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異世界高校生活 ~お嬢様に囲まれている筈なのに囲んでいるお嬢様がお嬢様じゃない件~  作者: GIYANA
第8話:やるやろ会の司令塔、イシス・アレキサンドライト
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やるやろ会の司令塔、イシス・アレキサンドライト②




 イシスがすっと差し出した雑誌の表紙には、キムタクと福山雅治の若い時のハイブリットイケメンがカメラ目線で微笑んでいた。


 ( ゜д゜) ←俺


 イシスはふっとニヒル微笑む。


「頑張って」


「勝てるかーーーー!!!」


 バシーンと雑誌を叩きつけるのであった。


 イシスが持ってきた雑誌、叩きつけた後にとりあえず読んでみる。ていうかこれ、女性向け美男子特集とかの雑誌ではなくて、ちゃんとした硬派なビジネス雑誌だった。


 内容を見ると、まあ要は意識高くこれからの王国を背負っていける人物であるとかまあそんな感じでまとめられていた、ふん!


「まあそれはそれとして、イシスよ」


「なにかしら?」


「お前、さっき、顔が全然タイプじゃないって言ってなかった?」


「ええ、タイプじゃないわ、息が詰まりそうじゃない」


「詰まるの? 年が離れているとか言っていたのは?」


「27歳よ、10歳も離れているわ」


「しつこくて困っているって」


「ええ、君の為になら命を懸けられるって」


「それを「しつこい」で括るのひどくね!? あ、そうか、分かったぞ! 自分の才能を鼻にかけた嫌な奴なんだな!」


「いいえ、謙虚で努力家よ、常に意識を高く持っている人ね」


「うん? あ、そうなの? あ、そうか! 女好きって言ってたな! そんなイケメンでバイタリティあるぐらいの奴だから二股三股当たり前ってやつか! うらや、げふんげふん、とんでもない男だな!」


「いいえ、スキャンダルの類は一切出てこないのよ、過去に付き合った女はたくさんいたみたいだけどね。その証拠に過去の女性達はユイド男爵と恋人関係であったことを誇りに思っているのよ」


「そ、それはそれで腹立つな、うーん、でも、それだと、女好き、まあ好きなんだろうけど、えーっと、なんか言葉のイメージとは違うような、あ、わかったぞ! スキャンダルが出てこないってのは貴族だから握り潰しているってことなんだな!?」


「あら、私達王族を相手に?」


「…………」


「…………」


「……思いつく限りの高望みの詰め合わせセットの男が好みのタイプじゃないの?」


「そうよ、だってつまらないわ、いじめ甲斐がないじゃない」


「いじめがいって、これが理想じゃないなら、お前の理想は何?」


「理想ねぇ、そうねぇ~、土下座して地面に頭をこすりつけて「おまえじゃなきゃダメなんだぁ~」なんてもう情けないを限界突破して母性本能刺激するとかとおり越して呆れるぐらいの告白かしら」


「はっはっは、そんなヘタレ男いないっての、なあ?」


「「「…………」」」


 おい、辞めろよ、その目、なんで俺を見ているんだよ、泣きそうになるだろう、男だって泣くんだぜ。


 まあでもだ。


「四の五の言ってもしょうがない、男に二言はない、勝つぜ」


 思わぬ俺の宣言に全員が「おおー」とパチパチと拍手してくれる半面、何故かちょっと戸惑い気味のイシスだったが。


「さてつきましては、能力インチキを使っても、それがばれないような感じでなんとかするところから始めようか」


「それでこそクサナギよね、安心したわ」


 と本当に安心したようなイシスだった、おい。





「さて、全男の敵であるイケメン男爵なのだが、まあ冗談抜きに勝つためには作戦を立てる必要がある、悔しいが能力を使わないと勝てない、これを踏まえて何か案はあるか?」


 ここで発言したのはツキヨミだ。


「正々堂々と戦うのが大事だと思うね」


「具体的には?」


「小細工使わずどれだけ女子にモテるかで勝負しようか」


「お前真顔で何言ってんの?」


「安心してくれ、ボクは先輩を選ぶことを約束する、これで」


「(無視)ほかに案があれば聞くぞーって、って待てよ、なるほどな、正々堂々ではなく、正々堂々を演出するのは悪くない。公平である必要はないが公平感は与えねばならんってな、兵藤会長も良く言ったものよ、へっへっへ」


