一日目 一
今日の一般人の一日
朝は平均的な一般人にしては少しだけ早く起きる。
時間は太陽が昇り始めるかどうかのまだ薄暗い時間に起きる。
この時間に起きるのは俺の毎日の日課のおかげだ、ここ数ヶ月前から始めている日課なのだが慣れてしまえばこの時間に起きることは苦でもなく気持ちいい。
起きた後寝床をすこし整えて部屋を後にする。
実は今は自分の家にいるわけではなく宿に止まっている、とある事情で宿を取らざるを得なくなったのだがなかなか勉強になることもあって気にいっている。
ここに来てからベッドを使っているが布団とは違うよさがある、それに気づけたこともひとつの勉強だ。
部屋を出た俺はそとにでて井戸で水をあげて顔を洗い部屋から持ってきていた木刀を構える、俺の日課はこの愛用している木刀で素振りをすることだ。
素振りをして満足できるほど体が温まってきたら次はただ素振りをするだけでなくできるだけ昨日の自分よりもさらに早く振れるように工夫を始める。
俺はあまり筋力が高いほうではないし力で押し切るのはあまり得意ではない、だからできるだけ早く振りぬくことを重点的に伸ばす、武器の扱いはド素人も甚だしいがそれでも敵に相対したときは手加減なんてしてくれない。すべて我流で粗だらけだが教えてくれる人がいないことには仕方がない。
素振りが終わると次は走り込みを始める、宿周辺を朝食までの残り時間ずっと走り続ける。
スタミナは重要だ、戦闘中や移動中にばててしまってはかなりまぬけなことになる。
最初の頃は酷かった、今もそこまで体力があるわけではないが最初は走りこみのコースを一周しただけで息が上がっていたものだ。
走り込みを終えて軽く汗を拭くと朝食を頂くために食堂へ向かう。
別に朝食は頼めば早めにだしてくれるが申し訳なくて頼むきにはなれなかった。
食堂について隅のほうの人が少ない席に座る、朝食が運ばれてくるのを待っている間は今日の予定を考えておく、予定といっても宿の宿泊料金を稼ぐための仕事をどうするかという事だけだが。
宿で働いている女の子が飯を運んできてくれた。
「お待ちどうさまです!」
「ありがとう」
ちゃんとお礼を伝える、礼は良好な人間関係を築くためのとても良い手段だ。まぁ俺はお世辞にも友人が多いとも言えないがな。
朝食を美味しく頂いた後は宿から出て仕事を探しに行く、色々な仕事を渡してくれる便利な場所がありこの町に住む決して少なくない人数がそこにお世話になっている。
その場所は一般的に『ギルド』と言われていてこの町以外にも大きな町には基本的にどこにでもあるう一般的な建物だ。
町の大通りを歩く、大通り沿いで出店している出店を軽く冷やかしながら進んでいく、出店でどんな物が売られているのかを見るのは俺の趣味の一つだ、店からしたら買わない客は迷惑でしかないだろうが俺は売り物にも興味はあるがそれを買うほどにお金に余裕がないので仕方がない。
ギルドについたが少し人が多すぎるな、仕事を張り出している掲示板には人だかりができている。
受付のほうにも人だかりができているので俺が仕事が請けれるのは少し後になるな、仕事が選べなくなってくるが仕方ない、あの人だかりもまたお金がほしい同業者だ・・・少し待つぐらいは俺にもできるさ。
時間がたって人だかりが小さくなった・・・どころか人がいなくなるまで待ってしまっていたようだ。
先程よりも仕事が激減した掲示板を眺める、掲示板に残る仕事は基本的に二通りあり報酬があまり多くない簡単すぎる雑用的な仕事か、報酬に見合わない死ぬ危険のある難しい仕事か。
どちらにしても報酬に関わることだがどちらにせよ不人気な仕事だ、だがやらなくては俺の金が底を尽きてしまって宿を追い出されてしまう。
