表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
オープン・ステージ  作者: 藤田 紗碧
14/55

2-2

 佳くんが指差す方へ視線を移すと、可愛らしい絵柄のマグカップコーナーがあった。二人でそちらへ歩きだす。

「ほら、これ」

 佳くんが手に取ったマグカップには、可愛らしい雷様が、雲の上から稲妻いなづまを発しているような絵柄が入っていた。思わず二人で吹き出してしまう。

「俊太に怒られるよ」

 私は少し下を向いて、笑いをこらえながら返した。

「だろうね。でもさ、これ三人で持ったら良くない?」

「サンダーだから?」

 あの日に決められたLINEのグループ名は、そのまま触れられることはなく、『サンダー(仮)』のままになっていた。

「安いし、どう? 三人であの場所で使おうよ。面白いし、俊太ともっと仲良くなれそうな気がする」

 そんなことを口にした佳くんは、とても楽しそうに笑っていた。

「まあ、プレゼントは質より気持ちだもんね。それにしようか」

 私たちは雷様のマグカップを色違いで三つ選び、落とさないように気を付けながらレジへと持っていった。一つはもちろん、プレゼント用にして。

 私たちはプレゼントを開けたときの俊太の反応を想像して、また少し笑ってしまった。

 駐車場で駐車料金を払い車に乗り込む。クーラーの風は熱風地獄だったけれど、無風の方が遥かに厳しいので、窓を開けて風量を最強にした。もちろん運転は私だ。

 市街地の大通りに出て車を走らせる。歩道の脇に植えられた緑の木々からは、強い生命力を感じた。

 夏休みということもあり、田舎とはいえ、平日でも町の中は混雑している。

「あ、そうだ。僕、あめを持ってきたんだよ。める? のど飴と、はちみつレモン味と、夏季限定のピーチ味。あ、ミントガムもあった! どれがいい?」

 私は少し考えて、夏季限定のピーチ味をもらうことにした。運転中の視線はそのままに、左手をハンドルから離して、助手席に座る佳くんへその手を差し出した。

「危ないから、はい」

 ふわりと桃の香りがしたと思った瞬間、佳くんの指先が、私の唇に触れた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