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下着泥棒危機一髪!!:前半



 皆さんこんにちは、天御クサナギです。


 小さい子供を迫りくるトラックから助けたら異世界に飛ばされてたら、なんと異能力を身に着けていて、学園都市の名門女子学院に通うことになりました。


 そんな劇的な展開から更に劇的なバトル物が始まるかと思いきや、特に何が起こるという訳ではなく美少女(仮)の仲間達に振り回される日常を送っています。


 最初は、女子だらけでやっていけるものかと思いましたが、案外みんな気さくでクラスに溶け込めて、数人だけど仲のいい友人も出来ました。


 そんな俺は今。


「ニコニコ」


 仲間たちに囲まれています。


 繰り返しますが一応4人とも美少女なんです、はい、そんな美少女たちに囲まれる、男なら一度は夢見るシチュエーションなのだろうけど。


「クサナギ、私、貴方のことを好きよ」


 イシスが笑顔で言い放つ。


「クサナギ、貴方の傍にいるとホッとする、これは好き、なんだと思う」


 思わず勘違いしてしまうそうな表情と台詞で天然サクヤが笑顔で言い放つ。


「好意に値するよ、好きってことさ」


 一方もう20年以上前にもなるんだね、そんな台詞をパクる笑顔のツキヨミ。


「兄さん、その、す、すき、です、うるうる」


 おっと、これは露骨で勘違いしないぜ、笑顔で言い放つククリ。


 だけどなんだろう、見てくれだけは美少女のこいつら全員に好きだと言われながら、感じるのは何と表現したらいいのかな、嬉しいとは違うような。


 んー、それは多分4人の笑顔がどっかで見たような笑顔だからなんだよな。ほら、あのー、男なら大抵は経験したような、なんか泣きたくなるような、そんな笑顔なんだよ。


 そんな中、イシスは代表して俺に話しかける。


「はい、これ私達からのプレゼントよ、大事に使ってね」


 と差し出されたのは女の子らしい可愛らしいデザインの小さな小箱だった、恐る恐る手に取ってみると、重さはほとんどない感じで、柔らかい。


 んで、変わらず全員が優しい笑顔、嫌だなぁ何が入っているんだろう。


 大事に使ってだそうだが、恐る恐る開封すると……。



 中から女物のパンツが出てきた。



「…………ナニコレ?」


「いいのよ、クサナギ、私たちは貴方を軽蔑したりしないから」


「???えぇー???」


「サイクルは私、サクヤ、ツキヨミ、ククリ、1週間に一度よ」


「さいくる? 1週間に一度? 何が何だか分からないよ、説明して」


「はいはい、いいわ、ちゃんと説明してあげる」


 と、イシスが話し始める。


 それは、今から1週間前のことだったそうな。





 1週間前の朝、目が覚めたイシスはパジャマ姿のまま自分の衣装タンスを開け放ち、そのままもう20分、貴重な朝の時間を使ってずっと考えていた。


「やっぱり、そうなのね」


 少しだけ苦しそう呟くイシス。


 最初は自分の間違いだと思った、気のせいだと思った、だけどこう連続して発生すれば現在の現象が自分の間違いや気のせいではないということがわかる。


 ただ、彼はそんな人ではない、だからこそ相当な苦悩があったのだと思う、ここは黙って見過ごそうかと思った。


「だけど、それは仲間じゃない、仲間であるのなら、それを理解するのが真の仲間よ」


 そう言い放ち、制服に着替えてやるやろ会の共有スペースに顔を出した。


 そこにいたのは、サクヤ、ツキヨミ、ククリの3人。


 思えばサクヤはともかく、彼のおかげで滅多に顔を出さなかったツキヨミとククリの2人が顔を出すようになった。


 ひょっとしたらこの事実は3人にショックを与えるかもしれない。


 だが多分大丈夫だと思う。何故なら私の今の状況は私だけではなく、みんなも同じだと思ったから、だけどその後の彼への対応は皆変わっていないのだから。


 だから3人に言い放った。



「3人とも聞いて、私の下着が盗まれているわ、そしておそらくそれは貴方達もそうでしょう?」



「ええ!!?? イシス先輩もなんですか!!??」


 いの一番に飛び上がったのはククリ、やっぱりかと頷く。


