始まる非日常
「俺が絶対助けるからな。」
彼、結城 瞭がささやける言葉はそれだけだった。
今、自分が抱えている少女を落とさないように、瞭は抱え直しながら全力疾走した。
「とにかく、何も考えるな俺、今はこのことにだけ集中しろ。」
この抱えている美少女の名前は、真瀬 葵。
理性が吹き飛びそうなくらいかわいい。実は瞭が好きになった相手でもある。
まぁ、いわゆる片思いってやつだ。その片思いの相手を抱えているなんてハッピーなシチュエーション
そうそうありえないだろう。
高ぶる気持ちを抑えて瞭は、道を走りつづけた
「でも、なんだってこんなことに巻き込まれなきゃいけないんだ。パシリのせいだ……。
アイスとコーヒーを買いに行ったからだ……。まぁ断らなかった俺もあれなんだけどな。」
瞭には、妹がいる。結城 夢だ。中学3年で、一番忙しい時期の受験がある。
瞭が、夜更かしには欠かせないコーヒーを買いに行こうとしたときに、
夢がアイスを頼んできた。
「夢のやつ後で覚えとけ。痛いじゃすまないかもしれないことを…、って駄目だ。
はたから聞いてれば変態と思われちまう。」
怖いのを抑える為に、虚勢をはっている。独り言でごまかそうとしている。
でも、瞭は真瀬だけは助けたいと思っている。
「まずはこの状況の打開策をみつけなきゃだな。逃げてるだけじゃ何も始まらないし。」
そう、瞭は逃げている。この悪魔のような獣から。