やるやろ会の電脳妖精、ツキヨミ・ソウギョク②
ツキヨミが案内した場所は時計塔の、サクヤの訓練場の上に位置している。
「す、すげぇ」
入った瞬間、思わず出たその言葉、何故ならその訓練場のほぼ全てのスペースが巨大な楕円形の機械でしめられていたからだ。
「いや~、部費が無制限で出るから凝りに凝ったらこうなった、普段はここにこもっているのさ」
と言いながら、ポッドのようなものに腰かけると用件を放し始める。
「厄介な問題というのはね、学園都市の知恵書にボクのミスであるデータを残してしまったんだ、それを消去するのを手伝って欲しいんだよ」
「セファーラジエール? ああ、なるほど、つまり巨大なデータベースって言いたいのね、本当に中二病な感じが気に入ったんだな、でも、こう言っちゃなんだけど意外とまともな内容なんだな」
「知恵書って言葉を突然出してしっかりと話題についてこれる君も行けるクチだね?」
「ふっまあな、セフィロトの樹とかたまらないよね。男は一度は通る道だよ、んでその、データってのはどんなものなんだ?」
「そうだね、あれがもし流出して公になった場合、かなりの生徒に社会的なダメージがある、とだけ言っておこうか」
「マジかよ」
「だから、そのデータを即座に回収しなければならなかった。そのためにボク1人では不可能でね、どうしてもアタッカーが必要で、聞いてみれば天御はかなりアタッカーとしては万能みたいじゃないか、だから今後も含めてお願いしようと思ったのさ」
「今後?」
「ボクは、後衛で実務サポートの担当になっている。だから君の能力をしっかりと把握しておきたいのさ、今回の依頼の意味はそれも込みになっていると解釈してくれ」
だそうだ。
「そういうことかよ、最初からそう言ってくれれば協力したのに」
「ありがとう、さて……」
と言い終わった瞬間に部屋の雰囲気が変わる。
「…………」
続いて現れた光景に声が出ない、ツキヨミはオーロラ色の薄い膜に覆われていて、少し風に流れているかのように髪と制服が揺れているのだ。
「そうか、そうだったよな」
「そう、これがボクの能力さ、名付けて電脳妖精!!」
「おお!」
なんかどっかで聞いたような曲のタイトルのようだが、それでもカッコいいぜ! そのままツキヨミに部屋のコードが吸い込まれていく、そのコードがまるで羽のようで綺麗に輝き確かに妖精のように見えて、まさに例のクサナギ違いの姉さんだ。
「ボクの能力は精神と肉体の全てをデータ変換して、電脳空間に世界を構築し、ダイブする。自分だけじゃない、任意の人間もこのポッドを媒介として同じことをすることができるのさ、さあ中に入ってくれたまえ」
ツキヨミの誘いそのままにポッドに入り横たわるとプシュという音と共に蓋が閉じる。
中は光に包まれて明るいのに眩しくない変な感じだ。
『さあ、ダイブをしよう』
というポッドの中から聞こえてくるツキヨミの声と同時に周りは明るくなり、そこで俺の意識が肉体を離れた先。
次の瞬間に俺が立っていたのは、普通にベデードの見知った光景だった。
周りを見渡し自分の体を確認する。
「凄い、質感も全部再現されている、でもどうしてデータベースの世界が学園都市になっているんだ?」
「そもそも視覚化デバイスはインターフェースを考えるうえで重要なものでね、この景色自体は汎用である必要がある、見知らぬ場所では感覚が掴めないだろう?」
隣ではツキヨミがフワフワと浮いた状態で簡易端末を開いた状態で浮いている。
「って、なに、どういうこと?」
「要は文字よりも絵の方が分かりやすく使い勝手がいいってことさ、ボクはその究極版だと解釈してくれたまえよ、さて、能力の発動を確認してくれたまえ」
ツキヨミに言われるままに思念を結ぶと拳銃が出てきた。
「おおう、出てきた、良かった」
