gift18 剣神の覚醒
【少年視点】
「ハァ……ハァ…………た、倒した……」
残された力も残り僅か、もう……無理。
僕はその場に大の字に倒れた。
「ソルダードくん!?」
エルメリスが慌てて駆け寄ってくる。
相変わらず可愛いなー本当。
「大丈夫!? ねぇ大丈夫なの!?」
「み、見てたでしょ、僕は大丈夫だよ」
肩で息をしていて、魔力は枯渇寸前。
それ以外は概ね良好。
うん、問題ない。
「ふ、ふぇぇぇんソルダードくーん」
「え、ちょ、エルメリス?」
大の字に倒れていた僕の上に覆い被さる様に泣き始めるエルメリス。あ、そっか。怖かったよね。
僕ったら自分の事でいっぱいいっぱいで。
本当、どこまでいっても未熟だなぁ。
「もう大丈夫だよエルメリス」
「ふぇぇぇんどこ行ってたのよーソルダードくーん」
「……ごめんって」
後で……ちゃんと説明しなきゃね。
それより、今は……身体が震えて止まらない。
怖くて、でも無くて。
疲労で、でも無くて。
怖いくらいに、嬉しくて震えている。
あまり詳しくは覚えていない。
無我夢中だったから。
だけど、ボンヤリしたイメージの中で、強烈な連打を仕掛けてくるグランドスパイダーが、凄いなと思いながら、同じ事が出来たらなって考えてたんだ。
そしたらさ、全部のピースが繋がったみたいに、急に閃いちゃってさ。そうだ師匠みたいにしながら、魔力的に高度にコントロール出来れば同じ事が出来るかもって。
それが効率を考えたら無益な事くらい分かってた。
でも……出来そうな気がしてたんだ。
だからとにかく、愚かに徹した。
気付いてしまった己の感覚に正直に、それが近道か遠回りかなんて二の次で。
兎に角試してみたかった。
幸い、僕には師匠と積み重ねた経験と、目の前のお手本という完璧なシチュエーションが整っていた。
思いついた今やらないと、次は永遠に来ない気がしたんだ。だから迷わず始めた。
やっぱり簡単にはいかなくて、でもやるしかなくて。
吹き飛ばされて、壊されて。
魔力が少な過ぎる?
操作にもっと力を?
寧ろ距離感、或いは……って感じでさ。
何が違う? これ? それともこっち?
そんな作業を兎に角繰り返した。
そんな時、ある瞬間にこれだと思う形に気が付いた。それと同時に……脳内に衝撃が走った。
そうか……これが特異魔法。
瞬間的に分かった、何をすれば良いのかが。
その力は本当に単純な力で、僕の身体から離れた物であっても、一度魔力的に接触した剣は身体の一部として扱う事が出来る。
つまり名を冠すなら剣神。
ずっと毎日剣を振ってきて、そしてこれからもきっと……。もう二度と離さないだろうなとボンヤリ考えていた。そんな矢先だった。
僕は剣と一体となった。
最早剣は僕であり、僕は剣だ。
今操っていた二十三本の剣は全て僕の魔力の中に収納してある。そして、いつでも取り出せる。
僕の魔力が増える限り、許容量に限界なんてない。
僕が剣である以上、剣は僕なのだから。
「ライバックは……無事?」
「無事だよ、私がちゃんと治したから」
水の属性魔法は四大属性唯一の回復属性。その優秀な使い手のエルメリスが治したって言っているんだ。きっと無事だろう。
ふー、良かった。
後は……。
「コレはなんじゃぁぁぁぁ!!!」
うわ、ガンディス様だ……。
「誰かおらんのか、説明せんかぁぁぁぁ!!!」
あぁ……どうしよう。
捕まったら困るなぁ……。