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狂ったリクツの絶対正義  作者: 狂える
三章 狂人の抱く夢
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第六十五話

「この剣は、聖剣って言われているんです。」


テクノバーンが誇らしげに掲げるその剣は、主にその刀身の色のせいで派手に見えたが、装飾に関してはむしろ実用性に追求されているような、シノトの目から見てなんだかちぐはぐな印象を受けるものだった。しかしその性能はシノトも先ほどその目で確認している。とりあえずシノトが押し黙っていると、テクノバーンは焦れたのか自分から話し始めた。


「これは神より賜った、神の加護を持つ剣だって言っているんですよ。木を切るための斧ではなく、生き物を捌くための刃物でもなく、生きた命を殺すためだけにある剣が、神の加護を授かったもの。勇者殿にこの意味がわかりますか?」


テクノバーンの問い掛けに、シノトはなおも無反応を貫いた。それが無視から来るものなのか、それとも本当にわからないからなのか、それはこの際どうでもいいだろう。敵の前にも関わらず、テクノバーンは愛おしげに黄金の刀身を撫でる。


「この剣は、すべての殺傷を許す。魔物を殺し、敵を殺し、あらゆるものを神の加護のもとで殺すことでそれは正当化される。いや、むしろこの剣の存在こそが、神が他の生き物を殺せとおっしゃっていることの立証になっている。だからそこにはためらいも嫌悪も、すべてがあってはならない。なぜならそれは全て正しいことなんだから。」


「なるほど。要するに『この剣に力を授けました。さあ、あの生き物を殺しなさい。』と言って渡してきたのがその剣だと。そして自分は神様の申し付けを忠実にこなしているだけとね。神様は殺しが好きですね、しかしその剣の使い道、何かを守るためというわけにはいかないのですか?」


「それならば剣である必要はない。盾でいいし、もっと言えばその手を直接下せばいい。武器である以上、神が求めているのは命の争いと考える方がしっくりくるだろう。」


「・・・・・・そういえばそうですね。」


テクノバーンに言われて、シノトは納得したのか頷いていた。テクノバーンも話し終えたようで、改めてシノトの方へ剣を向ける。主張された聖剣は、黄金の輝きをシノトに向けていた。


「この剣がある限り、僕に負けはない。だから今一度聞こう、なぜ殺さない、なぜ自分で殺したなどという!神に授かった肉体、それがあったからこそ君は人を殺すことになったのに、なぜ自分で全てを負おうというのだ!」


シノトはその言葉を聞いて、やっと合点が合ったという顔をした。結局のところ、どうやらこれが聞きたくてかれこれと話してくれたらしい。シノトもその親切心に習ってなにか気の利いたことを言えればとは思ったが、さんざん悩んだ挙句口から出たのは最初に思った通りの言葉だけだった。


「別に、神様とかは知らないですけど。でも、誰だって殺した相手の墓の前で、本当は殺したくなかったなんて言いませんよ。俺は殺人鬼ですけど、そんな人間になるのはゴメンです。」


「・・・・・・君はいいよ、勇者殿。僕はもう何人殺したかなんてわからない。忘れないようにといくら努力したって、僕には限界があった。」


しばらくのにらみ合いの後、先に動いたのはテクノバーンの方だった。片手で振りかざす剣に、シノトは同じように片手の剣で受ける。だが直具に現れる聖剣をかわすことができず、シノトはたまらずに腰から新たな剣を引き抜いた。


金属同士の衝突に火花は散らない。どちらの剣にも大した手応えは残らず、そしてシノトが新たに引き抜いた剣の刀身は宙を舞う。続くひと振りはなんとかかわしたが、勝負に決着がつくのは時間の問題かに見えた。同じやりとりがもう一度続き、とうとうシノトの手元には剣が一本。そしてその剣も、瞬く間に切り飛ばされてしまった。


テクノバーンに手加減は一切なかった。シノトの最後の剣が宙を飛ぶ間に、紫色に光る輝きをシノトに差し向ける。残った柄の部分だけで防いだとしても、おそらく次の瞬間には聖剣に貫かれているだろう。この瞬間、テクノバーンは自身の勝利を確信していた。むしろ自分の一番を出した以上それが当然のこととすら思ってさえいた。


――――――だから、紫色の刀身がまた新たに宙を舞っているのを目にしたときは一瞬思考が追いついていなかった。


シノトが狙った首元を防いだのは、本当にギリギリだった。テクノバーンは間一髪致命傷を防ぎながらも、頭のどこかで冷静に何が起こったのかを分析する。


シノトが手に持っていたのは、特にこれといって変哲もない一本の短剣だった。サイズの小ささからも、どこかに隠し持つことことはそう難しくないだろう。だが自分の目の前、黄金色に輝く聖剣と刃を交えてびくともしないその短剣が、ただのものであるはずがなかった。


「なるほど、神様から授かった剣というのはすごいですね。」


「なぜ・・・・・・それは一体・・・・・・」


動揺するテクノバーンから、剣を振り切ることによって距離を取るシノト。片手に握っていた剣の残骸を投げ捨てると、今度はシノトの方からテクノバーンに剣を向ける。


「さあ続けましょうテクノバーンさん。俺もあなたも、たぶんどっちも正しい。でもどっちか一つに絞らないと、きっと神様は許してくれないでしょうね。」

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