126話 姉貴
レイ・クラウド帝国闘技場付近ーー
「ここで合ってるの?シロネ」
「た、多分……?」
「うーん。ここら辺だと思うんだけどなぁー」
シロネとエーフ、ユイの三人で、朝から人混みをかき分け、帝国最大の闘技場'バーテンダー'に向かっていた。ここでは普段、冒険者や腕自慢達の大会が開かれていたり、催し物など使われ方は色々だが、魔導修練祭ではそこが会場となる。
明日が本番だが、その前の日に当たる今日は様々なイベントが開かれているので見に行こうとなった。
だが、進むに連れて人混みが凄い事になっていく。
「この人混みじゃと地図も意味せんのー」
「ですね。で、でも、もう直ぐ始まっちゃうよシロネちゃん」
「分かっておる」
シロネは二人を連れ、メインの通りから少し外れ人混みから一旦退避する。
「二人とも!」
「「な、何……?」」
「なんじゃーその怯え方は」
「シロネのその笑顔の時、大概いい事ない」
「うんうんうんうん」
ユイの言葉に完全に同意することを示す為、にエーフは首を全力で振っている。
「ただ、一緒に人混みの奴らの影の中を渡ろうと思ってただけじゃよ」
ちゃんと、本当のことを言ったのにユイとエーフは信じてないのか、シロネの方をじっと見つめる。
「なんじゃ其の目は……」
「なんか怪しい。影に入るのはいい案だけど、大丈夫なの?」
「……あっ!そうじゃそうじゃ、忘れとった。わしのどこかに触れてないと、影属性を持ってないお主らは影の中で八つ裂きになってしまうから気をつけるのじゃ」
「……」
シロネがけろっと言い放つとユイとエーフは黙る。
「なんじゃなんじゃ、ちゃんと言ったじゃろうが」
「シロネはリスクの判定基準がおかしいと思う」
「シロネちゃん。私も今回は味方できないかもです……」
「うーむ。超いい案だと思ったのじゃがなー」
「でも、それを受け入れないといけないのも事実……」
「え?そうなのユイちゃん」
「ま、そういうことじゃ。エーフよ諦めるのじゃな」
エーフは、ユイに何か対立案があるのを期待していたが、かなり顔がこわばっている。
「エーフ大丈夫。私はシロネを信じてるから」
「ユイよ。嬉しいこと言ってくれるじゃないか」
「分かった!私も信じる!!」
「ほれ、いくぞ二人共」
シロネは、二人の手を引っ張り、この脇道の影に入り込む。
「え?!シロネちゃんまだ心の準備が!!」
建物の影から人の影とシロネは二人を連れて、蛇行運転のように進んで行く。
ユイはいいがエーフは途中から車酔いのような症状が現れ、フラフラしていた。
「はぁーはぁーはぁー」
「何か、十歳くらい年取った気分だよ」
「何を言うとる。たかが十年くらいで……でもほれ、見てみ、ついたのじゃ」
影の中なので、二人は基本どこにいるか分からない。今いる場所が分からないだけでかなり遠くを歩いている感覚になるのも無理なはなかった。
「ここが……闘技場」
「そうじゃな」
闘技場は巨大な円の形をしており、一つ一つの壁が異常に分厚い。 その全ての壁に綺麗な模様が彫られており、柱、天井なども同様で、一つ々がスケールが違う。
今、シロネはユイを先頭に、関係者以外立ち入り禁止の場所に入り込んでいる。決して、無断というわけじゃなく、ちゃんと元から許可をもらっておるので大丈夫だ。
「ユイよ。そろそろ教えてくれてもいいんじゃないかの〜」
「そうだよーユイちゃん。流石に許可もらってると言っても、なんかさっきからすれ違う人が怖い」
「えっと……もう直ぐだとは思うんだけど……まだ、内緒」
さっきから、ユイは何かを探すように大理石の廊下を歩いている。
ここら辺は、複数の部屋がある場所で、イベントなどの選手控え室の役割を持っている。
すると、ユイが何かを見つけたのか、少し歩く速度が早くなる。
「着いた。ここ」
ユイは扉の前に立ち止まる。
その扉からの廊下と部屋はさっきまであった控え室とは比べ物にならないほどの豪華さになっていた。
扉の前には二人の帝国の兵士が立っている。シロネから見たらまあまあの練度の兵士だが、こう言う所に割く人員なら妥当なレベルだ。
「人に会う予定があるんですけど」
「ああ、あのお方の……聞いています。招待状を見せてもらえますか?」
「はい」
その兵士に言われる通り、ユイは招待状を三枚渡す。
「はい、大丈夫です。では、部屋までご案内いたしますのでこちらへどうぞ」
ユイ達はその兵士一人に連れられてさらにその扉から奥へ進む。
「ねぇねぇ。意外とすんなり行くんだね。もっと厳重だと思ってた」
小さな声で二人の横からエーフが言う。
「うーむ。ただの怠慢、または、帝国の雑さが出てるのか……もしかしたら、ここから先にいる人物達にはそんなものを必要としていないほどの実力者だったりのー」
「もーシロネちゃん、冗談はやめてよ〜」
「こちらになります」
目的地に到着する。
「私共はここまでですので。では……」
兵士の人は、そのまま行ってしまった。
「じゃ、行くかの」
「うん。あけるね」
扉を三回ほど叩き、数秒程待つと扉が開く。
中から出てきたのはスラッとした綺麗なメイド。シロネやエーフ、ユイの顔を確認した後、中へと案内してくれる。
中は、草木が張り巡らされており、部屋というよりかはジャングルだった。
草花のいい香りが芳香剤のような役割を持っており、まるで外にいるかのような感覚になるほどだった。
外の空気より圧倒的に綺麗な空気がこの部屋の中では生成されているんじゃないかと思うほどの自然感だ。
「うわー凄い部屋」
隣では、エーフが心の声を思いっきり漏らしていたが、それよりもシロネが驚いたのはこの部屋の広さだ。
メイドは複数人いるが、肝心のご主人様が見当たらない。
「こちらで少々お待ちください。只今主人を呼び出しております」
三人は、真っ白なテーブルの方へ案内される。




