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gift15 僕の日常

【少年視点】

「おはよー師匠! 取り敢えず訓練してくるね!」

「うむ! 今日も張り切っていくのじゃ!」


 朝起きて顔を洗って、その流れで訓練に向かう。腕立て伏せ三百回レベルのボリュームになっても僕の日常は変わらない。


 これをやらない理由なんて無いし、何より強くなっていく実感があるんだ。


 最近じゃ剣は重さでも手数でもなんでもなく、如何に正確無比な一本の理想のラインを通れるかに掛かっているのか、という所の追求に忙しい。


 早く剣が振りたい。振り回したい訳じゃないんだ。落ち着いて静かに一本一本を丁寧に。


「師匠ー、終わったから魔力部屋にいってくるねー!」

「うむ、しっかり研ぎ澄ましてくるのじゃ!」


 普段過ごす家から少し離れた小さな小屋。この建物の中には本当に何もなくて。唯一あるのが僕の【剣】。小屋に入るとその剣を手に取って鞘から抜き、構える。


 そして魔力を身体に通わせる。


 まるで清らかな水が身体をくまなく流れる様に、僕の身体はどんどん穏やかに研ぎ澄まされていく。落ち着いて、何も考えず、ただ剣を持っている感触と、それらが全て自身の身体であるという意識のみに集中する。他の事はどうでも良い。


 風が小屋にふきつけているのが聞こえる。


 木々の揺れる音。


 部屋の匂い。


 身体の感覚。


 全てが段々と消えていき、最後に僕と剣だけがここに残るんだ。


 そこからは、魔力をただひたすらに研ぎ澄ます。


 尖らせて練磨し、この剣と僕がいて斬れない物がある様に思えないくらいまで。


 そして、ふと、至った事を理解する。


 そこで魔力の修行は終わり。


 静かに小屋を出て、小屋の前で剣を振り始める。


 空気の流れを何一つ阻害する事なく、流麗に持ち上げられた剣は穏やかそのもの。


 その剣が何を含むでもなく、ただ一本の理想のラインを紡ぐ。


 ただ美しく、この一本のラインがまるで一つの物語であるかの様に。


 今の一振りは、きっと優しい恋愛の物語。


 今の一振りは、きっと鉄をも両断する静かな怒り。


 今の一振りは、きっと遥か彼方に届く強い願い。


 除外する事の出来ない心を、ありのままに剣に投影し、それぞれの理想の物語(ライン)を追求する。今のこの感情が全てではない。でも、どんな時でもこの一振りを追求出来なければ、剣を持つ意味がない。


「フォーッフォッフォ! 精が出るのぉ。そろそろ飯じゃて、こっちに来なさいソルダート」

「はーい!」


 身体を見るととんでもない汗をかいている。そして僕が剣を振っていた縦のラインだけ落ち葉が落ちていない。いつもの光景だ。


 剣を小屋に戻して師匠の所へと駆け寄っていく。


「見違える様に素晴らしい訓練になってきたのぉ」

「うーん、なんかいつの間にこうなったか分かんないんだけどさ。あ、これこうしたらもっと……って。変える度にちょっと変わっていってさ。こうなっちゃった!」

「フォーッフォッフォ! 自ら正しく変化させる術さえも身についてしまったか。やれやれ、これはもう……ふむ。まず飯じゃ!」

「ご飯!」


 昨日取れた鹿が良い感じに肉をつけてたから、それを丁寧に血抜きして皮を剥いで。今日の昼は鹿肉で焼肉、パワーが欲しいから凄く嬉しいご飯だよね。


「これ、ちゃんと野菜も食べねば肉が身体に定着せんぞ! 強い肉体は食事で決まる、ちゃんと野菜も食べるのじゃ」

「う、苦いの苦手なんだよね……」

「まぁそのうち食べれる様になるわい。若いうちは苦味に敏感じゃからの。今暫くは仕方あるまい」

「そうなんだ……うぅ、はやく大人になりたいなぁ……」

「嫌でもそのうちなれるわい。それよりも……」

「今を正しく積み上げよ! 勿論だよ!」

「フォーッフォッフォ! お主は誠優秀な弟子じゃわい、教え甲斐があるのぉ」

「僕なんて本当にダメダメだったよ、全部師匠のお陰だね」

「儂はキッカケに過ぎん。変わったのはお主自身の力じゃよ」

「えへへ、そうかな? だったらいいなぁ」

「そうじゃとも」


 楽しくご飯を食べて、それが終わったら一旦昼寝。ここで休まないと身体への負担が大き過ぎるって。休む時間は十五分、でもこれだけで頭がスッキリするんだよね。


 不思議。


 よーし、昼寝も済んだ事だし。


 午後の訓練も始めるかー!

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