天御クサナギ・異世界へ②
「……………………」
人間突如として訳の分からない状況に遭遇すると逃げるとか叫ぶとかそういった反応は取らないで呆然と立ち尽くすものなんだなとか、そんなことを客観的に考えていた。
だから……。
ガツン! と異形の前足が地面を叩きつけられた攻撃を躱せたのは本当に偶然としかいいようがない。
さっきのトラックの話ではないが考えて出来たことではない。いやあれは避けたというよりも、前足が叩きつけた時の風圧で体がのけぞったというほうが正しいのかもしれない。
だけどその勢いで思いっきり地面に叩きつけられて、仰向けに這いずる形になってしまった。
そのまま見上げる異形は四本足の虎と狼と言っていいのか、目が二対ある異形は再び手を振り上げた。
ああ、ここはやっぱり死後の世界なんだ、この攻撃で俺は死んで、そうだな、人間に生まれ変わるのなら、今度は、もっと真っ当な道を……。
と振り上げた手がそのまま振り下ろされて、いや、あれ。
ダランとそのまま垂れたと思うと、ドスーンという音ともに倒れてしまった。意味が分からず視線をさまよわせると異形の首が斬り落とされたのが分かった。
普通なら血の一つも吹き出ようものであるが、そのまま天へと体が消えた。
何が何だか分からない、助かったという実感もなかった。
続いて聞こえてきたコツコツという足音、「彼女」は異形の消えた後からスッと屈むと何かを拾い上げた。
それは綺麗に輝く宝石だろうか、彼女はそれを懐に仕舞いながらも俺に近づいてくる。
彼女は銀色の長髪の神々しいほどの美しさを持った、制服を着て剣を持った女の子だった。
彼女は必然的に俺を見下ろす形となる。
「……丸腰? 君は狩猟部じゃないの? 警報は聞いていなかったの?」
「……え?」
狩猟部、警報、なんだそれ、いきなり出てきた意味不明の単語、その質問をしようとした時だった。
「後ろ!!!」
俺の口から出たのは、質問ではなく彼女の後方に突然現れた異形に向けられた、今度はしっかりと立ち上がり彼女に警告を促すために指を差し出した時だった。
バン! という音ともに弾丸が発射されて、そのまま突然現れた2体目の異形の体の一部が吹っ飛び、そのまま異形は先ほど同じようにドスンと地面に倒れ込むとそのまま天に昇って消えた。
なんだ今のは、また誰がしたのかと思う時に、手に何やら違和感、そこで視線を移すと。
左手にいつの間にかリボルバー式の拳銃が俺の手元にあった。
「なんだこりゃあ!」
と思わず拳銃を投げるように離し、拳銃は地面にスライドするとそのままふっと消えた。
「なんなんだよこれ!」
混乱する中、女の子は驚いた顔をするとそのまま俺の手を取った。
「え? な、なに?」
「イシスがここら辺にいるからと言っていたけど、驚きね、本当に」
女の子は俺から手を離すと何やら通信機を起動させる。
「イシス? うん、やっぱりここにいたわ、異形に襲われて危ないところだった、ん、無傷よ、能力発動は確認済み、間違いない、わかってる、今から連れて行くから」
ここで通信を終えると俺に話しかける。
「さあ行きましょう」
「え? 行きましょうって、どこへ?」
「まずは換金所、この宝石をお金に換える、その後本拠地に案内する」
彼女はもう一つ宝石のようなもの地面から拾い上げると渡される。
「これが異形を倒したと同時に出てくる宝石であると同時に討伐証明にもなるの、これは貴方が仕留めたものだから間違いなく貴方の物よ」
「……は、はあ、あ、あの!」
「大丈夫、貴方の状況は理解している、だからついてきて」
とここで歩き出そうとしたとき、何かを思い出したかのようにくるりと振り向く。
「あ、そうだ私はサクヤ、サクヤ・コンゴウ、貴方は?」
「え、えっと、天御クサナギ」
「分かった、クサナギ、これからよろしく」
そうして訳も分からないままそのサクヤと名乗った女の子についていくことになった。
神秘的な美貌を持つ彼女に、少しだけ胸の高鳴りを感じながら。




