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とりあえず出来上がってる所までバババッと出しましたぁ。
これ以降の更新は『血髪の破綻者』と同時進行なのでちょっと遅くなるかもです。
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私立草津高校。私が通っていた高校だ。そして、これからまた通う高校でもある。
私の家は一軒家だ。母が亡くなった年に手放した。大学が遠かったため、近くにアパートを借りる予定だったので、ちょうど良かったと言えば、ちょうど良かったのだろう。
私は制服に着替え、ダイニングに向かう。生まれた時から18の時まで暮らしていた家だ。流石に間取りはまだ覚えていた。
部屋に入ると大きなダイニングテーブルと椅子が3つ。テーブルの上には茶碗と大きめな皿にベーコンエッグに千切りキャベツ。そして置き手紙が1枚。内容は『朝ごはんちゃんと食べてね。お母さん先に仕事行くから、ちゃんと学校行くのよ?』だった。さっきまでいたのにもう出ていったのか…。
私は朝食を軽く済まし身支度を始めた。とは言っても学生の身支度だ。髪をとかし、顔を洗い、歯を磨く。いちいち化粧なんかしなくて良い。なんて楽なんだろう。行動を表に出せない内気な私だが、内心は男勝りな大胆な人間。化粧等で可愛く見せようとか、男子に好かれたいだとかそういう感情をあまり持たないのだ。
パパッと身支度も済ませ私は学校へ向かう。
なんて懐かしい景色なんだ。私は高校を卒業と同時に家を出て大学に行き、大学の近くの企業に就職したのでこっちにはもう10年以上帰ってきていなかった。
高校までは家から歩き10分、電車にゆられ15分、また歩きで15分でつく。私は特に遠いとはあまり思わない。その間本でも読んでいられるから。
電車を降りた後、10分も歩けば草津高校は見えた。私は誰とも話さないまま学校に着いたのだった。
8時01分。玄関に立つ。
【草津高校 3年 クラス変更】
草津高校は毎年クラス変更がある。始業式の日の朝、玄関にA〜E組のクラス分けの紙が貼られている。多くの生徒はワクワクしながら見るものであろう。…だが私は全くワクワクなどしていなかった。当然今も。ワクワクするのは、『好きな〜くんと一緒のクラスになりたい。』とか、『〜先生のクラスが良い。』とかそういう思想がある人が思うものだ。私にはそういう思想がない。
「あった。」
私はA組だった。…2年の頃は何組だったのだろう。覚えていない。
8時05分。
始業式は8時40分から。私は教室に入り、黒板に貼られた席順を見て、自席に座り本をまた開く。教室には私を抜かして4人の生徒。名前は知らない。忘れたのではない。もとより知らないのだ。
8時13分。教室に次々に生徒が入ってくる。
久しぶりや、おはようなどの挨拶が飛び交い始める教室。
………。
どうでもいい。挨拶をしたから何かが変わるわけがないのにどうしてそんな無駄なことをするのか不明だ。そう思った私は本を読み続ける。
8時30分。講堂へ向かう生徒。
私はゴチャゴチャした所が苦手なのでみんなが行った後、向かうことにした。
8時32分。教室には私だけ。
待ったのは自分だが間に合わないと悪いので、私は本を机にしまい教室から小走りで出る。
…
「おはよう。」
ビクッ
教室のドアの後ろに隠れていた見知らぬ男子生徒に、私はいきなり挨拶されたのだ。…いや、隠れていたというか、待ち伏せされていた。ともかく私にとっては恐怖でしかなかった。
「だ…だれ?」
男は笑いながら言う。
「ひっどいなぁ。1年からずっと同じクラスだったじゃん。名前は知らなくとも見たことくらいあるっしょ?」
私は考えた。13年も昔のことだ。学生時代…今現在もそうなのかもしれないけど、昔の私はこの人の事は見たことがあるかもしれない。でも、『見た』ではなく『目に映った』の方が正しいと思う。結論、覚えていなかった。
「知らない…。」
「あぁ…そう…なのね…。ショックやわぁ…。」
何だコイツ…私は無視して講堂へ向かう。
「ちょっ!それはないっしょ!?せめて自己紹介くらいさせてくれ!!お願い!!」
手を合わせながら頭を下げる男。頼み込まれる私。
「…はっ…早くして…。」
断りたかった。でも強く頼まれた私はやはり断れなかった。
「おう!俺の名前は福渡 景。お前と同じくA組だ!テストの学年順――――――」
講堂へ向かう私。
「えぇ!?ここで!?」
自己紹介。名前は聞いた。もう始業式始まってしまうし、こんなのに時間は取ってらない。
「ちょっと!ほんと待ってって"馬場"さん!!」
ピクッ…
「中途半端なところで終わらされてかつ、自己紹介俺だけってちょっとおかしくない?」
勝手に自己紹介させてって言ってきたのはそっちじゃないのか。
「じゃあよろしく馬場さん♪」
一緒に歩きながら言ってくる福渡。私はお前に自己紹介するとは一言も言っていない。私は小走りではなく普通に走って講堂へ向かう。
「馬場さん!?ちょっと待って自己紹介!」
無視する。
「はい!ストォーップ♪」
福渡は追いかけてきて私の前に立った。両手を広げ通せんぼ状態。もうストーカーにしか見えない。
「馬場さんの口からちゃんと自己紹介聞きたいんだ。」
福渡は真剣な眼差しで言ってくる。
……ハァ…
ため息を1つ。ホントこいつは私の"ニガテ"なタイプだ。言ってやろうじゃないか。私の今一番言いたいことを。
「私は…。」
「うんうん♪」
福渡はニコニコして聞いている。
私は言う。
「馬場じゃなく、馬場だ!」
生まれてこの方、こんな大きな声を出したことがあっただろうか?多分初めてだろう。
ポカーン…
呆然と立ち尽くす福渡。
私は福渡を避けて走った。できる限りの全力疾走。福渡から逃げるとともに、真面目に始業式に間に合わないと思ったから。
「えぇぇ!?違ったのおぉぉぉ――――…!」
後ろから驚いた福渡の声がする。ふざけるなとしか言いようがない。
8時46分。結局間に合わなかった…。
始業式は始まっている。私は講堂前で生徒指導の教師に捕まり怒られた。私は悪くないのに…。
私はこの日初めて、特定の人間を『嫌い』になった。
楽しくやって行こうと思います。
『血髪の破綻者』もよろしくお願い致します( ー`дー´)キリッ