「もう! なんなんですか! 私だけだと思っていたのに! 兄さんの馬鹿!!」


 憮然とするククリの横で同じく憮然とするのはツキヨミ。


「まいったな、ボクだけならいいと思っていたが、他の3人もというのは普通に腹が立つ、誰もいいのか、節操がないね」


 ツキヨミの横で珍しくサクヤが腹を立てている。


「私だけならこそこそ隠れても許す、だけど全員の下着が欲しいのならはっきりとそう言って欲しい、男らしくない」


 全員に剣呑な雰囲気に包まれた時、私はそれを制する。


「ちょっと待って皆、クサナギを悪く言うのは間違っていると思うの」


 私の提案に3人は「?」と首をかしげる。


「はっきり言って私も最初は腹が立ったわ、どうして私だけじゃないんだって、だけど考えてみたのよ、そうしたらむしろ原因は私たちにあると分かったのよ」


「それはどういうことだい?」


「そうね、例えばツキヨミ、貴方は初対面の時普通に裸でいたよね? その後も裸ではないけど、下着同然の姿で歩ているわ」


「そ、それは、その、照れてる先輩が、可愛くて、まあ押し倒されたら、やぶさかではないうか、ゴニョゴニョ」


「ククリも、前はツナギしか着ていなかったのに、今はホットパンツを履いてわざと足を見せたり、タンクトップを着てその大きな胸を強調したりして、クサナギの視線を楽しんでいるでしょう」


「え、えっと!! あ、あれですよ、自分を使って兄さんにエッチな妄想とか、させるの、ほら、女の子なら、するじゃないですか、ゴニョゴニョ」


「サクヤ、貴方は無防備だから、なんの意識もせずくっつく、この間もパジャマ姿でクサナギを抱き枕にしていたけど、彼、凄い顔をして我慢していたわ」


「そうなの? 「嬉しいけど!」なんて力説していたから喜んでくれていると思った」


「そして私はことあるごとについイジメてしまう、いつクサナギがMに目覚めてもおかしくないほどにね、つまり私たちは常にクサナギに我慢を強いているのよ」


 ここで言葉を切って3人を見渡す。徐々に私の言いたいことが分かってきたのだろう、剣呑な雰囲気が徐々に緩和されているのを感じる。


「色々調べたのだけど、殿方にとってはかなり辛いそうよ。この中でその辛さに気付いた人っている? いないでしょ? しかも寝ても覚めても続くのよ、それに対して私たちは余りに無神経であったと言わざるを得ないわ」


 私の言葉に全員がはっとする。


「その辛さは積み重なり、それが堪えようのないレベルまで達した。だけどそれを私たちに向けるのはクサナギの矜持が許さなかった、だけど、いえだから……」


 自分の洗濯物を干している時に、私たちの洗濯物が目に入る。時計台の屋上は高く、周りからは見られない、そして私たちもいない。



――そしてクサナギは手を伸ばして



「私たちがクサナギに下着泥棒をさせてしまったのよ!!」


 私の宣言に全員が呆然とする。


「ぐすっ、ごめんなさい、兄さん、私のせいで」


 嗚咽を漏らすククリの肩にツキヨミが手を置く。


「いや、参ったね、これは、男に恥をかかせてしまったということか。確かに、ボク達に直接「パンツをくれ」とは言いづらいだろう。それぐらいの気を利かせてもよかった、普段から世話になっているのだからね」


 悲痛な表情のツキヨミにサクヤも無言で俯き、言葉を発しない。


「私は、仲間に恵まれたわ」


 突然の脈絡のない自分の言葉に3人は首をかしげる。


「だって、みんなもう許しているもの、本来なら盗んだ相手を責めるのが本当の事なのに、気持ち悪いとすら思っても当たり前なのに。だけど貴方達は相手どころか自分の行動を悔いている、それだけでクサナギがちゃんと仲間として認められているというのが分かるもの」


「それはそうですよ、兄さんのこと、大好きですから!」


「おっと、ボクもそうだよ、あんな可愛い年上の男性は他にいないからね」


「クサナギは私を理解してくれる男の人、イシスは?」


「貴方と一緒、偏見なく見てくれる男の人よ、だから今の私達に出来ることはクサナギを理解してあげることだと思うのよ。でも、正直高い下着を取られてしまうのは困りものよね、だから私たちがプレゼントしてあげようと思うのよ、だけど、殿方が好む女性の下着というのものが分からなくて、だからツキヨミ」


