買い出しの日常、前編
朝起きて朝食を済ませた後の本日一番最初のイベントは、サイズの測定だった。早々に服を仕立てて夜には完成したものを3着送ってくれるそうだ。
しかも素材も最高級を使うらしく、金はどうするのかと心配になったが、そこは部費で落とせるらしい、凄いな部費、というか女子学院に男子の制服とかないだろと思ったが。
――「大まかな希望は伝えてあるから後は任せればいいのよ」
だそうだ。
しかも今日の夜までってかなり早いと思うが、急遽呼ばれたであろう仕立て屋は文句ひとつ言わず終始淡々としている、由緒ある上流御用達の仕立て屋なんだそうだ。申し訳ないと思うが、確かに制服がないと困るので甘えるしかない。
んで早々に服の測定が終わったとして次にやるといえば……。
「凄い活気だな」
歩きながらきょろきょろと辺りを見渡すのが商業区だ。色々な店が色々な学生によって運営されている。
「ここの王様は自立と能力鍛錬のため、自分の生活費や学費を自分の能力で賄うようにしたの、結果学生たちの生産能力は飛躍的に向上したのよ。ここには本当に色々なところがあるから活動を通じて色々とわかってくると思うわ」
横を歩くイシスが解説してくれる。最初は馬車という話だったが、早く地理を覚えた方がいいではないかという案により、歩いて向かうことになったのだ。
そんなイシスとサクヤが着ている制服は、エラルナ女子学院のものではない。
「ここでは制服がそのままステータスになるの。例えばほら」
イシスの視線の先、4,5人ほどの集団が歩いているが周りから注目を集めているし、その集団もその視線をちゃんと感じているように思える。
「彼らはゼーテキア学院の生徒たち、学園都市の中で一番学力が高い学院よ、それが制服で分かるのよ」
なるほど、日本でも有名高校のバッグとかがブランド化して生徒でもないのに持つ人物もいる、ということを考えればその大規模版と考えればいいのか。
エラルナ女学院は学力も相当に高いが、それよりも格式の高さで売っている。
んでそんなお嬢様がお嬢様学校の制服を着て外を歩くのは危険、故にエラルナ女学院ではダミー用の制服の着用が認められているのだからすごい。
制服を着て外に出る時は馬車を使うというのだから徹底している。
まあ制服に関係なくしっかりと2人は注目を集めているけど。黙っていると絵になるよな本当に。
俺たちは一般商業区を抜け、目的の場所はその商業区の中で所謂高級店が軒を連ねる場所にうつり、俺たちは目的の場所に到達する。
目の前にあるのは4階建ての建物、ここは百貨店だ。
「ここは百貨店のルンド、入るのに顧客登録が必要で、随伴者は3名まで許されるわ」
会員制の店か、色々徹底してるなぁ。
●
なんだろう、俗な考え方なんだけどセレブになった気分、実際セレブなのは俺じゃなくてイシス達なんだけど。
広い、ゴシック調の内部に、凄い広い、しかも人が少ない、生活用品雑貨一つにしても、無駄にスペースを持っている。
こう悪意があるような物言いだけど、正直こんな表現しかしようがないのだ。まずは生活用品雑貨かなぁって思っておもむろに商品を手に取ると。
「あれ? 値札が付いてないぞ」
「それはそうよ、ここはもう選ばれた顧客しか入れない場所なのだから、店員を呼び買う商品を申告すれば大丈夫よ」
「いやいや、そんなの怖くて買えないんだが」
「異形討伐の報酬が独り占めだから日用品だけなら十分に買えるはずよ、足りない場合はまあ、それぐらいならプレゼントしてあげるわ」
だそうだ。一般商業区でもいいと思うのだが、通う学院が学院なので安物という訳にはいかないらしい。
価格への不安は拭えないが買わなくては話にならない、その後も部屋着や普段着も購入、うむむ、結構な量になってしまった。
だが俺は手ぶら、というのも申告して学生証を提示するだけで終わりなのだ、買い物の終了を告げると住む場所まで無料でまとめて発送され帰宅する時にはもう届いているそうだ。
至れり尽くせり、しかも無料のサロンまであって、そこでお菓子やら飲み物まで供される、お菓子超美味しかったです。
ここを利用するだけで人脈ネットワーク構築にも役立つとか、店一つでも凄い扱いだ。
とにかくすごい場違い感がある、大した時間はかかっていないはずだが凄い疲れた。
「男の買い物は簡単でいいわね」
「ああ、なんかすごい疲れたけど」
「さて、クサナギ、いいかしら?」
「え? いいってなにが?」
●
俺の目の前にあるのは女性服、そう女性服、凄い、ワンフロアが全部、様々なブランドがいて、むしろドレスじゃないかってぐらいの服が贅沢なスペースを以下略。
――「殿方の意見って大事なのよ、社交界では男からも見られるものだから、だからアドバイスが欲しいの」
というセリフのもとこの間以上に場違い感があるこの場所に俺は連れてこられた。
アドバイスが欲しいだそうけど……。
「ねえクサナギ、これはどうかしら?」
試着でドレスを着てくるりと回るイシス、もうすでに15着目ぐらいか。見ているこっちはもうクタクタなのだがイシスは一向に疲れる様子はなく、色々な服を着てウキウキしている。女の買い物パワーってどこから出てくるんだ。
えー、イシスが着ている服は全体的な雰囲気とすれば色気のある服から清楚系に至るまで、色も少し派手なものから地味目なものまで、デザインも派手な物から地味目の……って分かりづらくて申し訳ないが、こう、女の服のデザインは複雑すぎて申し訳ないが男ははっきり言ってこれぐらいの感想しか述べられない。
とはいえ……。
――「どれだって一緒だよ」
というとムクれるんだよな、割とマジに。だけど適当に合わせるとそれを見抜かれてしまうので「男目線だぞ」とはっきり告げた上で感想を述べるのが一番無難だ。
「特に社交界では同じ組み合わせを二度着るのはご法度なの、同じような組み合わせも見破られる。だからいろいろ工夫しなければならないのよ」
「上流階級というのも色々面倒なんだなぁ。ってその服装、お前は見た目が結構派手目だから、少し抑えめがいいと思うぞ」
「そう? 露出が激しい方が殿方が好みではないの?」
「そう単純に解釈すると男も見抜いてくるぞ。男は面倒になると「馬鹿なふり」をするからな」
「なるほど、参考になるわね」
ふんふんと相槌を打ちながら試着が終わったのだろう店員を呼び寄せる。
「今試着した服を全部ちょうだい」
(アドバイス……)
「それとこの店で一番露出が高い服も、目の前の殿方が明らかに鼻の下が伸びてたから」
「…………」
「大丈夫よクサナギ、これは2人だけの時に着てあげるものだから、サービスよ♪」
パチンとウインクしてきた、あざとい、でも可愛い、まあいいか、つまりこの長い時間がやっと終わったということだ。
「あら、まだ終わりじゃないわ」
「えーーーーーーーーーーー」
「大丈夫、殿方なら絶対に嬉しいイベントの筈よ」
ふふんと自信ありげのイシスだがこいつの言う事をうのみにするとろくなことが無さそうなんだよな。
「……なんだよ、いちおう聞いてやるよ」
イシスは変わらずのほほえみのままこう告げた。
「下着についてだけど殿方の意見を聞く機会が無いから、意見を聞きたいのだけど」
後編は明日投稿します。




