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天御クサナギ・異世界へ④



「異形は危険な生き物で時々出る。出現時には警報が出て、全員が屋内へ避難する。そこで狩猟部の出番、異形討伐は命の危険ある代わりに報酬は高い」


 本来だったら1人で仕留められるものじゃないらしく、複数で仕留めて報酬を分配するがの普通で、異形討伐で生計を立てているのが狩猟部なのだそうだ。


 そうやって、それぞれ学園都市で自分の生活を営んでいるのだそうだ。


「じゃあ、えっと、サ、サクヤも狩猟部なのか?」


 名前を呼ぶときにどもってしまうのがもどかしい、


「いいえ、私はただの小遣い稼ぎよ」


 あ、そうか、狩猟部が悔しがってたとか言っていたっけ。


「小遣い稼ぎってことは別の部でも入っているのか?」


「…………」


 再び答えてくれない、必要な時が来れば話すってことなんだろうけど、って複数で倒す異形をたった1人で倒したのか、凄いなこの子。ってあれ、そういえば初めて出会った時に何か持っていなかったっけ。


 と一つ疑問に思うと色々と連鎖的に思い出してくる。


(そうだ剣だ! 彼女は確か剣を持っていた!)


 とても大きな剣、武器と凄いマッチしていたから今の今まで変に思わなかったが、あの剣はどこ行ったんだ。


 そう、そしてそれは俺もそうだ、そうだよ、サクヤは異形を俺が倒したとか言って、宝石を俺に手渡したんだ、んで異形を倒したのは俺の左手に握られていた、拳銃、拳銃だった。


 そういえばサクヤはそのイシスとやらと能力発動を確認したとか言っていたよな、能力って、あの能力だよな、よくあるファンタジーである魔法とか、そういった超常現象というか、それを人為的で起こすあの。


 やっぱり気になる、はぐかされるかもだけど聞いてみようと思った時だった。


「ついた」


 思考をサクヤに遮られた形で思考のから覚醒すると目の前には壁があった。


 ん、何で壁と思って見上げて、左右を見渡すと。


「なんだこりゃあ……」


 と思わず声が出てしまった。


 こう、荘厳と言っていいほどの、外壁? 城壁? そんな何者の侵入も許さないような壁、それが視界の左右一杯に広がっている。


 俺たちはどうやら正門の前にいるらしい、これまた堅牢な扉が設置されており、サクヤは門番、というかこれ自体で十分侵入者がいても防げるから、学生証をかざす。


「サクヤ・コンゴウです。奥の男子生徒についてはイシス・アレキサンドライトに話は通してあるので、確認をお願いします」


 少しの間だけ沈黙があった後、扉の閂が外れるような音がして、ズズッと半開きの状態になる。


 自動ドアって言っていいのか、おそらく人1人が入れるぐらいの人為的な操作をした感じ、やっぱり不思議な感じ。


 サクヤは滑らせる形で入り、俺も続いて敷地内に入ると、ズズッという音がしてそのまま扉が閉まり閂のようなものが締まる音がした。


 その音を振り返って聞く、辺りは暗く街灯もまばらでここが何処かは分からない。あの外壁が今度は外を出さないようなものに見えてくる。辺りは暗いから遠くまで見えないが、かなり広い感じがする。


(なんか、ここ……)


 刑務所。


 という言葉が頭をよぎる、いやいやそれは飛躍し過ぎだ、罪人を閉じ込めておくのにこんな広々とした敷地なんていらないだろ、前にテレビで刑務所の特集を見た時にはこうもっとゴミゴミしていたというか、その……。


「学生寮よ」


「え!?」


 俺の思考を読まれたと思ったが、サクヤが指さす先、4階建てのモダンな建物が見える灯りがチラホラ見える。


「? 建物をじっと見つめていたから」


「ああ、そうか、そうだったのか、ありがと」


 俺のお礼にさほど突っ込むことなく歩を進めるサクヤ、学生寮、そう呼んだ建物を通り過ぎた先に、そのある物が見える。


「すご」


 その学生寮から少し離れたところに「それ」はあった。


「時計…台?」


 といってもメインは時計なのだろうけど、外観はその時計版がデザインの一部に組み込まれているようなそうだ、時計台じゃない「時計塔」と表現した方が正しい。


 高さは50メートルぐらいだろうか、クラシックな感じがこうロマンをそそる。


「ここが私たちの活動拠点よ」


 だそうだ、サクヤはテクテクと歩くと時計塔の根元にある、紋章をかたどった武骨なクラシックキーをペンダント替わりなのか、それを服の中から取り出すと鍵穴に差し込んでガチャリと回すと、そのまま扉が開いた。


「…………」


 そのまま中に入ると、一本道で周りは壁だけど、壁の向こうから時計が動いている音がして、何故だか凄い心地よい。


 その一本道の奥にあるのは、木製のこれまたクラシックエレベーター、手でガラガラと扉を開けて中に入ると、再び手動で閉じて、ボタンを押し、レバーを傾けると扉が固定されて上へと上昇する。


 最上階に辿り着き、高さが時計の文字盤の上に当たる場所は、エレベーターを降りた先に廊下で一つの扉があって、目的の場所がそこだと分かる。



 俺はこの時、今更、本当に今更だけど、やっとここが日本じゃなくて、どうやら異能力とかそういったものが存在する世界に来たのだという事を少しづつ実感し始めていた。


 そして多分、俺もその「能力者」なのだろう、だから俺はこうして連れてこられているのだ。



 ほらよくある平凡な高校生が異世界に転生して、実はすごい能力を持っていた。そしてこんな美少女に偶然に、いや向こうは何故か俺のことを知っていて導かれる。そんな展開ってことだよな。


 トラックに撥ねられそうになった子供を助けたシチュエーションも含めて、今度は違う胸の高鳴りを感じる。


「ここよ」


 彼女の指し示した先、そこには豪華な扉の傍に、綺麗な字でこのように書かれいた。



――世界平和を多角的な観点から考えてやることをやろう会




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