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10話 和衷協同






「で、お主はまずどこに行くつもりなんじゃ?」


 アキトはシロネに聞かれ考えるが、マップはこの世界と繋がってあっているのかも分からないし、全くの未知数。女神に確かめておけば良かったと後悔する。


「あははは……」

「つまりノープランということじゃな」


 シロネは呆れた様子でアキトを見ながらはぁーとため息をつく。


「この森を北へ行けば街があるからそこで情報集めするとよい」

「え……でもこの森全然抜けれないんだけど」


 そう、そのせいでアキトは何日も歩き続け死にかけた。

 アキトがそう言うとシロネはハッと驚いたあと、すぐに顔をそらした。

 あからさまな犯人が出てきたのでアキトも目を細めシロネを見つめる。


「どういうことかお聞かせ願いたいんだが」

「話せば長くなるがいいかの?」


 どうせ夜はまだ始まったばっかですぐには明けない、問題はないだろうとアキトは話の続きを促す。


「まず、わしは人間種ではない吸血鬼≪ヴァンパイア≫なのじゃ」


 なんでこんなに幼い子がこんな森にいたのか疑問だったが、それなら納得がいった。アキトはOOPARTSオンラインでよく戦っていた事を思い出す。寿命が無限設定で年齢によって強さがあり、厄介な敵の一つだった。


「こう見えて、わしは年齢が百歳を超えておる」


 シロネはドヤ顔で言い放ってはいるが、アキトからすればあまり驚くべきことではなかった。

 OOPARTSオンラインでは殆どの吸血鬼種は千歳を軽く超えており、中には十万歳とかもいた、逆にボス系になると年齢が極端に小さかった。


「こほん、まぁしかしだな吸血鬼種といってもわしは人間とのハーフでないろいろ大変なのじゃ」


 あんまり驚かないアキトに気づき、ドヤっていた自分が恥ずかしくなったのかシロネは照れ隠しで咳払いをしながら話題の矛先を変える。


「成る程ね、色々合点がいった…だがそれと森のことは関係ないんじゃないか?」

「まぁ、そう答えを焦るでない、まだ続きがある。さっきも言ったじゃろ話が長くなると」


 そう言って、沸かしていたお湯を使いシロネはお茶を入れてくれる。

 暖かいお茶をアキトはありがたく受けとる。


「ありがとう。あっちぃ」


 沸騰したばかりなのでとても熱い。

 アキトは一口飲み、話の続きを聞く。


「そいでな、わしは元Sランク冒険者でもあるのじゃ」


 それは凄いとアキトは驚く。

 冒険者は確か依頼を受け、その依頼をこなし報酬をもらう職業で、その依頼内容は様々あると、ある程度の知識は入っているがやっぱり自分の目で見てみないと分からない部分は多い。


