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157話 ブレイクタイム

ルイン学園転送地点 第二層ーー


 朝露が葉っぱをつたい眠っているわしの額にダイレクトで着地してくる。一滴ならまだいいが、二滴三滴と続くので仕方なしに目を冷ます。

 周りの木々は相変わらず荒れ果てていて、地面もボコボコだが全く違う点が一つ……

 辺りの草木が異常に成長しており、まるでジャングルのような気温と湿度になっている。

 昨日この辺りを更地にした分、そこから草木が再び生え出しており、一切の躊躇なく活き活きと生えている。


「おはよう……」


 シロネの顔の前にバッとユイが顔を出し、朝日と濡れた髪、まだ眠そうなとろんとしたユイの表情は非常に綺麗だった。


「綺麗じゃな、ユイ……」

「な、何?!」


 ユイはグッと身を起こし、恥ずかしそうにし、水属性の魔法を使って顔を洗う。


「ん!んーーー、んーーー」


 シロネも体を起こし、腕を真上に上げて蹴伸びする。

 背中の肩甲骨がコキコキと音を鳴らし、変なところで寝たつけがやってくる。

 昨日はあれから数人の敵を相手にはしていたが、姉弟三人に比べたらそうでもないやつらばっかだったので、特に問題なく今日を迎えられた。


「ほれ、エーフ起きよ」

「まだ……もう少し寝かせて……あと五分……」


 エーフはまるで子供のようにスヤスヤと寝ている。


「ほれ、後五秒で起きよ」


 エーフを軽く揺すって起こすが全くといって反応がない……まったく。

 精神的に疲れているのはよく分かっているが、エーフとユイはこう言う経験は初めてだし、どっちかと言ったらこんな時でもきっちり起きるユイの方も心配になって来るほどだが、シロネは心を鬼にする。


「ほれ、朝ご飯の時間考えたらもうそろそろ起きんと、逃してしまうのじゃ」


 最後の警告としてエーフの頬をペチペチ軽く叩く。

 柔らかい感触が手に伝わってきて、まだ眠いのが良くわかるほど体温が高い。


「まだ、もうちょっと……うみゃ……」


 ついには、座っているシロネの太ももを枕にしだしよだれをわしのユニフォームで拭う。


「エーフよ……タイムアップじゃな」


 シロネは両手の手のひらを合わせ水属性魔法を発動する。

 これは日常的に使うもので、ただ水を呼び出したにすぎない。

 それをシロネの両手に付与させて水のボンボンのような形を作りエーフの頬の両側から優しく包み込むように触れてやる。


「ひぃやあああああああああああああ!!!!」


 突然、エーフは目を覚まし飛び起きる。

 さっきまでうだうだ寝ていたのが嘘かのようにシャキッと立っている。


「シロネ、鬼……」

「わしなりの優しい起こし方じゃぞユイよ」


 ボサボサの頭に口元によだれの後が付いていたエーフはシロネの水魔法によって綺麗さっぱりし、風呂上がりのような仕上がりになっていた。


「シ、シロネちゃんおはよう……」

「うむ、おはよう」

「ユイちゃんもおはよう……」

「おは……」

「もう!シロネちゃんびっくりしたじゃん!」

「わしは何度も起こしたぞ。昨日言っとったじゃろエーフよ、朝三回言っても起きなかったら強行突破してもいいと」

「そうは言ったけどー!」


 エーフはもう寝起きを通り越し、普段通りまで目が冴えているのでいつもの感じに戻っている。


「まさか、こんな冷たいなんて……」

「そりゃそうじゃろ、わしが使う水魔法じゃぞ、温度くらい調整は普通じゃ」

「ふぇーん!ユイちゃん助けてー!」


 あざとく、ユイに抱きつくがユイはノータッチだった。

 まだ、ユイも目覚めたてでエーフのテンションについていくまでは冷めきっていない。


「明日は、シロネちゃんより早く起きてやる」

「ほーん、じゃあわしより早く起きれなかったら今度は一回目からこれじゃからな」

「いいでしょう!いざ勝負です!」


 それからは、開始時刻までまだ少し時間があるので、朝ごはんを食べながら、適当に談笑し、時間が来るまでゆったりする。

 また、どうせ今日もこの三人で動くことになりそうで、動くとしたら今日の昼以降になるだろうとシロネは考えている。

 ちょっとの時間が過ぎるだけでどんどん辺りがジャングル化し、開始五分前にはもうさっきまでボコボコだった地面や、荒れ果てていた感じは一切なくなり、気温もかなり上昇している。


「暑いねーシロネちゃん」

「今日からは場所ごとに地形や気温、湿度がガラッと変わる。体調管理や地形を利用した戦いが必要になってくるから二人とも気を引き締めるのじゃ」

「うん」

「分かってる」


 この辺りはまた遠距離や設置系の属性にはかなり優遇された当たりを引いたと言ってもいいくらいだ。

 それこそ、ユイは昨日よりも索敵が捗るし、エーフは設置した罠が活かしやすい。


「アキトとバルトは大丈夫かな」

「ま、大丈夫じゃろ。別にいるのはあやつらだけじゃないし、ここでどうにか出来んようではこの先には進めんだろうしの」

「そうだよね……」

「こっちにいる人たちでも他の人たちは大丈夫かな」

「さっき連絡入って、何人かはやられちゃったみたいだけど、黒聖クラスの人たちはまだ全員生存してるみたい」

「そっか、それなら良かったぁ……」


 意外とこの人数相手にしては良く持ちこたえているほうだ、こんなこと普通ならフェアではないが、ルールには抵触しているわけじゃない。

 うだうだ喋っているとあっという間に五分が過ぎるーー

 開始音がこのフィールド上に鳴り響き、再び戦いが始まる


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