140話 評価点
キャニオンが発動した魔法は、クロムだけでなく周りのアキトやハヤト、自身の仲間もろともを巻き添えにするような大きさだった。
さっきまでは金属製の柱だったが、今出てきたのは真っ赤に燃え上がっている、柱だった。
鞭のような柔らかさは健在で、量と柱の太さが桁違いに増したーー
キャニオンの足元から突き出た柱は徐々に円を描くように増えていき、とうとうアキト達も避けなければならないような規模に到達する。
「これ、触るとやばいね」
「ああ、あんな明らかに熱そうな色しているんだからな……分かりやすい」
ズ・バイト学園の他の生徒は一年生も多かったのか多数の被害が出ており、ここまで粘っていたルイン学園の生徒も半数以上が教師陣に回収されていた。
それに地面から突き出てきた為に、地割れのような現象が起きる。
「ーーこりゃ凄いや」
「アキト!もっと広く見て!」
ハヤトは何かに気づき、焦り半分、楽しさ半分が混じったような声色でアキトに催促する。
よく見ると、徐々にアキト達全員が巨大な箱に入れらていくような感覚に陥るーー
ーーこりゃ一本取られたね
「執行!!」
キャニオンは両手の平を合わせ、言葉と共にそれに呼応するかのようにバーンにやった何十倍の大きさの檻の形に一瞬で変形し、閉じ込められてしまう。
バーンに至っては二重の監禁だ。
「どうする?アキト」
「うーんどうするも何も閉じ込められちゃったしなー」
大きい檻で、交差する柱の隙間から出れるかなと思ったが、全て縦横十センチメートルの正方形に整えられており、出られるわけもなかった。
他の学園の人達も一緒に入っており、攻撃してくるかと思いきやもう敵対心は抜け自分の先輩の戦いを見ていた。
「どっちが勝つと思うかい?アキトくんっ!」
少し挑発するようにムルドはめくれ上がった地面の上に座りアキトとハヤトに話しかける。
「そんなもの決まってる……クロムだ」
「へぇー凄い自信だ」
「僕もそう思うかな……」
アキトとハヤトの中では決まっていた。
クロムはまだ自分の固有属性を明らかにしていない……ただそれだけの理由だ。
これは、OOPARTSオンラインでもそうだった。ただの属性の攻撃なのにあそこまで追い込まれているんだから別に考える必要もなくただただ必然のこと。
これが、ブラフであったとしても相当強力な属性でない限りあまり意味のないことなのだ。
アキト達はよく見える特等席で適当な岩などに座り、二人の戦いを観戦するーー
「アキトくんとハヤトくんは気づいているかい?」
「何が?」
「いや、気づいていないなら良いんだ……ふふふ……」
何かようわからん含みのある言い方だが今はクロムの戦いを見た方が面白いのでほかっておく。
*
「まだ、規模を小さくした方が当たる確率はあるぜ」
「そうですねぇー確かにあなたの言うとおりですが、私は全員を相手にしておりますので、なかなか難しいのですよこれが」
クロムは徐々に近づこうと、迫り来る柱や地面から突然突き出してくる柱を全て、かすることもなく完全に躱しきる。
「そうかよ、だが今は俺一人だけで良いよなぁ……とっとと本気出せ」
「勿論そのつもりですよ」
キャニオンは地面に直接手を触れさせ、力いっぱい押すーー
「禁錮縛属性魔法<禁錮刑百年/コルクハンズ>」
「良いねぇ……」
地面からクロムを囲うように柱が出現し、その柱一本一本の色が違う。
さらに、その柱は糸のように細くなっていき、まるで弦に囲まれているようになる。
「大きいと避けやすいですがここまで細いとどうですかね?」
ピアノ線レベルまで細くなった柱がクロムの四方を囲み、同時に数千、数万もの柱が襲いかかる。
これは流石に避けられないか……
アキトがそう思っていると、クロムは体勢を低くし腕をぶらんとし全身の力を緩める。
そして、一言ーー
「解除ーー」
そう、この言葉こそ、ウタゲの特訓の呪縛から解放されるパスワードみたいなものだ。
何故か、ユニフォームに着替えても効果は継続しており、どうなっているんだと思って困惑していたら、ウタゲがドヤ顔でユニフォームにも同じ物を付与したと言っていた事をアキトは思いだす。
そして、これを解除するのは人それぞれ自由と言われている。いきなり使うと解除された時の反動が激しいので本来なら魔導修練祭の開始前に外しておくべきものだが、そこらへんの常識はウタゲには無い。
解除されると、クロムは息を軽く吐く……
すると、目を細め目線を左右に揺らすーー
「まだぬるい……」
突然ーー
「あなた……まさか!」
ゼロから百への超加速ーー先ほどまでの速さや反応速度が可愛く見えるほどの速度だった。
「ーーガァはっ!!!」
キャニオンが維持していた距離は一瞬で詰められ、気づいた頃にはもうすでにキャニオンの腹に複数もの闇属性スキル<熄み槍/ブラクド>が突き刺さりそのまま勢いよくふっ飛ぶ。
最初見た岩々に直撃し、血しぶきが飛び散る。
「きさまぁ……ぜったい……超禁錮属性縛魔法<終身刑/デッドライン>」
「バカが……」
超属性……最後の最後にキャニオンの一矢報いるための魔法だ。
クロムは避けようとしたが、避ける避けない関係なく確実に百%魔法に捕まる。
だが、あれだけ避けることに定評のあったクロムは捕まっても全く表情を崩すことは無い。
徐々に、地面から糸状の柱とバーンを囲んだ柱など様々な種類のものがクロムの体をガチガチに固めらる。力を一切入れることの出来ない体勢にさせられ、一歩も動けない状態になる。
「はぁー……最後の最後に面白いもん使いやがって……最初っから使え……」
「暗黒属性魔法<灰/カス>」
暗黒属性、それは、かつてOOPARTSオンラインの時に出会ったことのある属性だった。闇属性を極めるのは勿論だが……もう一つ、プレイヤーを百人以上PK(Player Killer)するという条件も付いている。
これはOOPARTSオンラインの時のことなので同じとは言わないがアキトは少し注視する必要があると警戒する。
クロムに纏わり付いてた金属製の柱は灰になり、ボロボロと崩れていく。
「まあ三十点ってとこか……」
少し気だるそうにクロムは蹴伸びする。




