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短編で出す気満々だったのに…(泣)
自分では書き方変えてみて結構面白いと思うので読んでくれたら光栄です(*´罒`*)
■◆□◇◻▫▫▫▫Re:Time year▫▫▫▫◻◇□◆■
▼△▶◁♦♢▪▪〜2週目の青春〜▪▪♢♦▷◀△▼
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馬場 柳津 29歳。
私にやりたいことなんて無かった。欲というものが少ないのか、子供の頃から欲しいと思う物があまり無かった。それを気にした母は、頃椅子に座りいつものようにただただぼんやりしていた私にペンとノートをくれた。母は言う。『勉強をしていれば、やりたいことは見えてくる。』『勉強をしていれば、やりたいことができるようになる。』…と。私は言われた通り行った。それは親への忠実心が強かったからではなく、他にすることがないから。私は母から問題集を買ってもらい、もらったペンとノートで問題を解き続けた。そんなことをしているうちに私は小学3年の頃、数学検定準二級を合格。高校1年程度の数学だ。新聞にも掲載された。輝かしいほどの綺麗な人生のスタートと呼べるだろう。でも私は嬉しくも無かった。別段、嫌ではない。嬉しいと思わなかっただけ。それからも私は勉強に明け暮れた。中学に入っても。高校に入っても。大学に進学しても…。目的は変わらない。【他にやることがないから】…
時は過ぎ、大学卒業。私は22歳で大手IT企業に就職。誰もが羨む素晴らしい会社…らしい。前代未聞の推薦就職だ。『お願いだから来てくれ』と頼み込まれ断れなかった。昔から私は押しに弱い。
初めて勉強以外のことをする。とすら思うくらいになっていた自分。当然最初は戸惑ったが、1週間も働くと私はその会社に適応した。社長も驚いていた。そして感謝された。私は嬉しかった…はずだ。よく覚えていない。でも確かに嫌ではなかった。
そして、2週間、1ヶ月、1年と働いていくうちに私はトップクラスの仕事スピードとなっていた。当然社長も大喜び。周りもそれを褒めてくれた。
でも…
落ちるのも速かった。
いつも通り出勤し、いつも通り仕事をこなす。でもその日だけは違った。その日…いや、その日から…
パソコンが起動出来ない。どうしてか調べるためケーブルを見ると、ズタズタに切られていた。一瞬ネズミかと思ったが、どう見ても刃物の傷だった。何故そうなったかの原因は謎だったが、即時にケーブルを変え、仕事に戻る私。でもパソコンを起動した途端、原因はすぐ分かることになる。
それは1通の社内メール。
件名 調子こくなks
メッセージ 社長にゴマすって昇進狙いバレバレなんだよクソ女。前に出んなボケが。
パワハラだ。こんな簡単なものはすぐにでも社長やら警察やらに証拠として出せば終わるものだろう。…でもそれが出来なかった。私はそんな簡単なことが出来なかった。私は誰かに相談するとか、誰かを頼るとか、誰かに託すなどという行為を今までしたことが無かった。しようとも思えなかった。誰も信用出来なかった。信用することすらしたことが無かった…
何もしない私。パワハラは続く。日に日に悪化していく。狂わしいほどに…
毎日社内メールが20件、朝と昼と夜に…
キーボードを潰され押せない状況にされ。
インターネットを遮断された。
インターネットを遮断されてしまえば仕事が出来ない。私は困り果てた挙句、社長に相談をした。
「あの…社長…」
「どうしたんだい馬場くん?」
私は思い切って全てを話す。すると社長が言った。
「そう…だったのか…」
社長は真摯に受け止めたようだった。
「それは大変だったな。」
「はい…」
すると社長は言った。
「馬場くん。今日ちょっと空いてないかい?」
「はい…あいてますけど?」
「少し飲みに行こうか。」
社長の誘いで飲みに行くことになった私。
「今日は私の奢りだ。気づいてやれなかった私のせめてもの償いだ。存分に飲んでくれ。」
「は…はぁ…?」
私は酒が苦手だ。飲みに誘われた時は断ろうとはしたものの、押しに弱い私は断ることがまた出来なかった。
来てしまった以上飲まないで帰るのも失礼になると思い、飲み始める私。出来るだけ弱い酒を頼んだ。