「はいはいお安い御用さ、ポチっとなっと、えーっと、クサナギの国の男性向けエンターテイメントコンテンツを見るとだ、縞パンが圧倒的人気を誇っているのだよ」


「えー、縞って、ダサいよね」


「でも殿方からは凄い支持を得ている、ほら見たまえよ」


 ツキヨミが指し示したディスプレイには様々な女の子が縞パンを履いているたくさんの画像が出てきていた。


「ヒロインの着用率たるや、性別が違うだけでこうも好みが違うのは面白いよ」


「だけど下着をプレゼントして喜んでくれるかなぁ? 使用済みなんでしょ?」


「大丈夫、きっと喜んでくれるわ、ほら、想像してみてよ、こんな感じよ」



――「下着泥棒、軽蔑、したよな? はは、もうやるやろ会にはいられない、ぐすっ、みんな、さようなら」


――すっと差し出される小箱、戸惑うクサナギ、封を開けると下着が出てくる。


――「プレゼントよ」


――「お、お前ら どうして?」


――「いいのよ、私たちも悪かったの、大事に使ってね」


――「使ってねって、いや、む、無理、してるだろ? 本当は気持ち悪いとか、思ってるんだろ!!」


――「兄さん!」


――「ククリ?」


――「私は、先輩が下着泥棒したぐらいで嫌いになんてならないのですよ!」


――「ククリの言うとおりだ、その程度で軽蔑するとでも? そうだろイシス先輩?」


――「殿方のアブノーマルさにも理解を示す、淑女はね、それぐらいの度量はあるものよ、ねえサクヤ」


――「そう、それがいい女、クサナギは私達みたいないい女に囲まれて幸せ」


――クサナギ、目を潤ませる。


――「ああ、ああ! そのとおりだ! お前らは最高の女たちだよ!」





「……ね?」


「長げえええええよ!! わかった!! やっと思い出した!! これあれだよ!! 中学時代にかーちゃんにエロ本見つかって!! その時にちょっとアブノーマルなエロ本も含まれていて!! それを必死に理解しようとするかーちゃんの顔だよ!! もーー!!!」


 とのたうち回る俺にイシスはあくまで優しい。


「いいのよ、お互いに信じあい、お互いに許し合う、それが私達やるやろ会の仲間だものね?」


「誰も俺の無罪を信じてくれてなあああぁああーーーいいい!!!!」


「無罪って……クサナギ……」


「だから俺じゃないの! 俺は下着に興奮する趣味は無いの! 下着を着ている女性に興奮するの!!」


「なら犯人は誰だと考えているのよ」


「犯人も何も、あそこに入れるのは俺達以外なら鳥ぐらいしかいないだろう。俺の祖国でも、えっと、ハンガーとかを鳥が盗んで巣をつくるなんてことがあるんだよ」


「鳥って……クサナギ」


「先輩」


「兄さん」


「クサナギ」


 咎めるわけではない半分哀れみが入った視線。


「なんだよう! わーん! わかったよう! いいもん! 信じてくれないのなら自分の無罪は自分で証明してやるもん! そのためには俺1人じゃ無理! だからみんな協力して!」


 俺の言葉にみんな優しい笑顔で頷く、くっ、心が折れそうになるが俺の名誉のためだ。


「犯人は何度も犯行を繰り返しているから味を占めている。そして窃盗という犯罪の性質上、油断しているはずだから、もう一度やってくる。ここで大事なのは犯行を気づかれて警戒されているということを向こうに気付かせないことだ!」


「だから申し訳ないがもう一度被害に遭って欲しい、犯行供用物と実際に盗まれた被害品が犯人の手に渡らないと駄目なんだ、何故なら犯人は絶対に嘘をつくからだ。だから嘘がつきようが無い状況が必要、つまり現行犯だ!」


「んで! そのための結界という罠を張る! そのために必要なものを今から言うからツキヨミとククリはそれを作ってくれ!」


「いいよ、そこまで言うのなら、ねえククリ」


「はい、兄さんが言うのなら」


「よし! サクヤは出来れば張り込みに協力してほしい、イシス、サクヤを借りるぞ!」


「わかったわ、サクヤ、クサナギの指揮に従いなさい」


「わかった、クサナギを見張って無実を証明すればいいのね?」


「人の話ちゃんと聞いてた!? 見張るのは、ど・ろ・ぼ・う!!」


「そうよサクヤ、泥棒を捕まえるのに協力をするのよ」


「理解した。私もクサナギが違うというのだから無実だと信じている。信じてはいるからこそ、欲しい時には交渉に応じる用意があるという事を忘れないで欲しい」


「兄さん、私も信じています。穿いて欲しいパンツがあればそれを用意してくれれば、穿いて後日お渡ししますよ」


「先輩、ボクはパンツではなくブラをプレゼントしよう。何の変哲もない安物のブラだけど、殿方はそういう普通な感じに興奮する、ってネットに書いてあった」


「なら私は、あえて女性向け最高級下着をプレゼントするわ」



「うるさぁーい!!! 後で謝ったって許してあげないからな!! バーカ!! バーカバーカ!!!」






次回は8日か9日です。

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