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たゆたう
「早瀬さん」
パタパタとオフィスサンダルを鳴らせて、書類を持って来た。
「これ、計算間違ってるよ」
そんなはずない。
奥田チーフの手から書類の束を引き抜く。
中から検算したメモを抜き取った。
間違えてなんかない。
「いや、ここ、ほら。」
メモに目を走らせ、少し考え、気がついたようだった。
「あーそっか
勘違いしてたわ」
彼女、いくらかがっかりとしたように、サンダルをパタリパタリと言わせ、席へ戻っていった。
そして、席の向こうから、
「早瀬さん、こういうのは、クリップで一緒に留めといてくれる?こっちも見直すの楽だからさ」
「そうですか。じゃあ、次から」
そばに置いておいていたコーヒーを、一口含む。
あの日、理にギターの弦の張替えを頼んだ。
それを今度の土曜日、受け取ることになっている。
生ぬるいコーヒーを飲み込み、それ以上の予定を
頭の外に押しやった。