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オープン・ステージ  作者: 藤田 紗碧
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1-1

 ◇◆◇


 本当は進みたい道があった。

 私は特別おとなしい性格ではなかったけれど、自分の気持ちを口に出して伝えることがあまり得意ではなかった。

 親に言われるがままに進路を決め、毎日が味気なく、まるで全てを諦《あきら》めたかのように、ただ何となく日々を過ごしていた。


 ――あの日、あなたと出逢《であ》うまでは。


 ◇◆◇









 春休みが明けたら大学二年生になる。

 今日はアルバイトが朝から午後三時まで入っていた。まだ早い時間だし、いつもの場所へ寄っていこうか。

 ふと空を見上げると、空模様が少し怪しい。春雷が来るかもしれない。私は自転車のペダルを強く踏みしめた。

 バイト先の制服のブラウスに薄手のカーディガンだけでは、今日は少し寒かったみたいだ。三月の服装は考えるのが難しい。

 田舎の公道から外れて横道《よこみち》へ入る。この時季《じき》はここの桜並木が本当に綺麗で、天気が良ければゆっくりと歩きたいところだ。

 ドォーン……。

 遠雷だ。私は更に自転車のスピードを上げる。

 桜並木を抜け、狭い踏み切りを渡ると、周りが田んぼばかりの住宅地へ入る。そこからまた横道へ入って真っ直ぐ走った。

 その間、風は徐々に強くなり、空は黒い雲に覆《おお》われていく。

「これはマジでやばいやつ!」

 やがて大粒の雨が、身体《からだ》中《じゅう》を叩くように降ってきた。本降りになる前に辿《たど》り着かなければ。

 私は足がパンパンになりそうな勢いでペダルを漕《こ》いだ。今日はデニムのパンツを穿《は》いていたけれど、もし今のスピードで転んでしまったら、結構な怪我《けが》をすると思う。

 目的地に着くと自転車を乱暴に停《と》めた。今は自転車が倒れてしまっても気にしない。

 私はバッグを引っ掴《つか》むと、いつものプレハブ小屋へと走った。

 プレハブ小屋の裏から表へと回り込むと、入り口のドアの前に、若い男性が立っていた。本らしき物を読んでいた彼の視線が、すっとこちらへ向けられる。

 そして――、


「あ、お帰り」


 え――?

 自分に向けられた眼差《まなざ》しに、どきりとしてしまった。

 初めての長編連載です。

 不安ですが頑張ります。

 宜しくお願い致します。

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