー」
変な夢でも見ているのかエーフに弄られながらぼやいていた。
シロネとは、今後もアキトについていくという事だったので、当分一緒に行動する事になった。
「あらあらもう食べちゃったの!?」
久しぶりに顔を合わせて、皆の食いっぷりがさらに増したのでホルドは驚く。
「みんなそれぞれあるだろうけど、暇があったら偶には顔出してちょうだいね……いつでも歓迎よん」
「はい」
ここは、ご飯も美味しいし店主も良い人なので少なくともアキト以外は何度もお世話になるという未来が見える。
朝ごはん後の謎のデザートを食べながら今後の事や他の人達がどうなったかなど話し合っていたら、気づくと数時間以上経っていた。
「頭痛ってー」
文字通り頭を抱えながらバルトが一階に降りてくると店を出るため最終確認を行う。
準備自体は昨日の夜のうちに終わらせてあるので特に何か支度する事はない。
「ほんとバカ」
「な、なんだとユイ!!ーーっ!!頭いてぇえええ!!」
ユイの挑発にまんまと乗せられたバルトは再び頭を抱えて絶叫する。
そんないつもの光景を背にアキトは一番のりで店を出る。




