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gift12 頑張りたい事を頑張れる様にしてあげられる為に出来る幾つかの事

なんと昼を経由して36位になっておりました。

誤字報告、ブクマ評価、本当にありがとうございます。

【師匠視点】

 ソルダードには簡単に説明したが、やはりこの【衝動性】と如何に向き合うかで人生の有意義さが大いに変わってくる。


 人が何かに取り組む時に最も大切にするのが【具体性】じゃ。頑張らなければならない訓練の意味や意義よりも、今それをサボれば如何に楽なのかの方が当人にとっては遥かに具体的なのじゃ。


 ダイエットの為の努力で得られる最終的な幸福感はどれ程大きかろうと、今に状況を切り取ってしまえば。目の前のお菓子を我慢する事のメリットより、食べる事によって得られる幸福感の方がずっと【具体的】じゃからこそ、ついそっちにいってしまうのじゃ。


 後は……そうじゃの。

 本当はやらなければならなかった事で先延ばしにしていた事が、直前になってくると急に怖くなり行動的になるアレも同じ事じゃ。


 人は物理的、時間的に近い物に【具体性】をより強く感じる、つまり価値を大きく感じるという訳じゃ。


 それ故に長期的な未来に向けて頑張らなければならぬ事の価値を感じられず、本来価値のない目の前の愚かな行動に価値を見出してしまい、結果愚かを働いてしまうのじゃ。


 そも行動を始めるという動作には多大なエネルギーを必要とし、更には努力を妨げる凡ゆる具体的な悪の誘惑が儂らの周囲には溢れておる。娯楽も全てそうじゃ。


 これらを完全に排斥し、意志の力で行動する。この動作の危うさは最早これ以上の説明は必要ないであろう。それ故にまずは自身の衝動性が高い事を認知しそれに向けた事前の対策が重要となってくる。その上で、それは()()()()()()()()()()()()()()()()()でなければならぬ。


 そんなもの存在するのかと疑問に思うじゃろう。

 フォーッフォッフォ、勿論あるのじゃ!


 この技術を【If then(イフゼン)ルール】と呼ぶ。


 これはとてつもなく強力なツールとなっており、意志の力を介する事なく能力を発揮する素晴らしいテクニックじゃ。


 そしてこの技術は凡ゆる場所で力を発揮する。


 例えばじゃ。

 勤めを終えて家に帰ってから、本来食事を取り、風呂に入り、寝室で就寝するのがベストな流れ。じゃが、ウトウトしてしまってついつい居間で雑魚寝の様な寝方をしてしまう者もおるじゃろう。結果身体は正しく回復せず、翌日の辛さは火を見るよりも明らか。にも関わらずじゃ。疲弊して帰宅すれば意志の力も残り僅かとなり、抗うのはいよいよもって困難。故にそうなってしまうのも致しかたない。


 じゃがここでIf then(イフゼン)ルールを導入するとじゃ。


 帰宅後100%居間で寝てしまうと仮定しよう。それはマズい。ではまず帰ってから真っ先に風呂に入ってしまえば良いのでは? うむ、それならば風呂で目が覚めるかもしれない。それでもし目が覚めたのならば食事を取れば良いし、目覚めなければそのまま寝室へ向かえば良いのじゃ。硬い床や不自然な体制で寝るよりも、身体をリラックスさせて寝室で寝た方が遥かに良い。


 つまりこういう事じゃ。


 If(イフ)【もし帰宅後に疲れていて居間で寝そうな気がするのなら】、Then(ゼン)【帰ったら真っ先に風呂に入る】。

 といった具合じゃの。


 意志の力に任せていればダークストーリー真っしぐらとなるそれを、If then(イフゼン)ルールの思考は事前にシャットアウトしてくれる。


 この技術によって様々な不利益な事象は未然に防がれ、意志の力に頼る事なく物事をこなしていく事が可能となるのじゃ。


 またIfの部分に含まれる【自分の失敗パターン】を知る事も非常に大切な事となってくる。ダメな部分に目を向けるのは辛いが、事前に知っておれば防げるのじゃ。故に失敗パターンを理解するのも重要となってくる。


 ……ふーむ。

 大分話してしもうたが、じゃ。

 これはもしかすると仕組みから話した方が分かりやすいかもしれんの。ここまで話を聞いてくれた知識欲旺盛な者ならば恐らくより詳しく話した方が有効に活用してくれるじゃろうて。


 ではここで一つ、脳の話をしよう。


 人体に個体差はあれど【脳】が好む物というのは大体決まっておる。


 効率的なこと。

 緩やかな変化。

 元に戻ろうとする事。


 脳は放っておくと自動的に抵抗のない楽な動作を実行しようとする、つまり習慣的な行動を取ろうとするのじゃ。この習慣的な行動とは脳にとっては非常に効率的でローリスクで実現が可能なのじゃ。


 つまり疲弊している時、意志の力が弱まっている時についサボったり、居間で寝てしまう者は【サボるという習慣】が身についてしまっているという事。


 実に恐ろしい事じゃな。

 しかしながら逆に言えばじゃぞ。


 正しい習慣さえ身についていれば疲弊していても尚実行が可能であると、そういう訳なのじゃ!


 だからこそソルダートにはそれがどんな状況になれども実行が出来る様に、そういった所に配慮しながら訓練を進めているという訳なのじゃ。


 全ては大脳基底核に刷り込まれ既に身についてしまっている習慣。始められぬという強い習慣はそのままにしておくと【虚偽期待症候群(きょぎきたいしょうこうぐん)】を発生させる。仰々しい名前じゃが、分かりやすく言い換えれば【明日から始めれば良いや症候群】じゃ。この明日というのは永遠に訪れん、そういうものじゃ。


 じゃがこれでさえも、自分自身が事前にこれを正しく理解し、今明日からやれば良いと考えている事は【100%虚偽の事象となる】と認識する事が出来たならば。


 単純じゃ、今から始めれば良いのじゃ。


 虚偽の明日は永久に訪れない、そうならぬ為に考えられる【If then(イフゼン)ルール】は当人の心と未来を大きく助ける事となるじゃろう。


 意志力のコントロールは非常に難しい。

 頑張ろうで頑張れたら誰も苦労せんのじゃ。


 シロクマのリバウンド効果で分かる様に、人は行動は管理出来ても意志は管理出来ぬものなのじゃ。


 脳とは実に儘ならぬ物。


 しかし、分かってさえいれば行動によって意志のコントロールも可能となるのじゃ!


 人の衝動性を知り、対策技術の存在を知り、それらを踏まえて進めばもっともっと輝かしい未来に皆が辿り着けるはずなのじゃ! 何も始められぬダークストーリーは真っ平御免なのじゃ!


 そしてそれが出来るのはその【知識を持つ者】のみ。知識の探求、学びを努力する者へ与えられる【自分の人生を良くする力】という素晴らしい報酬なのじゃ。


 儂に残された時間で、どこまでソルダートに伝え切れるか。まだ伝えたい事は残っておるのじゃ。


 じゃが……儂もそろそろ覚悟が必要な時期が近づいとるからのぉ。

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