「いやあ、完全に向こうが主人公だよね~、ボク達の小物感出ているよね~」


「うるさいな」


 とここでサクヤが「はい」と手を上げる。


「お、サクヤは何かいい案があるのか?」


「…………」


「……サクヤ?」


「ごめん、ボケネタが思い浮かばなかった」


「これボケる場じゃないからね、まあ間違われてもしょうがないような会話していたからさ、ごめんね、サクヤ」





 作戦会議の結果、その男爵とは三本勝負を行うことになった。


 まずお互いに勝負の内容を決めてそれで一本づつやる、最後はイシスが課題を出し、それで勝負する。引き分け無し、勝負がつくまでやる。勝った方がイシスの恋人になるのだ。


 勝負の場所は、ここエラルナ女学院、適度の閉鎖空間である学院の敷地内でやることになった。


 ただユイド男爵は、有名人ではあるので、エラルナ女学院に知られてしまうと女学生達が我先にと殺到してしまうため、極秘に裏口の通用門から入り俺と男爵は対峙することになった、ちっ!


 さて、その件のイケメン男爵なのだが……。


(うおー、すげー、オーラ出てるー)


 ああいう雑誌って、こう、修正とかかかるんじゃないのか、むしろ、写真の方が無機物な分、オーラが出ず、だからオーラが凄くて、雑誌よりも3割増しにイケメンじゃないか、けっ!


 そんな爽やかオーラを放ちながら右手を差し出してくる。


「初めまして、ユイドだ」


「初めましてユイド男爵、天御クサナギです」


「ユイドと呼び捨てで結構だ、敬語もいらない、君はイシスのためなら命も惜しくないと言ったそうだね、気持ちは分かる、私も同じだ。だからこそ私は君と対等の男の勝負がしたいんだ」


 はっきりを俺の目を見据えて発言する、


「もちろん、男の勝負をしよう」


 とぎゅっと力を込めて握り返すが。


(すまないユイド)


 と心の中で謝罪する。


 何故なら、これは出来レースだからだ。


 当然のことながらユイドはイシスにその気がないことは分かっているから、三本目の勝負であるイシスの課題は名目上であるというのは当然に理解しているだろう。だから当然に俺が出してくる種目含めての2連勝を当然狙ってきている筈だ。


 そして悔しいがユイドが提案してくる種目では俺は勝てない。


 だから俺は自分が与えられた能力を駆使して「射撃」で勝負する。王国式射撃はいろいろな種目があるが、立ち射撃と呼ばれる一番シンプルなものを提案するつもりだ。


 ルールもシンプル、30メートル先にある的に当てる。ライフルを使わない目視で狙いを定めて、当たった場所により点数が加算される形式だ。


 それを7本勝負、勝負終了時点で同点であった場合は、サドンデス方式で決着をつける。 当然能力を使えば満点は簡単に取れるが「人間技ではない」から調整するつもりだけど。


 ちなみにユイドは拳銃の「嗜み程度」の素養があるそうだけど、そこは流石ユイド、嗜みでも十分な実力を持っているそうだ。


 だからちゃんと公平を演出できるのだ。


(すまないユイド、貴方が望む正々堂々の勝負ではない、はっきり言えば俺は姑息な卑怯者、だがそれぐらいの不名誉は被ってやるさ、仲間のためだからだな)


 ユイドがイシスに本気なのは十分に分かったし、男としては応援したい気持ちもある。だがイシスがユイドを相手にしないことも「本気」だった。だったら俺は仲間としてイシスを応援すると決めたのだ。


 握手を終えて再び対峙したところで立会人であるサクヤが宣言する。


「これより勝負を行う。先番はユイド男爵、種目を宣言してください」


 さて、先番はユイドだ。


 ユイドは先に述べたとおり絶対に勝ちにくる。無論、勝負において向こうが得意分野で仕掛けてくるのは当たり前だし、それは全く卑怯な事ではない、確実な勝利をもぎ取るための当然の行為である。


