やるやろ会の機械仕掛けの神、ククリ・ユークレース②
巨大ロボのパイロット。
男なら脳が震える説明不要のフレーズ、ガンダムを始めとした各種ロボットに数々の魅力的な男達たちが搭乗し、熱い熱い熱い熱い戦いを繰り広げてきた。
「まさか異世界で夢がかなうなんて!!」
と時計塔の前で感動に震えている。
「天御先輩! 連れてきました!」
「おお!!」
と振り向いた先、ククリと一緒にデカい人型ロボットがガションガションと歩いてきた。巨大ロボットという割には高さは3メートルぐらいしかないけど。
「かっけーーー!!!!」
そう、まるで高級車を彷彿とさせるような曲線のまさに未来型デザインだったのだ。
「ありがとうございます、この子が今回の秘密兵器! その名もCHDX!!」
「かっけーーー!!!!」
「本来なら高さ20メートルぐらいのガンダム仕様も可能なのですが、さっきのとおりイシス先輩に学園都市で使うなというお叱りを受けたため、こんな可愛いサイズになってしまったんですけどね、クスン」
「いやいや、十分だと思うぞ、それとさ、一応聞いておくけどさ、ごほん」
と咳払いでククリに話しかける。
「今の名前の「エクシード」ってのは?」
「なんかカッコいいからに決まっているじゃないですか!」
「だな! それ大事! よーし!」
俺はバーンと両手を広げてエクシードに立つ。
「よし! さあ! エクシードよ! 俺を取り込み、その力を示せ!」
そうここから始まるのだ。ほら、よくあるこうロボットのようなものに乗って、美少女に囲まれて戦う、こう、愛と正義とかそんな感じで戦う俺の架空戦記が!
「…………」
「…………」
「あれ!?」
ピクリとも動かないぞ。
「兄さん、これ」
ちょいちょいと肩を叩かれるとラジコンのリモコンのようなものを渡された。
「なにこれ?」
「このエクシードを動かすリモコンです」
「え? これ乗れないの?」
「はい、実はこういった2足歩行のロボットに乗って移動するというのは、歩くだけで尋常じゃない程の三半規管に負担をかけることになります。普通に吐きまくりますよ。それに飛んだり跳ねたりすると、その衝撃で骨折じゃすみません、死にます」
「そんな冷静に言われても、いや、能力ってチートの癖に変に現実的とこあるよね」
そうか、ガンダムでもエヴァンゲリオンじゃなくて鉄人28号だったか、まあいいか、巨大ロボは男の浪漫であることに変わりはない。
「よし、学園都市を騒がせている、悪い奴らをやっつけに行きましょー!」
「おー!」
と意気揚々とガションガションとエクシードと共に49区へ向かうのであった。
●
不良と呼ばれるのはどこの世界にもいる、俺のいた世界でもいるし、当然ここにもいる。
49地区はそんな生徒たちが集まる場所だ。ここにある学院は分かりやすく言えば「ヤンキー学校」だ。
学力と素行は必ずしも一致しないが、自分の記憶を呼び起こしてみても不良と呼ばれる生徒達は、自身の能力に関わらず進学した高校は底辺校が多かった。
「さて、エクシードは目立ちますので、いったんここに置き、ロコモコの動きがあるまで待ちますか」
ロコモコとは例の巨大ロボの名前、こことは廃校舎の一室、そこだけは雑多ではあるけれど何処となく生活感がある部屋、エクシードは器用に入り込んでそのまま座り込む。
「…………」
その振る舞いを見て、なんとなーく、分かっていたけど、ククリは。
「お察しのとおり私は49区で生まれ育ったんです。親の顔も知りません、やるやろ会に入る前の私の住処がここです」
王国は貧困層対策として学園都市の中に王立孤児院も創設、事情あって捨てられた子供たちを孤児院で育て、そこから教育を施し進学させる方法を採った。
つまり環境ではなく努力次第でなんとでもなる、という方便を使っている。そして49区出身で王国の重鎮にまで上り詰めるというシンデレラストーリーが本当に存在するのだ。
「ここに戻りたいとか思ったりするのか?」
「懐かしいとも戻りたいとも思いません、ごみ溜めって周りは言いますけどそのとおり、性根が腐って、卑しい生徒ばっかりです。孤児院だって自立の名の下に放置されているだけですし、まあ衣食住に困らないだけ恵まれていますけど、でも故郷って聞かれると、そうかなぁと思います」
ククリは、別に不良ではなかったそうだが。特段ここから抜けようとも思わなかったそうだ。もともと好きだった機械いじりをしていて、手に職を持っていた彼女は、食うのに困らなかったらしい。
「まあ、私がここでこうやっているのは、犯罪で生計を立てる必要が無かったからというのが大きいですね」
あっけらかんとするククリ、その姿を見て俺はこう思った。
「凄いよ、見直した」
「……へ?」
「いや、ククリがさっき言った性根が卑しいとか腐ったとか、そういう奴らに同情なんてしないけど、卑屈にならず腐らずに自立するってのは、凄いなと思うよ」
俺の言葉に、今度はククリがと首をかしげる。
「ん~?」
とじーっと俺の顔を見る。
「先輩はこういう場所に馴染んでいるようで馴染んでいない。少し別な雰囲気というか、卑しさは感じないけど強かさを感じます、度胸もある感じですよね」
「…………」
「分かってます、言いたくないことがあるのが分かります、だから私ことも深く聞かないでくれるんですよね、先輩のそういうところは優しいと思います」
「優しいか、そんな上等なものなのかなぁ」
と言った時、ピッという電子音が鳴り響いた。
「さて、タイミングよく不良グループがロコモコを起動させたようですね、それではロコモコを助けにいきましょー!」
