死を想ふ詩
死にませう……
死にませう……
みんな一緒に死にませう……
さうすればなんにも怖くありません……
だからみんなで死にませう……
お手手をつないで……輪になつて死にませう……
さうすれば誰も寂しくありません……
だからみんなで死にませう……
それが無理だというのなら……
それが無理だというのなら……
自分を想つて死にませう……
自分を想つて死にませう……
笑つて……泣いて死にませう……
今までずっと堪えてきたのですから……もう我慢しなくていいのです……
もう耐えなくたつていいのです……
誰も恨まず死にませう……
憎い人を想いながら死んでいくのは……叶わぬ恋に身を投げることと変わりません……
憎い想いとの心中になつてしまいます……だから憎さを想ってやってはなりません……
誰も恨まず死にませう……自分のためだけに死にませう……
自分をほめて死にませう……
今までよくがんばった……よく耐えてきた……つらかった……もういいんだ……ありがとう……
自分をほめてあげませう……自分の痛みを一番わかっているのは自分だけなのです……
だから自分をほめて死にませう……最期くらい労わってあげて死にませう……
晴れやかな気持ちで死にませう……
暗い気持ちで死んでしまつたら……暗い深い所に落ちてしまいます……
ありのままに……明るい気持ちで死にませう……泣いたつていいのです……悲しんだつていいのです……
ただ暗い気持ちじゃいけません……晴れやかに……天へ昇るやうな……明るい気持ちで死にませう……
死後を夢見て死にませう……
理想の死後がまつてると……死後には夢見た世界が待つてると……
この嘆き悲しみは……きつと死後に報われるのだと……望むものが待つてると……
死後を夢見て死にませう……
死を想ふその心はなにより清いものなのです……
死を想ふその心はなにより純なものなのです……
死を想ふ心を恥ぢてはいけません……
それは心が純な証明なのです……とてもとても清く美しひ……
とてもとても尊いのです……そして哀しひのです……
死を想ふ心を恥ぢてはいけません……
それは恥ぢではないのです……
清さのあらわれなのです……
受け入れたつていいのです……
死を想ふ心を受け入れて……一度ばかし立ち止まつて……生を見つめ返してみたならば……少しは生きやすくなつているやもしれません……
ありのままに感じてみませう……
自然のままに……何も考えずただ感じてみませう……
苦しみ……辛さ……痛み……想つていたよりもきつくないやもしれません……
喜び……楽しみ……美しさ……想つていたよりこの世が美しくみえるやもしれません……
生きたくなつたら生きませう……
存分に生きませう……晴れがましく生きませう……
その苦しみに見合う喜びが待つているやもしれません……
だから人は辛くとも生きていけるのやもしれません……
生きませう……
死にませう……
生きませう……
死を想つて生きませう……
死を想ふからこそ生が輝く……
生に疲れてしまつても……死を想へば少しなりとも疲れがとれる……
死にませう……生きませう……死を想つて生きませう……
生を享受し死を想ふ……なんと気高き生き方か……
死を想ふ詩を詠う私はまだ生きている…………
ああ……どうか皆様末永く……死ぬまで生きてくださいまし…………