 ちなみにここで剣術はありえない。何故なら俺は素人だから、勝利でメンツが立たなくなるからだ。


 となれば、エラルナ女学院が勉学でも名を馳せていることを考えると、そっちが妥当か。


 一応これでも日本では進学校に部類される高校に通っていて、そこそこの成績を取っていた。まあ負けるだろうが勝負としては成り立つだろう。


「私が提唱する種目は」


 ユイドは当然決めてきたようですぐに宣言する。



「天御は射撃の能力に非凡なものを持っていると聞いた。ならば射撃で勝負だ、それなら君も文句はないだろう」



「…………」


「ん? どうした? 受けてくれるのか?」


「も、もちろん、だ、俺の得意分野で勝負とはな、清廉な人物だと聞いたが、本当みたいだな」


「辞めてくれ、相手の得意分野で私が勝つ、好きな女の前でカッコつけたいだけだ」


「…………」


 あれ、あれあれ、なんだろうこれ、違和感、なのかな、こう変な感じがするんだけど、いや、まあ、気のせいだ、仲間のためだ、俺はイシスを応援するんだよ。





「天御636点、ユイド601点、天御クサナギの勝ち」


 サクヤがスコアを読み上げる。


「…………」


 隣では無言で悔しそうに天を仰ぐ男爵。横でどんな顔をしていいか分からない俺はとりあえず同じように無言でいた。


 ちなみに俺の点数は、調整済みなのは先に述べたとおりなのだけど、ユイドの点数も相当に高い。それこそ学園都市大会でベスト4に残れるぐらいに、まあ勝負を持ちかけてくるぐらいだから当然に。


「な、なあ」


 俺の内容を察したのか「言うな」と首を振る男爵。


「結果が出なければ意味がない、私は負けたのだ。こんなのは彼女の同情を誘うだけだ、そんなみっともないこと、男してはできない」


 そうなんだ、やっぱり努力してきたんだ。


「いや、その、あの、ユイド、過程を得なければ結果は出ないともいうぞ」


「他者はそう言うが、人は無意識に自己を過大評価し、甘くしてしまう生き物だ。自分をとことん厳しく律してやっと「普通」なのだ、私はそれを過去の経験から学んでいる、それと」


 ユイドは俺を見て寂しそうに微笑む。


「過程を経ないと結果が出ないか、その言葉を結果を出した君が言わないでくれ、私のわがままを許してくれるのなら、それだけを言わせてくれ」


「…………」


 男爵の望み通り、俺は口を閉じ、ユイドは今度は満足げに微笑む。


 つまりユイドは自分の不利なのを承知の上で努力して、俺に戦いを挑んだ。おそらく凄い努力したんだろう、そんなひたむきなユイドに対して俺は。



 チートを使って勝ったわけで。



「…………」


 おい、なんだよこれ、勝負に勝ったけどさ、なんだよこれ。


 やばい、なんかちょっと、やばい、いや、いやいや、仲間のため、仲間のためなんだ、仲間のため仲間のため仲間のため。


「さて、次は君の番だ」


「え?」


「種目を宣言してほしい、次は負けない」


「…………」


 ぐるぐるぐるぐる頭が回る。大丈夫大丈夫、仲間のため、仲間のため、仲間のため、仲間のため、そう、これは男の勝負だからな、えーっと、勝負勝負、えーっと、えーっと。


(俺がユイドに勝てるものってなんだっけ?)


 やばい! この考えはやばい! 勝つことが目的ではない、イシスの意図を汲むのが、目的! やるやろ会の為に! 仲間の為に!


「べんがくでしょうぶだ!!」


「分かった受けよう、サクヤさん、エラルナ女学院の学年一位の平均点はどれぐらい取ればいい?」


「前回の考査では平均91点、でも前回は簡単だったからこれは高い方、普段は86点前後」


「ふむ、ということは、91点を取れば一番を取れるという事か、天御、勝負は今からするのか、それともある程度の勉強期間を設けてするのか?」


「も、もちろん今からだぜ! サ、サクヤ!」


「わかった、今回の勝負で使うのは、公平を期すためにクサナギが転校してくる前の定期考査の問題を使用する。問題のレベルは高等学院1年生レベル」





「結果発表、まずユイド男爵から、平均点は81点、当時の考査に当て込めると学年147人中14番の成績」


「くそう! 流石、学園都市のナンバー1の名門女子校のエラルナ女学院、確かにレベルが高かった、現役の学生にはもう勝てないな」


「続いてクサナギ、平均点は51点」


「な!!」


 ユイドは飛び上がると凄い形相で近づいて両手で俺の胸ぐらを掴む。


「天御!! なぜ手加減した! 男と男の勝負ではないのか!! 私を馬鹿にしているのか!!」


 俺はじっと男爵を睨み返す。


「馬鹿になんかしてねえよ、むしろ逆、アンタに対してはむしろ尊敬に近い念を持っている」


「え?」


「なあユイド、今回の勝負で一番大事なのは何だ?」


「それは、勝利でイシスの恋人に!」


「そこからずれてんだよ、勝負はいいさ、俺も男だ、気持ちは分かる。だけど今回の勝利で大事なのは、俺が提案した勝負でもアンタが提案した勝負でもない、イシスの課題じゃないのか?」


