やるやろ会の女性騎士、サクヤ・コンゴウ②
「…………」
拳銃を握りながら呆然としている俺。
ある程度撃って手に馴染ませた後は、イシスの指示によりシングルアクション、ダブルアクションやレーザーサイトの使い勝手、体制が悪い状態で射撃をしたりいろいろと試した。
「……拳銃って聞いて、正直不安だったんだけどな」
「そうなの? 強力無比なものだと思うのだけど」
「威力は強いが拳銃は当たらないんだよ、当たらなければ意味がない、特に戦いで使うんだろ? 威嚇目的ならかなりの威力を持つけどな」
「そうなの?」
「例えば38口径ぐらいじゃ実際に太ももを打ち抜かれても普通に人間は走れる、この威力はマグナムレベルだが、反動がどうしてもあるから実戦向きじゃない、拳銃を武器として使うとなると、常に取り出しておいて、狙いを定め続ける必要があるんだよ」
映画だとかと華麗に取り出して華麗に敵を打ち抜くが、現実に拳銃を使い場面になるとそんな時間がない、取り出して狙いを定める間に相手が刃物を持っていればブスリと刺されて終わり。
腕に覚えがあるのなら実際に飛び掛かった方が早い、なんてのが現実だったりする。
「そんなに貴方の拳銃は素晴らしいの?」
「もちろんだ! さっき言った欠点が全て解消されているんだよ! この口径だと威力はマグナムクラス、反動はほぼゼロ、まさに水鉄砲と一緒だ!」
「へ、へえ……」
「なにより握りごこちが最高だ、自分の手専用に作られたかのようなグリップに、照星と照門が合わせればちゃんと当たる素人でも大丈夫な設計な上に、レーザーサイトもついててそこに合わせればどんな角度からでも必中、しかもガク引きの心配もないし、取り出す時間も必要ない、弾の補充は一回消さないといけないけどな」
と色々熱弁してきたが、分かりやすく言うとシティーハンターの冴羽遼、ルパン三世の次元大介ばりの射撃ができるってことだ。
「つまり拳銃を扱う上で気を付けるのは暴発だけってわけか、これは、チートだなぁ、必死で訓練を受けている人に申し訳ないぐらいだ」
なるほど、拳銃ではあるが現実にはあり得ない拳銃ってか、これが能力ってやつか。
感激している俺の横で興味深そうに頷くイシス。
「ふーん、銃器の扱いには慣れているんだ?」
「……ま、まあ、全部が全部ってわけじゃない、自動式拳銃はさっぱりだから、回転式なのはそのせいなんだろうな」
「やっぱり貴方は面白いわね、さて、サクヤ」
イシスの言葉でサクヤが一歩前に出る。
「サクヤは貴方と一緒の物理攻撃型、やるやろ会の活動をする上で荒事があれば、貴方達2人は前衛としてコンビを組んでもらうことになるから、サクヤの能力もちゃんと理解しておいてね」
とサクヤに能力発動を促すと言うが早く、手を前に出すとすぐに剣が出てきた。
形はいわゆるレイピアのようだが突くだけではなく切り付けることもできる、そしてマインゴーシュのような短剣を所持していた。
「ああそうだ! これで異形をやっつけたんだ! 剣を出す能力なのか!」
「んー、剣は形態の一つに過ぎないの、正確には刃物を作り出せることができる能力なの。何度使っても決して壊れることなく刃こぼれすることもなく、出し入れは瞬時に行うことができる、切れ味の説明は必要ないわね、そしていわゆる能力距離なのだけど」
能力距離、つまり俺の場合は拳銃を手放してしまうと2メートルを過ぎると消えてしまうのだけど。
「サクヤの刃物の能力距離は概算で100メートル、他人に手渡すことも可能よ、まあ刃物も拳銃と一緒で練度が存在するから現実的ではないけどね」
「サクヤ、ちょっと持たせてもらっていいか?」
サクヤはこくりと頷くと剣を渡してくれた。
手には馴染まない、それはそうだ、サイズが全てサクヤに合わせてある。これは俺と一緒で。刃物は拳銃と一緒で連弩が存在するから武器の貸し借りは現実的ではないってことだな。
あれ、意外とというか見た目よりかは軽いけど、それでも相応の重さがある。柄の部分にはえっとこれは紋章だろうか。
「その紋章はリーディエル王国の紋章よ」
「能力で具現化したものなのにか、随分愛国心があるんだなぁ」
「愛国心というよりもこの剣自体は実在するものだもの。王国剣術で採用されている正式な剣よ」
王国剣術で正式に採用されているもの、俺の拳銃ってのが思い入れと言われると複雑だけど、サクヤの場合は。
「……なあ、これを何か理由はあるのか? この剣を持った時のサクヤはこう、何かが違うっていうかさ、よくわからないけど」
「ご明察、サクヤはね、運動神経抜群で王国剣術の天才と言えるほどの才能を持ち、王国の歴史上、14人目の女性騎士の称号を受けた人物、現役では彼女含めて2人しかいないわ」
「す、すげぇ」
「しかも頭脳明晰、学院内の成績ではベスト10の常連、極めつけは見てのとおり神々しいほどの美貌も持っている、一目も二目も置かれている存在よ」
「はー、天は二物を与えずというけど、実際は二物どころか三物、四物も持っている人っているよね、彼女がそうなのか」
ということは重さすらも彼女にとっては必要なもの、変に軽くすると剣筋が鈍るという理由なのだろう。
「さて、ここはサクヤの鍛錬場といったけど、ここには様々な機能がある。その中でメインと言っていいものを紹介するわ」
イシスは端末を操作すると、円盤の上に、それこそ少し薄くなったサクヤが現れた。
「…………」
絶句する俺にイシスは解説を続ける。
「今回はサクヤにしたけど、身長や体重性別だけではなく力と剣術能力も細かい微調整が可能なシステムなの。よく強くなるために山籠もりとかあるけど、あんなのは全く強くはならない。強くなるためには実戦が一番とはサクヤの弁ね、サクヤ」
イシスの言葉にサクヤはすっと、剣を前に出して構えると向こうもスッと構える。
とたんに跳ね上がる圧迫感に呼吸が止まる、いや比喩ではなく呼吸の音ですら邪魔になるではないか、なんてことを真剣に考えてしまうほどの緊張感に思わず口を押えてしまう。
これだけの圧迫感で、サクヤは平然としているのが凄い。
これから思うのは期待感だった。どれだけの試合が出るのだろうかと。張りつめた空気は、息苦しさを忘れて、いつの間にか期待感に胸が躍っていたのだ。