 一瞬シロネの表情が曇るがすぐに元の表情に戻り話を続ける。


「まぁそのSランクだったのも昔の話でな、今はこの森で自分の魔法やスキルについて研究しているのじゃよ」

「じゃあこのスケルトンは……」

「そう、わしの死霊術者<ネクロマンサー>じゃ!」


 アキトの中でも合点がいった。

 OOPARTSオンラインでも死霊術は人気だった、かなり取得難易度が高かったので数々の人が諦めていったのを思い出す。

 魔法に特化していて、スキルも優秀なものが多かった。ただ防御面は脆かったので後ろで前衛のサポートをしてるイメージが強い印象だ。


 だが、研究と言っても一人では難しいのではないだろうか……

 研究となると何人かでチームを組んでやるイメージがアキトは強く、一番にそれが浮かんだ。


「一人で研究をしてるのか?助手t」


 アキトが言いかけた瞬間ーー


「ずっと一人じゃよ」


 おい、そんな悲しそうな目をするんじゃない……こっちまでうるっとくるじゃないか。

 アキトも人に自慢出来るような過去を持っているわけでは無く、けんが死んでからはシロネと同じ状況だったのでアキトは共感していた。


「す、すまん。悪いことを聞いた」

「構わんよ。こうやって人と喋るのも久しぶりじゃからの」


 そう言って、シロネは笑ってみせる。


「それでの、研究を邪魔されたくないからこの森には結界を張ってある」

「他者からはこの森を認識できないようにする結界なんじゃが、お主はなぜか入ってきよったからの、スケルトン一体を監視につけたんじゃ」


 アキトは単に女神に召喚された場所がたまたまここだったので何とも言えなかった。


「わしの偵察用のスケルトン一体も倒せんとは思わなかったがの……」


 この結界を破って入ってきたとシロネは思っているので、それ相応の実力を持っている程で行動するのは当たり前であり、実力の差があるので不気味に思われても仕方がない。


「だが、いいのか?情報を俺にぺらぺらと喋っても」

「別に大丈夫じゃ……お主に何かされることもなさそうだし、わしの情報を仮にバラしたとしても意味なんてないからの」

「それに、お主からはなにか近しい物を感じた」


 それは、お互い様な気がするがアキトは一応頷いておく。

 自分でも悲しくはなって来るが、何故か悪い気分ではなかった。


「俺もそうだ久しぶりにこんなに人と喋ったよ」


 シロネは驚いたように瞳を見開く。

 すると照れくさそうにし、それを誤魔化すようにお茶を啜る。


「シロネ」

「な、なんじゃいきなり」



「……俺と友達になってくれないか」



 辺りが静寂を包むーー

 聞こえるのは焚き火の火花が散る音とスケルトンの骨と骨が軋む音だけだ。

 アキトは何故か、シロネの姿を見て口を滑らせてしまい、口から本心がそのまま流れ出てしまった。

 言った後に何故かアキトは自分のことを客観視し、徐々に恥ずかしさが増してくる。

 シロネも何を言われたのか理解し難い様子で、口をあけたまま呆けている。


「すまん、今のは忘れてくれ」

「何を言っとる……」


 シロネは肩を震わせながら、緊張しているのかさっきまでとは少し様子が違った。


「ま、まあしょ、しょんなに言うならなってやらんでもないぞ!」


 照れ隠しなのか腕を組みシロネの顔がほんのり赤い。そして、甘噛みしていてかなりの動揺が見て取れたが、それを見たおかげかアキトも緊張がほぐれていた。


「お、おうよろしくな」

「うむよろしくたのむのじゃ」


 少し面倒で不器用な二人は友達になったのだった。


 あれからアキトはステータスを確認していた。

 ステータス欄を目で追っていき自分のレベルを確認する。

 すると、アキトのレベルは十に上がっていた。

 そして、あのこっぱずかしい友達発言の際、見たことないスキルが発現したのでそのことをずっと考え込んでいた。


 エクストラパッシブスキル「和衷協同<わちゅうきょうどう>」

 それと同時に、アキトは女神からの手紙も送られて来ていたことに今更ながらに気づく。


 璃屠へ


 この和衷協同は女神からの贈り物≪天命≫だよ、大切に使ってね。

 それとこの手紙は開いてから六十秒で消えるのでよろしく。

 では、スキルの説明するね。

 このスキルはね君が心から友達になりたい人と友達になった時に効果を発揮するもので、その友達の子の経験値がまず君に付与される。

 そして、友達が得た経験値が君にも入ってくる(逆も然り)

 一応このスキルは友達が一人増えるごとにレベルが上がっていくんだ、一応レベル上限三に設定してあるからね!

 レベルが上がるごとにスキルの機能が増えるから、あと二つ楽しみにしててね♪

 では、頑張るように!

 以上、かわいい女神より!!



 そこまで読むとちょうど六十秒たち手紙が消える。

 だが、レベルがこんなに一気に上がるとは思ってもいなかった。

 OOPARTSオンラインではレベル上げが一番難しいとされていて、クエスト等で獲得できる経験値が少ないくせにレベル上げの為の経験値が大きい。

 レベル10はチュートリアルの範囲であり、レベル一をあげる為に百万の経験値が必要だ、そこからレベルが一上がるごとに1.05倍ずつ上がっていく。


 流石に、チュートリアル以降は必要経験値数は減るがそれでも法外だった。

 ちなみに一回で得られる最高経験値数は三百程度だ。

 だが、この値はあくまでも最高……途中何回も苦情がきてOOPARTSオンラインの運営もその度に調整してたことをアキトは思い出す。


 OOPARTSオンラインの時のことを思い出しながらぼーっと立っていると突然シロネに声をかけられる。


「改めてよろしく頼むのじゃ」


 シロネが握手を求め目の前まで来ていた。

 アキトは驚きながらも、差し出された手を取り握手を交わす。


「よろしくな」


 それからは、他愛のない話で花を咲かせあの長かった夜が明けるまでそれは続いた。


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