表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
21/21

エピローグ


 深夜のバーに懐かしい顔を見つけて、ヒューバーツは腰をあげた。


「やあ、エドワード」


 隣に腰かけていた女が、色めきだつ。


「エドワード様?」


 少し前までは店の常連だった男は、今や婚約者に骨抜きにされてしまっていた。嘆くものと、面白がるものとで、社交界は持ち切りになっている。かつての悪友は、どこにいても話題の的だった。

 女には席を外してもらって、ヒューバーツは右手を差し出す。


「婚約、おめでとう」

「ありがとう」

「ようやく君が隠していた花に会えるな。嬉しいよ」

「僕はあんまり一目に出したくないけど。父が披露しろとうるさくてね」


 友人は腰に手を当てながら、軽く息をついた。

 結婚披露宴は二週間後に執り行われる。


「正直、初めからこうなると思っていたよ。君、最初から目の色が違っていたからね」

「結果論だな」


 小突き合いながら二人してソファに腰を下ろし、ちょうど運ばれてきたグラスをあわせる。

 確かに、結果論だった。

 やけに入れ込んでいるとは思っていたけれど、まさか本当に婚約をしてしまうとは思ってもみなかった。なにせ、エドワードは恋愛を馬鹿にしていたのだ。恋は遊びだと豪語していたし、あれほどメアリー嬢のことも暇つぶしだと言っていたのに。

 ヒューバーツは、ソファに縁に肘をつきながら首を傾げる。


「つまり、退屈とは折り合いをつけたのかい?」

「退屈?」


 エドワードが笑う。

 ヒューバーツは、おや、と思った。

 こんな笑い方をする男だったろうか。

 唇で柔らかな弧を描き、悪友は平然と言ってのけた。


「そんなもの、とうに縁を切っているよ」


 ヒューバーツはあきれ返りながら、羨ましくも思った。

 自分も、そんな恋がしてみたいものだ、と。







読んでくださってありがとうございました**

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