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gift5 小さな努力を積み重ねるという事の実行

【少年視点】

「ねぇ、本当に十五回しかしないの?」

「フォーッフォッフォ、勿論じゃ」

「他の訓練は?」

「それならばスクワットはどうじゃ?」

「やる! というかやりたいよ! 少ない!」

「ならばスクワット百回じゃ!」

「えぇ……無理……かな……」


 そんなこんなで結局スクワットも十五回になった。少な過ぎて不安になるけど、確かに僕はこれまで努力を続けられなかったんだ。仕方ないよね。


 最終的に、与えられた訓練はワンセットで腕立て伏せ十五回、スクワット十五回、ダッシュが五本。これで全てだった。


 但しそのワンセットの訓練は毎日三回行う事、とされた。これも師匠に百セットじゃ! とか言われたのを僕が減らしていって、抵抗が無かったのが三セットだったから。朝昼晩と三セット、僕が続けられるのはここからみたいだ。


 しかもこの訓練、師匠は一切口出ししないらしい。つまりサボろうと思えばサボっても良いと言われてるって事。儂がおらねば続かぬ様な努力など無いのと同じ、一人で出来る様になって見せよって。


 言われなくてもなってやるやい! ふん!


 そしてそれ以外の時間はと言うと、師匠と一緒に果物を取りに行ったり、獲物を捕らえる罠を作ったり。後は薬草に使う植物を採取する為に探索したりとか。そんな感じの事に使われた。


 そして、そんな日々が一週間続いた。


「良くやったのソルダード、見事一週間続ける事に成功じゃ。実に素晴らしい!」

「何が素晴らしいさ、たったこれだけの事じゃん。そりゃ出来るに決まってるよ」


 正直、全然物足りない。

 だって剣さえ触ってないんだよ?

 そりゃいくら僕でも出来るよ。


「何を申すか、それが大変なのじゃ。物事というものは、例えそれがどんな内容であれ、動作を始める一番最初が最大のエネルギーを使う様に出来ておる」

「……どういう事?」


 一番最初が? エネルギーを?

 ……よくわからないな。


「例えば腕立て伏せをたった十五回やるにしても、感覚的には最後の一回が辛い様に思えるがの。その実、本当は最初に一回やる時が最も辛いのじゃ」

「そうなの?」

「そう、これはどんな事でも同じ、学ぼうとする時も学んでいる最中よりも学ぶ場に向かうまでが最も辛いものじゃ」

「た、確かに」

「お主は見事それをやりきった、おめでとう」

「あ、ありがと」

「ではそれに付随して、訓練に僅かに変化をつける」

「僅かに変化? 回数を増やすの?」

「回数は増やさぬ、やる事を増やすのじゃ」

「やる事を? 何をするの?」

「まず、お主は既に魔力を扱えておるな?」

「うん、だから施設に入れられたんだけどね……」

「それだけでも本来大したものじゃ」

「みんな出来てたから実感ないかなぁ。それで増やすって何を増やすの?」

「そうじゃな、そも魔力とは良き肉体に付随する。まずは肉体からじゃ。……反復横跳びでいくかの。これは時間で測ろうか、一時間じゃ!」

「えぇ……いや、あの……無理……かな」

「ならば……」


 こうして反復横跳び三十秒がメニューに加わった。訓練の順番がダッシュ、腕立て伏せ、スクワット、反復横跳びに変わって、回数は変わらず。


 ちょっとしんどくはなったけど……全然平気だよね。ちょっとって言うか、本当に本当にちょっとだけだからね、三十秒だからね。


 朝決められた時間に起きて、訓練して、採取を手伝ったり、訓練したり、罠を仕掛けたり。


 本当にそれだけを繰り返して数日が過ぎた。

 師匠と訓練を始めて一ヶ月くらいかな。


「ほぅ、訓練しとるのか?」

「まぁ日課だからさ」

「もう言われずとも考えずとも、勝手に出来る様になって来た様じゃの」

「……? 確かにそうかな。なんか自然に出来てるね」

「ならば……そろそろサイズアップをしても良いかも知れぬな」

「サイズアップ!? やった! やっと増えるの!?」

「左様! 訓練の量を、ダッシュ七回、腕立て伏せ二十回、スクワット二十回、反復横跳び四十五秒とする!」

「え、えぇ……少ないなぁ」

「但し、もしダッシュを十回、腕立て伏せ三十回、スクワット三十回、反復横跳びを一分、自らの意志で達成出来たのなら、その後のみ【剣】の修行を許可する」

「え!? 本当!?」


 やった!

 やっと剣が出てきた!

 ずっとずーっと放置されてた剣の修行!

 これをやらずに軍の兵士にはなれないのにずっと触らせてすら貰えなくて……でもやっと!


 やっと剣が出てきた!

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