もう一人の
しばらくすると、光から解放された。ゆっくり目を開けると、さっきとは違う場所、先程目指した洞窟が目の前にあったのだ。
「流石、兄上直属の魔法使いだ。」
蓮はそんな二人を見つめると、二人は恐れ入りますと一礼した。
「はぁ…………っ!」
振り返ると、洞窟から風が吹き抜け、蓮の髪を揺らした。
「蓮様、行きますか?」
蓮はサシャの言葉に黙って頷いた。恐る恐る洞窟へと足を踏み入れた。
「蓮様、私の魔法で辺りを照らします。少しお下がりを」
辺りは少しずつ明るくなる。不思議なことに凹凸がなく、ちゃんと整えられていた。
だが、無理もなかった。
少し歩けば、先程とは嘘のように広々とした空間があったのだ。
「これ、本当にさっき通ってきた洞窟なの?」
辺りを目を見開きながら眺める。高い天井に、壁に描かれた“壁画”。
全てが蓮の初めてで、鳥肌が蓮を襲った。
「ここを深く調べましょう蓮様。」
「ああ。何かあったらすぐにレポートにまとめろ。」
そういうと、全員が敬礼し、散らばった。
蓮は壁画が気になり、歩み寄った。
見たこともない字だった。創蓮が見ても読めるだろうか。
そんなことを考える。
だが、絵の意味は少々理解はできた。
泣き叫んでいるのか、地に縛られる人に、天から地を見下ろす天使が杖を掲げており、その反対には黒く染まった悪魔が睨んでいる。
「……これ、もしかして天地戦争のことなのか」
様々な疑問が思考を巡らせた。
その様子にサシャも気がつき、近寄った。だが、これを天地戦争と呼ぶことはできなかった。
聞くからに、天使と悪魔は日々争いを繰り広げていたと、それの最大の戦いが天地戦争と言われていたからだ。
「…………っ、なに?」
僅かに風が変わった。蓮はその小さな変わり目も見逃さなかった。
また変わった風が通る、ここが終わりではないらしく、そして、誘われている。蓮はそうおもった。
「サシャ、ここを任せる。僕はもう少し奥に行ってみるよ。」
「え、ですが、お一人では………」
そういって止めようとしたが、蓮の目は本気だった。
(…………いつまでも、子供扱いはいけませんね)
一瞬ため息をついた。サシャは困っている表情をただし、蓮の頼みを承諾した。
頼んだよ、その一言をもらった。
蓮が向かった先には光があった。
崩れた穴から、太陽の光が差し込んでいるのだ。そのため、蓮は迷うことなく、突き進んだ。
「………これは…」
再び鳥肌がたった。
小さな洞窟の部屋に咲く花畑、その他に雑草や苔が広がり、洞窟とは思えないほどだった。
「……こんな所があるなんて、これも世界樹近いからだと言うことなのか………あれは」
その時蓮は気づいた。
花畑のど真ん中に横たわる“人の存在を”ー。
頭で考えるよりも、足が動いていた。
蓮は横たわる人間を起こした。
「………っえ、これ………」
ここらでは見ない黒髪に一部染まった赤髪、華奢な体つきに“白銀の翼”
蓮の心拍は飛び上がった。
「………て、天使!」
ようやくもう一人の主人公の登場ですね!
ここまでの茶番が長すぎてしまいましたね。
さて、ようやくここから始まりです。