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117話 緊張感

 ちょうど、魔導修練祭まで残り一ヶ月を切ったある日ーー

 黒聖クラスの一年生は、いつもの午前訓練を開始する前に教室に集められた。

 魔導修練祭の詳細事項が決定したので、その説明のためだ。

 ウタゲが左上から魔導修練祭の必要事項を時間をかけて書いていく。

 高いところはシェルがサポートし、なんとか十分ほどで前にある黒板全体にぎっしりと書ききった。


「んじゃ、帝国からルール今回行われる魔導修練祭での種目ルールが発表されたから説明するぞー」


 ウタゲは毎度のごとく、気だるそうに説明し始める。その声音につられてバルトを筆頭にみんな首を縦にゆっくりと降り出し、いつの間にか半数近くが夢の中へ旅行しに行くという事態になっていた。

 いつもなら、ここで全員叩き起こされるのだが、日頃の疲れからか、みんな熟睡している。


 例え、ウタゲの炎が飛んできても起きないレベルで寝ている。


「はぁー長ったらしいなぁこれ……」


 ウタゲは相当長い文なのか途中から読み方が棒読みでまるで念仏でも唱えているようなやる気のなさである。

 隣にいるシェルが時々励ましを入れるがもう後半は効果がなさそうだった。

 今回の魔導修練祭では、各学園代表が広大なエリアで生き残りを賭けた戦いをする、いわゆる、バトルロワイヤル形式を用いる。黒聖や白聖関係なく学園単位での戦いになる。

 白聖クラスから十名、金聖から十二名、銀聖から十五名、黒聖から二十名選出され、それが各学年分なのでかける三だ。


 因みに期間は数日間ぶっ通しで、持ち込めるアイテムは魔導修練祭主催の帝国が定めているもの百種類の内から一人最大十個までを持っていける。

 これは、同じ物を十個でもいいし、十種類の物を一つずつでも良い。


 さらに、武器は一人二つまでになっている。

 なので、アキトが持っているアイテムボックスなどは使用禁止だ。

 まだ色々と細かいルールがあったのだが、それよりも先に右下にある米印の後に書かれた注意事項に目がいってしまう。


 ※生徒を殺害すること。

 これは当然ではあるが、こういう制限を設けないと未来に残す人材がいなくなるので本末転倒だ。

 そして、勝負条件が最後に残っていた人の学園で、基本、気絶やフィールドの様々な場所にいる審判が続行不能と判断した場合に強制退場となる。

 不正がないよう、その審判は全学園の先生から抽選で決まり、なおかつその審判を監視する人材もおり二重の監視体制になっている。

 続行不能といってもかなり元の世界とは違い、回復技術やアイテムは豊富なのでかなりギリギリまで攻められる。


 それに、さっき見た生徒を殺す。

 これを犯した生徒は即退場でそのまま退学となり、学園が帝国からの支援停止になり、かなり重い罰が課せられる。

 勿論、帝国の制度に則ってその生徒は処罰の対象となるーー罪人だ。

 過去に何人かいたが、そう滅多にあることではないし、監視、管理体制がしっかりしているので早々起きることはないと言っていたが、油断は禁物だ。


 ウタゲは書いたことをさらに口頭で説明すると、そそくさと教室を出ていってしまった。

 それからは、皆いつも通りそれぞれの時間を過ごす。

 黒聖以外のクラスの人達は魔導修練祭に出る枠が狭いので競争があるが、黒聖は出場する枠が広い。


 うちのクラスは十五人しかいないので余裕だった。

 毎年の入学者の少なさで有利不利が出てしまうがこれは学園の人気など色々な要因が関わってくるので仕方ないとウタゲは言っていた。


 それに黒聖は平民で構成されているので、本来そこまで人が全学園的にそこまで多くはない。


 特に、問題はない事だった。

 それよりも、白聖や金聖などの上位クラスの人数が足りないことだ。 流石にアキト達よりは多いが、不安要素にはなる。


「どうしたんだい?集中力がかけてるようだけど」


 午前中は何とかエルを捕まえて相手をしてもらっている。

 魔導修練祭の事を考えていて集中力が散乱していた。


「ああ、すまんな。続けてくれ……」

「うん」


**


「えーこほん……」


 あれからさらに二週間が経過し、魔導修練祭まで残り二週間となった。因みに、移動時間も含めるので実質残り一週間半ってとこだ。

 生徒全員がこの特訓が始まった、最初の時と同じ場所に集まっていた。

 かなり数が減っているので、恐らく白聖、金聖、銀聖の厳選が終わったのだとアキトは思う。

 ウタゲが前に立ち、何か言いたげに咳払いをしたが、皆の目に油断はない。

 あの日に痛い目を見た連中はもう並大抵のことでは怯まない、心を持っている。今いる連中ってのはそういうやつらの集まりだった。

 誰も何も言わず、ただただ静寂が場を支配する。人数が減ったと言っても十分な数人間はいる。これだけいたら何人かの咳払いや小話などが聞こえてくるはずだが、それが一切ない。


 あるのは、緊張感という見えないうるささのみ……

 そして、ウタゲは口を開く。


「これから第三フェーズに入ります」


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