 ユイドは俺の言葉にハッとした顔をする。


「イシスは賞品じゃない、イシスの課題に勝利することが本当の勝利だ。あいつの求めることに応えるそれに勝つ。それが男ってものだ、俺はそう考える」


 俺の言葉に呆然とした様子で胸ぐらから手を放す。


「アンタがイシスを思う気持ちは本物だ。だからイシスの課題で……いや取り繕うのは辞めよう」


「え?」


 ここで言葉を切るとユイドを見る。


「お互いに気持ちをぶつけて、イシスに正々堂々選んでもらおう、そういう決着をつけよう」


 俺の言い含めた意味を理解して、ユイドはハッとした顔をすると頭を下げた。


「す、すまない、感情的になってしまった。そうだよな、こんな真剣勝負でこんな点数なんてありえない、考えればわかる事だった」


 ユイドはさらに深く深く下げる。


「ほ、本当にすまない! か、勘違いとはいえ、ぼ、暴力を!」


 続きは言わせないとばかりに俺はユイドの肩に手を置く。


「おいおい、あんまり見損なわないでくれよ」


「天御……」


「悪意がないことぐらいわかるし、胸ぐら掴まれたぐらいでギャーギャー騒ぐ男じゃねっつーの」


「い、いや! それだけじゃない! 最後のイシスの課題での勝負について、君が!」


「それはむしろこっちが謝るべきことだぜ、言ったろ? 最後はどっちがイシスにふさわしいか、彼女に選んでもらおう。それと忘れてないか? 俺も「片思い」なんだぜ?」


 俺の言葉にユイドはやっと頭を上げると爽やかに微笑んでこう言った。


「君が私のライバルで良かった」





「俺もう帰る!!!」


 今はしばしの休憩中、ユイドは手洗いに行っていて、今ここにはいない。


「っだよもう! ふざけんなよ! 顔どころか中身までイケメンとかなんなんだよ! どーせ俺は口八丁手八丁の男だよ! 何が手加減だよ! 天然キャラかよ! わかんだろ! 実力なんだよ! 優秀な貴方様とは違うんですぅ! リア充爆発しろ! イケメンは死ね! マジ死ね!」


 よくある展開なら、男爵はここで実は性格最悪で女たらしで、なーんてことはない。


 ああ知っていたさ、本当の一流の人間って例外なく努力家だということを、自分の能力を鼻にかけないことを、才能に溺れないことを。


 さて、俺は今から商業区に行ってエロ本でも買うか。


 俺にはそれがお似合いだ。なるほどエロ本って俺みたいな奴のためにあるんだな、感謝感謝、万歳万歳。


 その時に、すっと優しく肩に手を置かれる。おいおい、今慰められたらちょっとヤバいぜ。


「ちょ、ちょっと、ぶふっ! ま、まちなさい、クサナギ、はっはっは!」


 振り返った先で大爆笑してるイシスがいて。


「結果的にこれで1勝1敗の五分、クサナギのシナリオどおり」


 おそらくフォローしてくれるつもりであろうサクヤ。


 そしてイシスが咳ばらいをして真面目な顔で俺に話しかけてくる。


「まあでも、分かったでしょう、私はああいう完璧な男に、ときめかないものなのよ、息が詰まるの、だから、まあ、あ、あの、貴方の方が、好きかしら」


「はいはい、それは置いといてイシスよ、アイツいい男だぜ、もういいんじゃないか? 結婚しても」


「…………」


「よくよく考えてみればあんなレベルの男がそこまで惚れてくれるなんて、その時点で奇跡だと思うんだよ。だから今がチャンスだぜ、今ならまだ本性ばれてないから、そのうちにグヘエ!」


 イシスから思いっきり100tハンマーを喰らう。


「おおううぅ~~~!!」


 特殊なカーボンでも凄い衝撃だったぞ、て、手加減しなかったぞマジで。


「じゃあ、手筈通りに頼むわ」


 やたら不機嫌な様子のイシスだった。もう、なんなんだよ。






次回は17日か18日です。


次回で一区切りです。


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