「なんだ馬場くん。遠慮なんてするな。もっといい酒を飲まんか。」
「い、いえ…私はこれで…。」
「ダメだダメだ!これを飲め!」
社長が出してきたのは【マティーニ】だった。
『カクテルの王様』とも呼ばれる有名な辛口の酒。ジン+ベルモット+オリーブ で作られる。アルコール度数は33度。
私にはキツすぎる。…けれど。
「はい…いただきます。」
受け取ってしまった。断れないのは自分でもとても嫌なのだが、人間そう簡単に変わることはできない。
ゴクッ…
喉が焼けるほどに暑くなる。痛みすら感じる。とてつもなく苦しかった。
「どうだ?いい刺激だろ?」
「は…はい…」
頭がボオォ…っとし、クラクラする。
「これも飲めこれも!」
どんどん酒を勧めてくる社長。それを拒むことなく受け取り飲んでしまう私。そんなことをしているうちに…私は…
「あ…あれ…?」
パタンッ…
倒れてしまった。アルコール中毒ではない。普通に酔いつぶれてしまったのだ。
ニヤリ…
朝。
目覚めたら知らない天井が見える。どこだろう。
起き上がる私。
「えっ…?」
目の前に映ったのは裸でタバコを吸う社長。そして鏡に映る裸の私。信じられなかったが、状況はすぐに理解出来た。
私は社長に侵されたのだと。
「起きたか。」
「ッ……!!」
怒りがこみ上げてきた。私はかつてここまで怒りを持ったことはあっただろうか。思いっきり社長にビンタをして、その部屋を後にする。後の事はあまり覚えていない。気がつくと私は自分の部屋でただ泣いていた。泣き叫んでいた。初めてだったのだ。大事に取っておいたわけでもないが、こんな感じに奪われるとは思ってもいなかった。
それからというもの、私は3日間家から出なかった。と言うより出られなかった。ストレスによるものだろうか、食欲がない。死なないために水だけを少しずつ飲んで過ごした。元々少ない体重が5kgも減っている。酷い姿だ。
会社からは連絡もない。多分もうクビにされているだろう。理不尽リストラだ。こっちが警察に通報すれば向こうもただじゃすまないだろう。でも私の所に手が回ってこないのには理由がある。私が他人に、ましてや大事になる警察に通報できるような人間じゃないと思われている…いや、確信づけられているのだ。…悔しい。でもそれが私なんだ。また涙が溢れ出てくる。どんなことをされようとも、誰にも言うことが出来ない。言ったらどうなるか。私はトラウマを植え付けられた。
誰も信用することが出来なかった私が、誰も信用したくなくなった私になったのだ。
23の半ばで退職という名の退職をした後、半年間家に引きこもった。外に出る勇気がなかった。幸い、使うことのなかった貯金が半年ぐらい余裕で生きられるくらい溜まっていた。でも、それ以降は金がない。就活はやろうと思えば出来ると思う。なんせ、学歴だけはトップクラスだから。でも、やろうと思えなかった。怖かったのだ。次行く会社でまた同じことをされたらと思うと怖くて仕方が無い。
それでも1人でどうにかするしかない。
友人を頼ることは出来ない。親友はおろか、友達すら私にはいない。ずっと1人で勉強してきた。友達を作るチャンスはいくらでもあったのだろう。でも、それが出来なかったのは今語ってきたことと同様、誰も信用することが出来なかったのだ。話し方が分からない。接し方が分からない。こんな私と友達になってくれる人はいなかった。
家族を頼ることは出来ない。それは申し訳ないからとか、情けないからではない。いないのだ。祖母祖父は共に私が産まれる前に他界。母と父は私が15の時離婚。女手一つで私を育てているうちに、私が18の時過労で倒れ、その後1ヶ月で死亡。大学の入学金は母の遺産で何とかなったが、その後のお金は支援金等でやりくりした。私には家族がいない。残っているのは母の遺書のみ。小さな封筒に小さな紙。書かれていたのは『幸せになってね。』の一言だった。
今思うとなんて無慈悲な言葉なんだろう。
今の私にとってここまで重い言葉はない。
流石に金が必要になったので、近くのコンビニエンスストアでアルバイトを始めることにした。人見知りな私。何故コンビニにしたのかと言うと、簡単な話それを克服したいからだ。…でも、そう簡単ではなかった。
学歴を見てすぐに採用してくれたが、その店長の意に反して全くと言っていいほど動けない私。あきれ果てる店長、そして店員一同の嫌そうな顔。店長の最後の言葉は、『君、ほんと使えないね。』だった。私はクビにされた。