どれ・・・どんな仕事があるか。
・・・・ふむ・・・・・ん?、これで良いか。
『回復薬の薬草を採ってきてほしい
数はこちらの支給する入れ物一杯にだ、もちろんそれ以上とってきてもいい、その分報酬は弾もう
報酬は1,000ミルと店で販売している回復薬を一つ譲ろう
魔法店 店主 ハーシェル』
宿代一日には届かないが宿代は一週間ほど余分に払ってあるし今はあまり気にしなくて良い。
さっそく仕事を請けることにしよう、仕事の張り紙を掲示板から剥がし受付にもって行く。
「仕事の受付ですね・・・ってあなたですか、見てましたよ。また椅子に座ってずっとボーっとしてましたよね」
「すまない、だが仕方ないだろう俺はあまりがっつく人間ではないんだ」
「言い訳にしては弱いですね?、まぁいいです仕事ですね了解しました。依頼主は直接入れ物を取りに来てほしいとの事です。」
ふむ、直接か・・・道は・・・。
そう考え始める前に受付の女性が地図を渡してくれた。
「どうせわからないだろう・・・と店主の方が置いていってくれました」
ふむそれは申し訳ない、受付に感謝を伝えて依頼主の店まで行くことにした。
目的の場所に到着した
地図を持っていたので迷うことはないだろうと考えていたのだがだいぶ時間をくってしまった。
いや決して地図が汚いとかそんな理由ではなくこの店が路地裏の奥の奥にあったのだ、こんな場所に店を開いて本当に客は来るのだろうか?
いやもしかすると駆け出し冒険者向けではなくどちらかと言えば中級者以上の冒険者が知っている穴場のような店なのかもしれない。
まぁ仕事で来ているだけだ無用な詮索はしても迷惑なだけだろう。
ドアを押し開けると中はきれいに整理された店だ。
左右には色鮮やかな薬類が並べられている。
・・・この色は本当に安全な薬なのか?
商品を色々見て回っていると店の奥から人が出てきた。
「物音がすると思って見てみればこんな店に客とは物好きな奴もいたものだ」
でてきたのはどうやらこの店の店主のようだ。
「すまないが客ではない、依頼で来たんだが」
「依頼・・・・?、あぁ少し前に書いたものか」
どうやらこの店主は出した依頼のことを忘れてしまっていたらしい。
だが確かにこの依頼が出たのは最近の事ではないのかもしれない、そうだとしたらギルドに勤めている者の責任なのかもしれない。
「大変待たせてしまってすまない」
「ほう、礼儀を知っている冒険者か・・・珍しい。礼儀には礼儀だ、こちらから名乗り出ておこう、私の名前はハーシェル、腕はそれなりの薬師であり魔法を扱うものだ」
「俺は・・・ただの冒険者だ。名前はロクハ」
俺が名乗るとハーシェルは「ロクハ・・・ロクハ・・・」と呟くと一度頷きこちらを見た。
「一応忘れないようにはしておこう、では依頼書を見せてもらおう。一応確認はさせて貰う」
どうやらこの店主は依頼内容を覚えていないようだ。
拒否する理由も無い素直に依頼書を渡しハーシェルは確認をしたあと依頼書を破り捨て「待っていろ」と言うと店の奥に引っ込んだ。
少ししてハーシェルは片手に納まるほどの大きさの籠を三つほど重ねて持ってきた。
「三つあるが一つでも満杯になればいい、元々の依頼内容と同じだが少し違うのは少し前の私自身が予定していたであろう籠の大きさよりも幾分か小さい事か」
用意してもらった籠を受け取ると店を後に・・・しようと背を向けドアに手をかけたところで声が掛かった。
「期限は今日までってことにしておく、もし足りなくても一応報告しに戻ってこい、報酬は足りない分を差し引いて渡そう」
肩越しにハーシェルを見るともうこちらに興味を失ったのか店の奥に戻るところだった。
俺は今度こそドアを開いて薬草を探しに行くことにした。