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天御クサナギ・異世界へ⑤



「…………」


 うん、胸の高鳴りは気のせいだった、だよね~、そんなご都合的展開あるわけないよね~。


「あ、俺、あのそういうのはちょっと」


「違う、貴方は誤解している、私たちの活動内容を誇張して胡散臭く表現するとこうなったの」


「ああ、誤解じゃないですね~、俺もそう思ったので、えっと、異形でしたっけ、から助けてくれたことと色々と教えてくれてありがとうございまグヘェ!」


 逃げようとしたら思いっきり襟首を掴まれる。


「聞きなさい、というより敬語は辞めてちょうだい、意外と変な人が寄ってこないレベルでのフワッとしたのが難しいの。この間もイシスが「いっそのこと振り切った名前がいいんじゃないか」っていうから、秘密結社アバルベルとかにしたら、なんか変な装束着た人に「自分の神たちを信奉する同士がいてくれた感激です」って涙を流しながら街中で絡まれたことがあってね、それはとてもとても苦労したの、聞く?」


「聞かない! って秘密結社アバルベル!? わかったぞ! 変な壺とか売りつけるつもりなんだろう! いいか! 俺が元いた国じゃデート商法っていって男を美女で釣るんだよ!」


「って美女で男を釣って壺を売るの? 貴方の世界はどうなっているの?」


「え?」


 今なんて、といった時だった。


「騒がしいわ、用があるのなら早く中に入って」


 ガチャリと扉が開くと中から1人の女の子がそんなことを言いながら姿を現した。


 年は俺と同じぐらい、金髪で長髪の品がいいというか育ちがいい美人、とまあ、外見が派手だから一発でそういうのが分かるんだけど……。


「サクヤ、いつも言っているでしょ、女は淑やかも大事だと……」


 とここで言葉を切って俺に視線を移すと真剣な目で見る。


「なるほど、彼がそうなのね、能力はどんな感じだったの?」


「拳銃を出してた、彼の手元から離れて消えたのは大体3メートル、異形のB級を一撃で倒した」


「へえ、攻撃力は申し分ない、ということはサクヤと同じ物理攻撃型ってことね、しかし拳銃とはね、そこは男の子だからかしら」


 そのまま顎を手に沿えてじっと考えている、イシスは何やらおそらく能力のことをぶつぶつ独り言を言っている。


 だろうと思っていたが彼女がイシスなんだ、うん品があるから仕草がいちいち様になる、いや、それはどうでもいいんだ、目の前に起きている問題に比べば。



 うん、ネグリジェ姿なんだよねこの子、しかも結構セクシーな感じがするやつなんだが。



 だけど突っ込んでいいのだろうか、セクハラにならないよな、ほら初対面でイヤらしい視線を送るとなとかならないよな、ってさっき淑やかさが大事とか言ってなかったっけこの子、ああ、なんでこんなドキドキイベントなのにシラフで何考えているのだろう。


 しょうがない、ここで俺ができることと言えば「ここに男がいるんですよ~、危ないですよ~」という視線を送ることにする。


 ここでやっと2人は俺の視線の意味に気が付いたのだろう。サクヤはポンと手を叩くと笑顔で告げた。


「心配することは無い、イシスは自分の身は自分で守れるから」


「そこじゃねーよ!」



 一気に緊張感がなくなったこの先、中に入った先は広く、いわゆるモダンな内装で茶色を基調とした凄く品のいい部屋になっている。


 大きなリビングルームのような作り、中心に大きなテーブルがあり、俺はサクヤに座るように促されると、サクヤが紅茶を淹れてくれた。


 ズズッと紅茶を飲む、あ、美味しい、というか喉が渇いていたのか、何度も口をつけてあっという間に飲み干してしまった。


「おかわり、いる?」


「ああ、ありがとう」


 サクヤに再び紅茶を淹れてくれて、今度は少しだけ口をつけると、正面の扉が開いて今度はちゃんと制服を着たイシスが現れて、彼女は俺の対面に座るとその横にサクヤも座る。


「さて、まずは自己紹介からね、私はイシス・アレキサンドライト、やるやろ会の会長、エラルナ学院高等部1年、サクヤ」


 イシスに促されサクヤが今度は話し出す。


「私はサクヤ・コンゴウ、やるやろ会の会員、イシスとはクラスメイト」


 となると次は俺の番だよな。


「俺の名前は、天御クサナギ、羅羽橋らうばし高校ってところの1年生、です」


「あめのみ、くさなぎ、ようこそクサナギ、やるやろ会へ、貴方を歓迎します」


「は、はあ……」


 歓迎しますはいいんだけど。


「クサナギの疑問は多いと思います、でも私たちにとっても初めてのことなので戸惑っているの。えっと、まずは貴方の現在の状況を把握したいわ、貴方は自分がいる場所についてどれぐらい知っている?」


「……えっと、サクヤさんから、ここはリーイディエル王国って国で、ここは王国の唯一教育機関である学園都市ベデードってところ、まで」


「私とサクヤことについては?」


「な、名前だけ」


「能力については?」


「それは、なにも……」


 俺の返答に頷くと彼女は再び熟考する。そして「貴方が来るまでにどう説明しようか迷ったのだけど……」とここで言葉を切り、覚悟を決めた顔で告げた。



「ここは貴方が元いた世界とは違う、異世界と言い換えても差し支えないわ」



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