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239話 ショーの続き

 自分の攻撃を簡単に見切り、手を握りしめたジグを見て、エーリはそれを逆に利用し手を掴み放り投げようと腕に力を入れるが、ジグは一切動じず、動く事も無かった。


 それどころか……


「あなた、握力……ないですね」


 ジグにそう言われ、またおちょくられているとエーリは怒りが込み上げてくるが、その瞬間、ジグは軽く力を入れ手を握りしめ返す。

 すると、握りしめられた手は文字通り潰され、その衝撃が腕までつたい、中から引き裂くようにエーリの片腕が破裂する。


「なっ……あがぁああああ!!!!」


 一瞬で肩までの腕が消し飛び、肉片が辺りに飛び散ると、流石のエーリでも痛みで悲鳴を上げる。

 その様子を間近で見たジグは不敵に笑うと、エーリの逆の手を握り締めようと手を伸ばすととてつもない反応速度でエーリは手を引き距離を取る。


「あれっ?……どうしたんですか」

「きさ……まぁああああ!!!」


 ぼたぼたと大量に出血するエーリは、すぐにアイテムを使い傷を癒す。

 これほどの傷は、流石に自然治癒では修復不可能だ。

 だが、同じポーションでも人間よりも効き目がよく、ハイポーションで腕まで修復させられる。


「へぇ……良いですねその体。では、今度は私から」

「させ……るか……っ!!」


 ジグが動くと思った瞬間、エーリはその微小なジグの動きだけで判断し、再び突進するように迫る。

 動く隙を与えて貰えないジグは、迫るエーリに対し、一切の躊躇無しに手を伸ばす。

 それを簡単にかわしたエーリは、時代級死送人形要素魔法<死死死遊楽/ザルゲージ・デスドーザー>を発動し、昨日ルタに対し出した人形よりもさらに強化され禍々しさを増したペコを再び召喚する。

 大きさも桁違いで、体長は十メートルはあり、纏っているオーラの質も量も、厚さも全てが桁違いだった。


「二対……一ですか……」


 突然、目の前で召喚されたジグは上を向き、その巨大で憎悪の塊のようなペコを見る。

 召喚されたばかりでも一切のラグが無いようにペコは巨大な腕を振り上げ、爪を突き立てると一気にジグに向かって振り下ろす。

 その振り下ろされる腕でのルートを当たるギリギリを進み、エーリはジグを逃さない。


「お前は……遊ば……ないっ!!」

「私は、遊びのつもり……なんですがね……」


 ジグはわざと巨大なペコの方へ避けながら追走するエーリの攻撃を一回ギリギリでかわすと、ペコの足元を思いっきり蹴飛ばす。


「硬いですね……さすが時代級といったところか」


 十メートル以上もある巨体であれば足を蹴飛ばせば転ぶと思っていたジグは、その強靭な肉体に賞賛を送る。

 そのまま、隙が出来たところにエーリが現れ、思いっきり殴り飛ばす。

 吹き飛ばされながらジグは、空中で体勢を立て直し、地面に着地するが勢いが激しく、足がついてもなお勢いは治らない。

 最終的には、闘技場の観客席の壁を利用する形で勢いを殺す。


「久しぶりの戦闘は楽しいですが、そろそろリハビリは終わり……次のステップへ移りますか」


 ジグは、外れた肩を元に戻しながら再びエーリの方へ歩き出す。石版のフィールドへ足を乗せ、階段を上るようにゆっくりと最初の位置に戻る。


 巨大なペコと、その下にいるアーリはジグが来るのを待ち受けていた。


「人間……のくせに……属性……使わないのか?」


 アーリもこれが一番気にかかっていた。普通の人間であれば、アーリほどの力を持つ相手に対しすぐに属性を使って対抗する。

 ルタもそうだったが、力があればそれを使い、戦う事はむしろ当たり前の行動だ。

 相手の実力を見極める為にとっておきを後出しで出す事も考えられるが、それにしても引き伸ばし過ぎている。

 属性を使った上でのとっておきなどいくらでもあるからだ。属性自体を使わないのはどう見ても死にに行くだけだった。


「ああっ!そういえば、私は属性……あのゲームアカウントを使えるんでしたね。忘れてました」

「やはり……お前は……私の……神経を……逆撫でする……なっ!!」

「そうですかね?」


 ジグの元へ攻撃しに行こうとエーリが一歩、足を前に出した瞬間ーー

 これまでにない違和感が全身に駆け巡る。


「時代級遊戯属性魔法<ジグソーパズル・8ピース>」


 ジグは、久しぶりに自分の魔法を発動する。

 エーリ達が立っている石版のフィールドがジグソーパズルになる。

 そして、エーリが一歩踏み出した場所にはピースが埋まっており、エーリが召喚したペコが踏んでいる場所も全てピースが埋まっていた。


 ジグの固有属性は遊戯、様々な遊戯をモチーフにした魔法やスキルがある。

 その中でもジグソーパズルは、範囲系の物に属し、ある一定の範囲をパズルにし、踏み抜くとピースが埋まり、全てのピースが揃った時初めて発動するというものだ。


 今回は、八ピース……

 全体をランダムに八分割にされ、もうすでに七つが埋まっていた。ペコが大き過ぎて殆どの場所を網羅しており、大きさが仇となっていた。


「では……」


 ジグの目の前に場所が最後のピースで、それをジグは踏み抜くと、パズルが完成する。

 そのパズル完成後の絵には大きな魚の口が描かれており、歯が鋭く、魚の胴体が見えないほど絵には口しか描かれていなかった。


 まるで、水上または海上にいるようなフィールドと化し、その中から勢いよくペコの何十倍もの大きさの魚が出現する。


 そして、はっとエーリが気づいた時にはもう既にその巨大な口に飲み込まれた後で、あの巨大なペコ諸共二人をたいらげると、上空で跳ね、再びパズルという水中へ戻り、魔法が発動を自動的に終了する。


「やっぱり、すぐに終わってしまいましたか……残念です……」


 あれだけうるさかった観客は最初の時同様静まり返るがそれに構う事なく、ジグは再び自分の檻へと帰って行く。

 その後いくら探しても、肉や骨、血や死体などの痕跡は一切残っておらず、完全にその場から消え去ったのだった……

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