「君の能力もトレースしているからね、それとボクたちが何をして感知されないようにしてあるから、能力がちゃんと再現しているか試してくれ」
これもまたツキヨミに言われるままに、壁に向かって拳銃を撃って精度を確かめて撃ったり、構えたり出したりしマッタリを繰り返しているとツキヨミが話しかけてきた。
「先輩はここに来る前は何をしていたの?」
「ツキヨミと一緒だよ、学生、んで高校生だった、日本って国のごく普通の高校に通うね」
「へー、ってことは先輩の元いたその日本とやらは随分物騒だったんだねえ」
「……物騒? むしろ世界的に見て治安の良さは上位に入るぐらいだったよ」
「そうなの? 高校生が銃の扱いに慣れているって時点でそう思ったんだけど」
「…………まあ、色々とな、っと問題なしだ、なあ今回の話を聞く限りでは、なにかこう、敵がいるような言い方をしていたよな」
「もちろん、いわゆるセキュリティシステムだね、当然常時稼働中だ、見つかれば消去される」
ツキヨミの言葉を受けて辺りを見渡すが。
「の割には人が普通にいるぞ、会話もしてる、声も聞こえる」
「別にアクセスが非合法じゃないよ、それは君が元いた世界もそうだったと思うが」
「あ、納得、要はパブリックスペースってわけか、正規の手順でアクセスしているわけね、んで立ち入り禁止区域があって、許可なしに入るのは犯罪ってことか」
「理解が早く助かる、んで問題のデータは当然のことながら立ち入り禁止区域にある」
「分かった、だから攻撃力が必要な訳か、なあ、そういえば肝心なことを聞いてなかったが、そのデータってなんだ?」
「さあ目的の場所はここからすぐだ、レッツごー!」
「いやいやだから、データってなに?」
「崇高理念獲得のための最終的かつ不可逆的な解決のための情報だよ」
とどこぞの外交に使うのような言葉を使ってくるから、最終的と言いつつ何がどう解決するのかさっぱり分からないが、何がいいたいのかは分かった。
「つまり個人的な趣味で集めたってことだよね?」
「テヘペロ♪」
「おいふざけんなよ! 自分の尻拭いの為に他人巻き込むなや! 俺は帰る!! ていうか帰らせろ!!」
「そのデータが生徒たちのバストやウエストといった身体データとしてもかい?」
「なんてな、出来ることがあれば協力するさ、同じやるやろ会の仲間だからな」
「ありがとう、先輩ならそう言ってくれると信じていたよ」
と言って、ツキヨミは解説してくれた。
ツキヨミは普段から普段から電子の海を泳ぐらしいのだが、能力を手に入れる前からも後も変わらないらしく、手に入れてからはその趣味にますます拍車がかかったらしい。
「場所はベールシッチ高等学院、学園都市ではごく普通の学院だね。そんな時に情報収集に夢中になる余りうっかり証拠を残してしまったんだよ、酔狂な事でもやっぱり気分が乗らないことはやるもんじゃないよねー」
「まあそれについては突っ込みはしないでおこう。ツキヨミよ、その情報をどうするの?」
「誤解しないでくれ、個人で楽しむだけだよ、モラルはちゃんと持っている」
(持ってるかなぁ?)
「んで、例えば我がエラルナ学院の一番の巨乳は誰なのかとか、バストの成長率なんかランキング付けするのは結構面白いよ、意味のないことに情熱をかけるのってどうしてこう、楽しんだろうね」
「ロクでもない! まあでも、気持ちは分からんでもない、んで、その、身体データについてなんだけど……」
もじもじする俺にツキヨミはにっこりとほほ笑む。
「無論報酬としてお見せしようぞ♪ 他言無用が条件だよ」
「よし、約束したからな、本当に約束したからな? 後で無しとか言ったら本気で怒るぞ?」
「任せたまえよ、さあ気を取り直していこう! 目的の場所はベールシッチ学院だ!」




