万事解決=力
「こんなの、アニメだけだと思っていたのに……」
アニメでは何度も見たことがある。瞭は、アニメが好きだ。
テレビの中なのに、興味を引き付ける何かがある。
子供のころから、色々なアニメを見ている。だから、こんなことはアニメだけだと思っている。
「中々、救急車が来ないな……、しょうがないな。担いで、病院に行くか……。
確か、近くに病院があったはずだ。緊急だけど大丈夫かな……?」
現在、十一時。近くの病院は、六時にしまったはずだ。だが、夜は緊急として
裏口が開いているはずだ。
そんな感じで、病院に行くことしか頭になかった瞭は気づかなかった……。
後ろに、黒く、大きい鉄の塊のようなおぞましい獣がいることに。
「とにかく担がなきゃって……うわっ」
瞭は、葵を担ぐためかがんだ。すると、突然、突風が吹いて瞭は吹き飛ばされた……。
風の感じは、大きいうちわで、あおがれたような感じだ……。
「いてて、なんだなんだ? 急に風が……? とにかく葵を……
え、熊……?」
そう、瞭が、葵のところに戻ろうとしたとき、大きな爪を横に振り下ろした
瞭の身長の二倍くらいある、熊がいたのだ……。
でも、熊の顔ではない。もっとおぞましい、悪魔のような顔なのだ……。
その獣は、爪を振り下ろしている。ということは、瞭を攻撃しようとした……
いや、瞭を攻撃した……ということだろう。
あんな大きい爪で切られたら、誰だって一撃でおだぶつだろう……。葵を抱え込むため、
しゃがみ込んだのが、当たらなかった理由だろう。
――それにしても、アニメ的展開に救われたのか……
さっき、アニメ展開はテレビの中だけだからありえない、と言っておいて
アニメ展開に助けられてしまった。もう嫌になる……。
この獣はたぶん、一撃で瞭を仕留め損ねたから、怒っている。鼻息が荒い……。
たぶん、次の攻撃はよけることができないだろう。
瞭は、葵を抱えると無造作に走り始めた……。
「絶対助けるからな。なんで倒れているのか知らないが、病院に連れて行ってやるから……」
そんなことを、気を失っている葵に言い、瞭は前を向いた。
その瞬間、また、後ろから突風が吹いた。
「うわっ。またか……。あいつどんな馬鹿力なんだよ……。腕を振っただけで、人が吹っ飛ぶなんて……。
厄介だな。ちゃんと走れるのか?」
また風が吹いた。落とさないようにしっかり葵を抱えているが、何回も吹き飛ばされると、
落としてしまいそうだ。
――というか、軽ッ!!
やはりそこは女の子、吹き飛ばされたら百メートルぐらい飛びそうなほど軽い。
しかもなんか、いいにおいがする……。葉佑なら変なことしそうだ。
まぁ、瞭はあまり興味がないのだが……。
こんなことを考えているうちに大通りに出た。大通りは人が多い、だからすこしは恐怖が和らぐ……。
だが、あいつをまくにはとても不利だった。やはり、まくには道が入り組んでいる方がいい。
そう考えて、瞭は、少し戻り、路地に入った……。まだ、あいつはついてきている。
感覚というか、鳥肌というか、そんなものでわかる。とても恐ろしい感覚だ……。
そんな恐怖感があるのに、何故か、体は熱かった。その理由はすぐにわかった。
葵の体温が、とても暑くなってきているのだ。しかも、息も荒い。とにかく苦しそうだ……。
ここから病院まで、二キロはある。しかも、この道で行くと五キロはあるだろう。三十分はかかるだろう。
こんな絶望的状況で、瞭の右肩の近くが光った。
「ハローハロー、大変そうだね。大丈夫? 助けてあげようか?
君が望むなら、全てがうまくいくための力をさずけるよ~。ねぇねぇ、いる? いる?」
なんだこいつは……? と、思ってしまう変な口調に、瞭は考えず答えた。
「いる! 今すぐ力を貸してくれ!」