やるやろ会の女性騎士、サクヤ・コンゴウ④
サクヤの案内の下、時計塔から出て、時計塔への案内途中にあった学生寮の横を通り過ぎる。
「サクヤはここには住んでいないんだよな」
「そう、やるやろ会発足と同時に、あの部室に住み始めた、クサナギも一緒に住んでくれて嬉しい」
「あ、ああ、うん」
嬉しいか、いやいいんだけどね、こうね、ちょっとぐらい警戒はして欲しいなと思う訳ですよね。
「あ、そう言えばあと2人会員がいるってことだよな、その部員たちはどんな奴らなんだ?」
「1人はツキヨミ・ソウギョク、私の訓練場の真下にフロアを構えているのだけど、集中力が乱れるとかで立ち入り禁止なの、一回スイッチが入ってしまうと寝食を忘れて没頭する、基本全裸」
「全裸!?」
「最後の1人が、ククリ・ユークレース、彼女は文字盤の裏側に訓練場を構えているのだけど、直感で動く子だから原則何処にいるのか分からない、この間、球体の爆弾を作ってそれでボーリングをしていたの、理由を聞いてみたら「自分でも分からないけどどうしてもやりたくなったから」って言ってた」
「死ぬね、普通に死ぬね」
「2人とも私と違って変わり者だけど、仲良くしてくれると嬉しい」
(本当の変わり者って自分が普通だと思っているんだよなぁ)
言わんけどね、と思いながらその学生寮の横を通り過ぎると、高さ10メートルほどの建物が見えてきて、大きな扉を開ける。
「おおう~」
入った瞬間に目に見えるのは大きな両開き扉、そこから漏れる確かな風呂の熱気、それにトキめいてしまうのは日本人の性なのだろう。
「ここがお風呂よ」
「ありがとな! 早速入るぜ!」
「え? 入るの?」
「当たり前だろう、ここに来る前から仕事で3日間も入っていなかったんだ、という訳でとっとと出た出た、まあ見ても面白くない体で良ければ、そこにいてもかまわんぞ、はっはっは」
「貴方、凄いのね、一応後ろを向いているけど、何かあれば声をかけて」
くるりと後ろを向くサクヤ、ん、後ろを向くだけなのか、まあいいや、気にしてもしょうがない。
俺はポイポーイと衣服を脱いで全裸になる、さて大理石の広いお風呂だ~。
ウキウキで中に入った瞬間だった。
そこには湯気が立ち込めていたけど十分に全体像を見渡せる位置にあって。
10人ぐらいの女子が入っていた。
( ゜д゜) ←俺
吐いた息がそのまま声になるような感じで立ち尽くす俺の姿を見て「え!?」とびっくりした様子だったけど、1人の女の子が俺の姿をぼんやり見て、何かを納得した様子でタオルを体に撒くと近づいてきた。
彼女は後ろを向いているであろうサクヤに視線を移す。
「ん? コンゴウさん? ってあれ? ってことは君ってひょっとして噂の?」
と堂々と話しかけられた。だけど何を言っているのか全然わからない。
「あの、その、わざとじゃなくて」
「ああいいよ別に、覗き目的じゃないのは見て分かるよ、あーでも男子の夢的には「きゃー」とでも恥じらった方がいいのかなぁ、ねえ?」
振り返ると他の女子達も上品にみんなクスクス笑う。
「い、いや、え、えっと、その」
「ほれほれ、早く閉めてね、今度は慌てずちゃんと確かめてから入る事、わかった?」
「はい、すみませんでした」
頭を下げる俺に「分かればよろしい」とそのまま扉が締められた。
「サクヤ! ナンデ! ジョシブロ! ナンデ! ネエ! ナンデ!」
パニックのあまりにカタコトでサクヤに詰め寄る。
「いや、風呂が何処かと聞かれたから、どうして案内したのに怒るの?」
「女子風呂案内するとは思わないだろーが!!」
「男は女の裸が好きと聞いていたから」
「そりゃそうだけどそうじゃない! というかあの子たちなんか動じてなかったな! びっくりしてたけど「ああなるほど」みたいな!」
「元より貴方が来ることはもう噂で流れていたから」
「それでいいんだ! って女子風呂だってわかっていたんだったらさ! なんで止めなかったの!?」
「いえ、あまりに堂々と入っていくから「度胸があるなぁ」って思っていたのだけど、やっぱり間違っていたのね」
「あたりまえだろーが! なんで女子風呂に当たり前のように堂々と服脱いで入るんだよ!?」
「ごめん」
「……うん、いいよもう、別に、なあサクヤ、よく聞いてくれな? 俺は風呂に入りたい! だから男風呂に行きたい! わかったか男風呂だぞ? 男が入っても問題ない風呂、オーケー? 何処にあるのか案内してな?」
「ない」
「え、ないってなんで?」
「なんでって……」
「ここは女子学院だもの」
「はい?」
「そう。エラルナ女子学院、学園都市の中で最も格式高い女学校なの、俗な言い方をすればお嬢様学校、教職員も学院長含めて全員女だから、男性用が必要ない」
「お嬢様学校って」
そういえばさっきの女の子も「お嬢様の夢」とか言っていたけど……。
「ってことは、俺は、その由緒正しい格式高いお嬢様学校で、覗きをしてしまったわけなんだが、やるやろ会に入っても、もうここには来れないじゃないのか?」
「確かに大変、これから通う学校でいきなりハンデを背負ってしまったね」
「は?」
「だからこれから通う学校でいきなりハンデを」
「違うわ! 俺は男! ここは女学院でしょ? 男は通えないの!」
「だからイシスがクサナギの能力の報告と共に貴方の学籍登録申請のための交渉を学院長にしている筈よ」
「交渉って、いや、それって交渉の余地はあるの? 普通に無理でしょ」
「さっきも言ったとおり能力者は凄い貴重なの、そしてイシスはその能力者たちについて権力と権限を与えられている」
「ああ、ここの部室とかそうだよな、そんな露骨な特別扱いを許すなんて、お嬢様学校って話だったけどイシスは何処か偉い人の娘とかなのか?」
「王女様」
「……は?」
「だから王女様、国王の第四夫人の長女、王位継承権は6位」
「マジかよ! 凄いな! そうか、この世界じゃ王族だと無理が通るのか!」
聞いたところによれば、サクヤとイシスは付き合いの長い友人、つまり幼馴染らしい。イシスが能力に目覚めた時期と同じくして彼女も能力に目覚めて、そんな折、かつて歴史書に記された能力者であることが分かり、サクヤもまた同じだと分かった時点で、やるやろ会を作ったらしい。
サクヤは王国騎士の称号を得ているから、王女であるイシスの傍に護衛という名目を立ててエラルナ女学院に入学し、彼女とはクラスメイトらしい。
そういえばイシスは人生を楽しみたいからやるやろ会を作ったと言っていたけど、サクヤはどう思っているんだろう。
そんな疑問が突然沸いてきて彼女に聞くとこう答えた。
「イシスと一緒にいるのは楽しい、彼女のおかげで私の学生生活はとても楽しいものになっているの」
と初めて満面の笑顔で答えてくれたのだった。




