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165話 副会長

 生徒執行会副会長としての地位とこの美貌、それに学園での人気で気づかなかった、いや隠すのが上手いと言った方がいい。

 シロネはこのヴェルダ・アセインを信用出来なくなっていた。


 さっきまで、体を百パーセント支えてくれていて立つ力が半減していたのでかなり楽だったが、シロネがまだ大丈夫だということを分かった瞬間、目の奥の奥の奥の奥の光が消え、その瞬間から態度が変わっていく。


 ヴェルダは徐々に百パーセントの支えからどこまで耐えられるか試しているように徐々に支えの力が小さくなる。

 そして、わしが根性でギリギリのギリ立てるところを見つけると、ずっとその位置をキープして来る。

 それも、他の人には分からないようシロネだけにわざと分からせるようにやるのだ。


 シロネが動けないことを良いことに……

 周りに言ってもどうせ信じてもらえないが、超ドSの悪女だった。


「嘘だろ……おい……はぁ……」

「もう十分以上経ってんだぞ……はぁ……はぁ……」


 そう、ズ・バイト学園の二人は最初、ヴェルダに攻撃を仕掛け、各々強力な固有属性の魔法やスキルを放っていたが、一切ヴェルダには通用していなかった。

 しかもこの濃度の魔法の中、全く痺れた様子もなく、効いてる様子が無かった。


「そろそろ、お二人もこの属性を継続する天恵は無くなる寸前ですわよね」

「チッ!!やっぱり生徒執行会は別格か……」

「一旦撤退するぞ」

「ああ」


 範囲魔法を強制的に停止させ、撤退に移ろうと二人が準備した瞬間ーー

 二人は突然、声も出すことなく気絶する。

 地面が二人を受け止め、一人の方は当たりどころが悪いのか、鈍い嫌な音を響かせていた。

 シロネはその瞬間を見入っていたが、この上でヴェルダがどんな表情をしているのか想像もしたくないほど異様な雰囲気を醸し出していた。

 教師達が二人を回収するまでヴェルダは見続け、自分の中で終わりを迎えたのか、シロネにポーションを手渡しで渡してくれる。

 その頃には、もう体も大分動けるようにはなっていたので、自分でふりかける。

 直ぐに意識は若干あるが倒れているエーフとユイにも浴びせ、何とか息を吹き替えしてくれる。


「生徒執行会が何しに来たんじゃ?」

「わたくし達は、お昼過ぎにレイ・クラウド学園を倒しに行きますのでその前に一層二層の方々の負担を減らすべく動いていますわ」

「確かにそれは助かるが、極力魔法やスキルを放てるように余力をこんな所で使うべきではないじゃろうに」

「ふふふ……ご心配なんてお優しいのですね」

「うるさい、お前みたいなドS女には言われとうないの」


 シロネがわざとつっつくと全く表情を壊さず微笑む。


「なんのことかしらね……」

「まあよい。今回は助けてもらったからの」

「この借りは返してくださるんですか?」

「何を返して欲しいんじゃ?」

「あなたを一日弄べる券など良さそうですわね」


 さっきと同様な笑顔なのに、シロネには天と地の差のある笑顔に見え、足のかかとから頭のてっぺんまで冷たい冷気のようなものが這い上がって来る。


「……」

「冗談ですわよ、ではわたくしはこれにて……」


 ヴェルダはそう言うと、一瞬にして姿を消すーー


「全く冗談に聞こえんから怖いのぉ……」

「シロネ、大丈夫だった?」

「ああ、ユイもエーフも大丈夫かの?まだ行けそうか?」

「大丈夫だよ!シロネちゃん!!」


 ポーションであれだけ元気の無かったエーフはもう動けるようになっていた。

 ポーションのランク的に少し前の状態に戻ったという程度だが、それでも十分過ぎるほどだし、三人はヴェルダに渡されたものを使ったのでまだアイテムボックスには残っているのでそう考えるとかなり大きい。


 これなら明後日まで持ちそうだった。


「よし!ユイ、エーフ!まだまだやるぞ!」

「うん」

「おー!!」


 一層目がかなりの部分崩壊し、エーフの罠が無くなって来たのか二層目に人が流れ込んで来る。


 最前線が変わるーー


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