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gift16 vs希少種グランドスパイダー

【少年視点】

「師匠ー、午後の訓練行ってくるねー!」


 あれ? 師匠の返事が無いな。

 珍しい、いつも何か言ってくれるのに。


 ……?

 何だろ、奇妙な気配がする。

 こっちに向かってる?

 一応剣も持って行くか。


 訓練は一旦置いておいて、気配の方向に向けて移動を始める。どうも……何かおかしい。


 あ、師匠の気配だ。


「師匠! 何かあったのですか?」

「ふむ、まずい事になった」

「まずい事?」

「恐らく、希少種が発生したようじゃ」

「……希少種って?」


 僕あんまり世間的な事は分からないんだよね……。


(まれ)に魔力を操れる魔物が出現する事があっての、その総称じゃ」

「……ずっと前に僕がやられそうになったグランドスパイダー、あれも魔力使ってたよ?」

「そこがまずいのじゃ」

「……もしかして、元々魔力が使える奴の希少種って、かなり危険って事?」

「その通り」


 ……成る程。希少種が雑魚ベースで生まれたら何の問題もないけど、たまに強い奴が希少種として生まれてしまうと凄い事になっちゃうって事か。


「で、何の希少種?」

「グランドスパイダーじゃ」

「……そっか」


 アレの……希少種。


「相当なレアケースじゃ、儂も長く生きておるがここまでベースの力の強い魔物が希少種として生まれたなど聞いた事もないわい」

「……この方角ってさ」

「うむ、お主が逃げて来た方角じゃ」


 まだかなり遠い。でもこの位置は……僕が逃げて来た訓練施設のある方角だ。


 ……エルメリスが危ない。


「師匠、僕行きます」

「儂も行こう。これは一筋縄ではいかん相手じゃ」


 訓練施設には強い教官達が沢山いる。

 恐らく僕が出る幕はないだろう。


 でも……もし、もし万が一。

 エルメリスに何かあったら、僕は一生後悔する。


 行くしかない。




 ______





 相変わらず森は深い。落ちて来た分だけ岩の斜面を登り、上部に上り詰める。そしてその勢いのまま木の上まで移動する。


 見えた、もう……交戦中だ。


 にしても木々の中からその姿が大きくはみ出している、かなり大きい。そして……赤い。


 前に見たグランドスパイダーは黒かった。けどこいつは……黒に光る赤い筋の通ったカラーリング。その赤が光っているのか、光沢があるのか、兎に角赤が強調されている。


 赤黒く、異常なサイズのグランドスパイダーだ。


 当然、訓練施設側が討伐に当たっている訳だけど……魔力的に劣勢? なんで? あそこにはガンディス様が居る筈なのに。


「……ソルダード、覚悟を決めよ」

「うん、多分……あのメンバーじゃ勝てないね」


 今の僕なら分かる。今回出現したグランドスパイダーは異常だ。それに……あそこにいるメンバーじゃこのままじゃ勝てない。


 ……僕がやるしかない。


 移動を始めた師匠の後に続いて木の上を移動する。施設が近付いてくると状況もより明確に把握できる。


 教官がやられ始めている。あれ? 教官ってあんな簡単にやられる様な人たちだったっけ?


 それに……凡ゆる魔力が飛び交ってるけど効いている様子がない。有効打が……無い。見ろ、よく見るんだ。グランドスパイダーの形状、魔力、攻撃パターン、技、弱点、そして守るべき対象の位置。


 僕は感知の魔力は余り上手く扱えない。グランドスパイダーみたいな桁違いな魔力を放出している奴は別だけど、細かく探るのは苦手だ。


「向こうに比較的小さな反応がいくつかあるの」

「……エルメリス!?」


 師匠が指差す先は……!

 グランドスパイダーがそっちに歩みを進めている。

 まずい、狙われてるのか?


「先行します!」

「うむ、儂は全体を探る」


 師匠が状況を確認してくれる、なら僕は僕の……!


 グランドスパイダーが眼前に迫る、めちゃくちゃ大きい。只でさえ森からハミ出すレベルのサイズ感、近付くと迫力が一段と凄い。


 けど……言ってられない。

 僕は魔力を全開にした。


「グュルルル、ギュギャァァァァァァ!!!」


 魔力を込めた威圧、凄い圧力だな。

 邪魔するなって事?

 グランドスパイダーが前足を振り上げてる。

 何かを狙って……!!


 間に合え……!


 エルメリスとグランドスパイダーの間に割って入り……そしてその攻撃を……剣で受け止めた。


 足元が砕ける、なんて重さだ……!


「……あ、あれ?」

「エルメリス!! 無事か!?」

「あ、あ……そんな……そ、ソルダードくん?」


 エルメリスが誰かを庇う様に……!?


「ライバック!? やられたのか!?」

「わ、私を庇って……でも今ならまだ……!」

「な、治せるか?」

「うん……でも……」

「ここは僕が時間を稼ぐ、早くライバックを!」


 ライバックはエルフのお兄さん。同じ訓練生としてここに入ってたんだけど、年上だからっていつも兄貴風吹かせてたけど……やっぱりこういう時はちゃんとする奴だ。


 何とか……助けたい。


 幸いエルメリスは水の属性魔法(エレメント)のスペシャリスト。回復系能力を有する唯一の系統、その実力者だ。


「下がって! 巻き込みかねない!」

「……分かった!」


 エルメリスがライバックを連れて後ろに下がっていく。目の前のグランドスパイダーは……ターゲットを僕に移したらしい。


 僕はグランドスパイダーを睨み、剣を握り直した。

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