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114話 断り

 アキトは医療棟から抜け出し自分の寮へ向かっていた。

 時間がもう夕方なのでもう少ししたら夜ご飯で、流石にこの時間からルナと特訓は厳しかった。


 問題はこの微妙に余った時間をどうするかを今考えているのだが、あまりいい案が思い浮かばない。

 最悪このまま考えていたら気づいたら時間が過ぎていたと言う落ちになりかねなかったので、アキトは普段行かない第一の方の魔導書館へ行くことにした。

 いつもなら人が多く、行く気にはならないが現状、誰も本を読みに魔導書館になど来ない。


 中に入ると聞こえるのは職員が本を整頓する音のみという素晴らしい空間が広がっていた。

 最近は訓練のおかげで元の世界より良く寝られるようにはなったし、気分がいいのでなおさらだった。


 普段第二の魔導書館で本を借りて情報を得ようとはしているがけんに繋がるものが今だに一切ない。

 そもそも、けんがどう言う名前でこっちで活動しているのかとかハヤトみたく外見が違ったりするかもしれないから難易度はかなり高い。


 アキトは適当に本を取り、適当な椅子に座り、適当な体勢で本を読む。


 ……そして、結局アキトは三冊借りてしまった。

 異世界に置いてある書物は興味深いものが多く、殆どが魔法やスキルに属するものだが、ゲームの攻略本ぽくて読みやすい。


 外に出るともう辺りは赤く染まっており、影がくっきりと出て怖いくらいに黒が強い。

 すると、アキトの影以外にもう一つ少し小さめの影がある。人気がないこの場所でやられるとただのホラーゲームだがここは異世界、そんなこともなかろうと振り向く。


 そこには、セナ・アリアがぼーっとアキトの方を見ながら突っ立っていた。


「何かようか?」


 アキトの横には人一人分通れるスペースがあるので行きたければいけるのだが、なぜか動かない。


「じゃま……」


 そう言ってわざわざアキトの目の前で止まる。


「邪魔って……」


 しょうがないのでアキトが空いているスペースに移動し、通り道を作ってあげる。


「んー」


 それ以上特に何か言うことなく通り過ぎ、なぜか振り向き立ち止まる。


「お姉ちゃん……」

「ん?なんだ?ルナなら……」

「伝言」

「え?」

「特訓付き合ってくれてありがとうだって。あとは自分でするって」


 突然、ゆるくセナに言われたのでアキトは驚く。


「でもいいのか?最後までやってないけど」

「うん。あと、別にあなたのことが嫌になったとかではなくて、教わったことを生かして自分でやってみたいって。全部が全部つきっきりなのはダメだって気づいたって……」


 アキトは色々聞いてみたい事はあったが、確かに今後の事を考えたら自分なりにやっていけないとどこかで限界を迎えてしまう。

 ルナなりにしっかりと考えた判断だ。

 

「ああ、お互い頑張ろうって伝えて置いてくれ」

「了解した」


 そのままセナは歩き出し、行ってしまう。

 それからは、いつも通り、夜ご飯を食べ風呂に入り、適当にバルトやトルス、エルと一緒に談笑し今アキトは部屋にいる。


「寂しくなるなぁ……」


 意外とあの地下での特訓はアキトも楽しみの一つだったのでそれが消えるのは少し寂しかった。


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