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オープン・ステージ  作者: 藤田 紗碧
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34/55

2-22

「……」

 それには特別な意味は無かったのかもしれない。

 それでも私の鼓動は加速しだしてしまう。

 それは、どういう意味――?

「……。まあ、お前よりホシケイの方が、何でも器用にやりそうだよな。でも、俺は自力で食う。お前たちは絶対にマスクを取るなよ」

 そう言うと、俊太はレンゲにのせる量を減らして食べ進めた。鼻が詰まっていて味がしないとか不味《まず》いとか言いながらも、何とか半分くらいは食べられたようだ。

「こんなもんでいいだろ」

 俊太はお盆を布団の脇へ置くと、薬を取り出して飲み下す。

「はい、体温計」

「ああ、悪いな」

 少しの沈黙の後、体温計がピピッと鳴る。

「八度六分か。まだあるな……」

「えっ、そんなにあるんだ」

 俊太の額に向かって無意識に手が伸びる。それを俊太が避《よ》けるようにして、少し体を後ろへ引いた。

「移るぞ。あまり俺に触るな」

「あ、ごめん。昔からの癖《くせ》で」

「……」

「……」

 この場に不自然な沈黙が広がったような気がして、私は二人に声をかける。

「え、ごめん。何で二人とも黙るの?」

 ほんの少しだけ沈黙が続いたけれど、すぐに俊太が口を開いた。

「お前さ、……もう俺の世話とかしに来んの、やめろ」

 俊太はこちらに背中を向けるようにして横になってしまう。

「え? どうして? 昔からずっと、お見舞いには来てたじゃない」

「いつまでも子供の頃と同じような感覚で付き合わない方がいい。別にお前が嫌になったから言ってるんじゃない。お互いのために言ってるんだ」

「何それ。何で急に……?」

 不思議に思い、何となく佳くんの方を見る。

 彼は黙って俊太の言葉に耳を傾けていた。

「全快したら連絡するから、もう寝かせてくれ。今日はわざわざサンキューな。マジで移るから、もう帰れ」

 俊太の声音《こわね》はいつも通りだ。それでも、彼は背中を向けたまま動かなかった。

「佳くん……」

「……分かったよ、俊太。治ったら連絡してね。じゃあ螢ちゃん、帰ろうか」

 佳くんは穏やかな口調でそう言うと、静かに立ち上がる。

「うん。……俊太、またね」

 小さく言って、佳くんと一緒に俊太の部屋を後にした。

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