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204話 即行動

レイ・クラウド帝国 魔導修練祭会場最高席ーー


 魔導修練祭会場となっている帝国の闘技場の中央では、数枚の巨大な鏡のアイテムに様々な場所が映し出されている。

 その中でも一番大きな鏡にリゼラとハルの戦いの模様が映し出されており、二人の激しい属性による殴り合いには、様々な声援が飛び交い、会場はとても激しく盛り上がっているので隣の人の声ですらも届かないほどにうるさかった。

 だが、そんな騒音が一切届かない場所に座っている、レイ・クラウド帝国国王のバルゼイン・クロ二クスとセイルド聖王国の騎士キサラギ・ネルは、お互いの他愛のない話で盛り上がっていた。

 そんな様子をお互いの国の使用人達は、頭を抱えながら見ていたが、リゼラとハルの戦いになった途端これまでにない集中力で見始め途端に静かになったのだ。


「何方が勝つのかしらね」

「今回ばかりは一筋縄では行かん相手だな……ハルよ……」

「そうねぇ……相手の子かなり強いわね、ただ……」


 そう、今の状態では、ハルには到底及ばない事は明確で、バルゼインとキサラギはまた同じ結果だと思った直後だった。


「ほう……あの属性は……」


 アギトがリゼラに渡した強化魔法を見てその結果が分からなくなったのだ。


「あの子も良い属性をお持ちですわね」

「確かにな、これならハルともやりあえそうだ」


 そんな鑑賞会を二人共悠悠自適に送り、遂にリゼラとハルの戦いに決着がつく。


「引き分けか……」

「へぇ……どうせなら腕くらい潰してでもやれば良かったのに」

「確かにな、それくらいすれば何方も勝つチャンスはあったんだが……まだまだ甘い」


 とんでもない事をキサラギは呟くのを近くで控えていた使用人達は聞くが、それに頷く国王も国王だった。

 そして、そのまま鏡に映っていた映像が切り替わり、他の生徒の戦いが映し出される。


「もう終盤、まーた去年みたいにシャーロットちゃんが後片付けして終了かな」


 キサラギは両腕を天に掲げながら蹴伸びし、だるそうな口調で愚痴をこぼす。

 その時だったーー

 突如二人の背に位置する扉が勢いよく開かれ、そこには魔導修練祭の裏方を担当している教師が一人息を切らしながら鬼気迫る表情でいた。


「どうした?」


 すぐさまバルゼインはただ事ではない事を悟り説明を促す。


「魔導修練祭のフィールド下にて、ズ・バイト学園の生徒が監視教師を二名……いえ、四名……殺害しました」


 報告を受けたバルゼインは目で使用人達を促し、即座に動かせる。


「分かった、その場面を映し出せ」

「で、ですが……観客がパニックに……」

「問題ない、既にこの手の場合も想定済みだ」


 こう言った場合にどう動くのかという事も上の位に位置する教師達は把握済みであり、今回のような場合には観客の目と証拠として残すためにあえて映す。そして、精神的なショックでパニックにならないよう、そう言ったショックを和らげる作用の属性を持つ教師を観客席に紛れ込ませているのでもう既に動いているとバルゼインは分かっていた。


 そして、その教師は直ぐに言われた通り巨大な鏡にその映像を映し出し、バルゼインとキサラギは同時に確認する。

 その瞬間ーー

 最後の教師も一人頭を取られながら殺されるという場面がしっかりと映し出され、観客は皆静まり返る。


「ありゃ、ひどいわね」

「確かにな、それに……」

「ハルくん大丈夫かな?いいの?助けに行かなくて」


 ハルとリゼラが倒れている直ぐ近くだった事もあり、キサラギも少し心配になり国王にフォローを入れるが、直ぐにその必要がないと知ることになる。


「心配か……心配なのはこの魔導修練祭が無事終えられるかという事とあなたを無事国に返すことだ。息子の事などさらにもっと後だ」

「鬼ねぇ……」


 キサラギは少し腑に落ちなかったが、今は父としてではなく国王として動かなければならないのでそれもそれで仕方ないかと考えるのだった。


「キサラギ様こちらへ」


 すぐさま、帝国’歪’の一人、ツランがキサラギを安全な場所へ案内する。


「私は、大丈夫なんだけどなぁ……」

「いえ、そうは行きません万が一がありますので」


 キサラギが少し不貞腐れるように言うと、ツランはきっぱりとその申し出を断る。


「さて、レイ」

「はい、今はこの会場の周りと国の周りの警備を強化し、さらに国内部も兵を導入しております。順次会場にいる人達も誘導するつもりです」

「早いな」

「いえ、あれを見てはここまで動かざる終えません」


 レイは、すっと鏡に映るオーパーツアイテムを埋め込まれた、ズ・バイト学園のゲルトを見る。


「レイはどう見る」

「恐らく、未だオーパーツアイテムは内部にありますので動き出すのはここから……そして、さらに強くなると思われます」


 レイがそう言った瞬間、この会場……国中に響き渡るほどの大きな声でゲルトが叫び出す。

 そのせいで、国全体が軋むように揺れ始め、観客も数名がパニックになり始め、国王が座って見ていたガラス窓も叩き割れ、音がダイレクトに伝わってくる。


「始まったか」

「そのようです」

「あいつらにも今回は依頼しておけ」


 バルゼインがそう言うとレイは少し驚いた表情をするが直ぐに理解し事を進める手はずを頭の中に打ち出す。


「今回は高くつきそうですね」

「仕方あるまい」


 そう言うと、レイも部屋から出て行き、残ったのは歪のメンバーの二人とバルゼインのみとなった。


「た!大変です!!フィールドが完全にゲルトに支配され、遮断。さらに、国外へ出る事も入る事も出来なくなりました!!」


 再び、先ほどとは違う教師が現れ、さらに顔色を悪くしバルゼインが促す前に事の詳細を早口で言う。


「分かった。下がれ」

「ははっ!!」


 バルゼインは直ぐにその教師を下げさせると、少し空を眺める。すると、先ほどまで晴天だった青空は真っ黒に染まっており、さらに濃い紫色の幕が国全体にかかっていた。

 国と同様に、今ハルやリゼラ達がいるフィールドも支配されてしまっており、勝手に入ったり出る事も出来なくなってしまった。


「面倒な物を送り込みよって……」


 小さく誰にも聞こえないように怒りを露わにしたバルゼインは、一度椅子に座り直し落ち着く。

 頭をフル回転させ余っている仕事の無い使用人達をかき集め、全員一人一人に仕事を与える。

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