それでも生活するに金が必要なため5年間もの間バイトを転々とした。そして今日、ラーメン屋のバイトをクビにされてきたのだった。フリーターとすら呼べないようなこの状況に私は笑う。
「フッ私どこから間違えたんだろう。」
笑い続ける。
「酷いなぁ。不平等だよこの世界は。私は学生時代頑張ったよぉ?頑張った分だけ報われるんじゃないの?努力は必ず報われるんじゃないの?…私はただ学生時代時代を棒に振っただけなの…?」
母死んだ後、私は何回も思った。
私は私が嫌いだと。
私は窓を開け、天に向かって言う。
「私の青春を返してください。」
青い春。楽しい思い出に、悲しい思い出。
「私に青春をください。」
私には何も無い。あるのはペンと山積みノート。
「私の…青春のノートに…楽しい思い出を…」
涙を零す。
「楽しい思い出が欲しいです…」
私は天に願う。そして…神に願った。
「分かったよ!君の願いを叶えてあげよう!」
後ろから声が聞こえた。
「だれっ!?」
誰もいない。
「ごめんね。君の脳に直接話しかけているんだ。僕の姿は見えないよ。」
頭を抱える私。
「とうとう狂ったのかしら…」
「違う違う!僕は神様だよ!君がさっき青春を返してくれって願ったでしょ?それを叶えに来た神様だよ!」
そんなアニメチックな話誰も信じるわけがない。
「フッ信じて欲しいなら姿くらい見せたらどお?」
何返事しているんだろう…バカバカしい…
「しっかたないなぁ…もう。」
ピカッ!!
一瞬光で前が見えなくなった。
「えっ!?」
目の前に子供があぐらをかいて浮いている。
「願いを叶えに来たよ馬場 柳津さん。」
私は驚きただ呆然と立っている。
「驚かれちゃ困るなぁ。君が呼んだんじゃないか。青春を返して欲しいんでしょ?別に僕がもらった訳じゃないけど青春を返してあげるよ。」
「なに…言っているの?」
理解できない。私は本当に狂ってしまっているのだろうか。狂っていないのだとしたら目の前にいる子供は何?浮いているし…本当に神様?いやいやそんなのいる訳ないし…。
「もう…これだから人間はダメなんだ。見たことないものは何も信じない。これが最後だよ。君の願い叶えてあげる。青春を返して上げると言っているよ?叶える?叶えない?どっちにするも君次第だよ?」
状況が理解できない。混乱する私。
私の願いを叶えてくれる?でも…どうやって?
「はーやーくぅー」
口を尖らせてくる神様。
……
…
意味もわからないものにいきなり賛同することは良くないものかもしれない。今までの私はそうしてきた。でも、そうしてきた結果がこの現状なのだ。じゃあここで選択を変えてみるのもアリなのかもしれない。
私はそう思った。
今起きているこの状況は考えて分かるものじゃないから。
今思う。私の浅はかな考えをお許しください。
「…叶えて神様。」
私は笑って言う。
「やっと決心したんだね!分かったよ!君の願いを叶えよう!!」
もうどうなったって現状より酷い結果にはならないだろう。だって現状が1番酷いのだから…
『Re:Time』
パチンッ
神様はそう言うと指を鳴らす。
急激に眠気がさしてくる。
「さぁ眠って!起きたら君は……――――!―――…」
…
…神様がなんて言ったかよく聞こえなかった。
ピッピッピッ…ポーン。
携帯がなる。
0時00分、9月7日をお知らせします。
あっ私30歳になったのか…とうとう三十路か……
…
……
ピピピピッ!!ピピピピッ!!ピピピピッ!!ピピピガチャン!!
「んっあぁああぁ…あ。」
背伸びをする。何だか今日は体が軽い。
朝か…新しいバイト探さなきゃな………
……?
「ん?」
見覚えのある天井。でも私の家ではない。
「ここって…」
「朝だよー!柳津ー!」
母の声がする。
「私の…」
ガチャッ!
「ほら早く起きな柳津!」
部屋に入ってくる母。
「私の家だ…。」
昔の家。中学、高校時代に過ごした、母と暮らした家。
「何言ってるの!?当たり前でしょ!?遅れるわよ早く支度して!!」
バタンッ
部屋から出ていく母。
携帯を見る。
「すごい…。」
私は息を呑む。
20××年 4月7日(月) 7時01分38秒
私、馬場柳津は神と名乗る者の力により『17歳の高校3年生』になりました。
002に30秒後更新。