と意気揚々と出発したのであった。
●
件の不良グループは、49区にある廃屋を拠点にしているグループだった。学校にもロクに通うことなく、商業区に赴いては日銭や食料を得るために万引きや置き引き、ひったくりを繰り返すような奴らだ。
(あれがロコモコか)
流線のデザインではなく、角ばったデザインの人型ロボット。ふむふむエヴァンゲリオンに対してのガンダムみたいなものか。
「これで俺たちは天下取れるぜ!!」
と階下では随分と盛り上がっている。これで縄張りが広がることができるとか、周辺一帯を締めた後どうするとか、学園警察なんて怖くないとか、色々夢が膨らんでいるようだけど。
「まさか、ロコモコを使って、こう、天下取るとか、本気で言っているのかなぁ?」
俺の言葉にククリが呆れたように頷く。
「馬鹿ですねぇ~、ロコモコを本気で使うようならば、その学園警察が本気を出してくるというのに。悪事を働く際の鉄則は「どうすれば警察が本気を出してこないか」という一点に尽きるのに、そもそも物はどう使うかですよ!」
「うん、それをお前が言うなって感じなんだけどさ、って今更なんだけど、あのロコモコはさ、そもそもなんであの不良たちの手に渡ったんだ?」
「…………」
「…………」
「おい」
「てへぺろ♪」
「それやった!」
「いやぁ~実はですね~、イシス先輩に内緒でロコモコを完成させたまでは良いんですけど、当然のように何処で遊ぶかが問題になりますよね」
「…………それで?」
「んで、派手にやっても問題にならない場所となると、49区で動かして遊ぶことに決めたんです」
「遊ぶところって、危ないだろ」
「んー、原則学園警察が嫌いですから通報しないんですよ、だからやりたい放題できるんです」
「ろくでもないな!」
「そしたら電池が切れちゃって」
「え? え? 電池? そんなので動いているの?」
「はい、遊ぶついでに私の能力と現実の部品の整合性及び極小エネルギー増幅装置の性能を試してたんです。んでつい忘れて夢中になって遊んでいたら電池が切れて動かなくなって、そしたら奴らに拾われてしまったのですよ。まあ電池を入れ替えるだけですから機械の知識なんていりませんからね」
「…………」
「もちろん当然に返せと言ったところで泥棒集団相手にそれは「馬鹿」って言っているのと同じ。そして私はか弱い乙女、喧嘩なんてできません」
「…………」
「そしたら奴らが意気揚々とロコモコを使ってどこぞに姿を消しました。どう考えてもロクなことに使いそうにありません、さて困ったと、となると下手に誤魔化すよりイシス先輩にゴマすって、天御先輩を巻き込んで解決することを思いついたのです」
「思いついたのです、じゃねーよ! お前ふざけんなよ! 帰る!」
「天御先輩!!」
帰ろうとした俺を呼び留めるククリ。
「確かに私のミスでこの事態が生まれました。だけど、これはとても大事な、真剣な理由があるんです」
胸に手を当てて、今まで見たことないぐらい真剣な表情で言い放つククリ。
大事で真剣な理由か……。
「…………言ってみ、一応聞く」
「…………」
「…………」
「以前クサナギ先輩が女子風呂で穢れ無き乙女達を視姦した時の話なんですが、私実はその時お風呂に」
「だからそれやった! 無いのね! 理由無いのね! わかったよ! 倒せばいいんだろ倒せば! 実際悪い奴らだからな!」
●
「つかれた……」
部屋にあちこちに散らばる不良グループたち、全員意識を失っているが死んではいない、眠っているだけだ。
その横で四つん這いになって「はあはあ」と息切れしている俺。
結局、アジトに入るのにでかいから入らないという理由でエクシードは使わず、奇襲という形で襲い掛かり不良グループと肉弾戦をやることになった。
能力はチートとはいえ、身体能力が変わるわけではないのは前に述べたとおり。念のため持ってきた光学迷彩を身にまとい普通に戦う羽目になった。
それにしても麻酔弾がチートで良かった。実際は麻酔なんて凄い危険な代物で下手をすると命を落としかねないが、コナンばりの麻酔の効きと後遺症の無さで助かった。
「フンフンフーン♪」
その横で、いつの間にか連れて来たのかロボットたちがロコモコをテキパキと解体、部品を持って帰っている、このまま解体するのは可哀想なので、新しく生まれ変わらせると意気込んでいる。
んで、アジトを検索したところ、盗んだものがたんまりとあり、間抜けにも他人名義の生徒手帳がそのまま放置されていた時には笑ってしまった。
んで学園警察に通報、到着を待っているのが今の状況だ。
「でもツキヨミちゃんが言ったとおり、場慣れしてるんですね、まさか普通に学園警察に通報するとか思いませんでした」
「ん? 餅は餅屋だからな、向こうも悪い奴らが捕まえられれば手段は選ばないから、しっかりと主張するべきする部分を主張すれば、むしろ心強いぞ」
「はー、あ、そうだ、天御先輩、これから先輩の事、兄さんって呼んでいいですか?」
「へ? 兄さん? ああ、そういえば初めて会った時にそう呼んでたよな? あれ? 兄貴とかいるって話してたっけ?」
「いいえ、前にも言ったとおり、天涯孤独ですよ、えーっと、なんかこう、兄さんっぽいから兄さんって呼びたいんです」
にっこりと笑うククリ。まあ年下だし、こんな感じの子に兄さんは浪漫かもしれない。
「いいけど」
という言葉に嬉しそうに両手を合わせるククリ、彼女は最後に俺にこういった。
「兄さん、私、実はブラコンなんです」
次回は7月2日か3日です。




