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狂ったリクツの絶対正義  作者: 狂える
三章 狂人の抱く夢
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第六十三話

ローグの街から遠のく二匹のワイバーン、岩陰からそれを覗いていたリザルトは深く息を吐いていた。


「隊長はうまくやったみたいだな。」


「本当に大丈夫かしら・・・・・・。」


「心配するなら、それだけ早く奴らを殲滅しようぜ。やつらは兵士としては上等だが、今の俺達が相手をすればそう手間もかからない。ある程度やってしまえば手を貸しにも行けるだろう。」


リザルトよりさらに背後から、チクキーが小さくなっていく影を見て独り言をつぶやくと、リザルトが励ますようにその頭を撫でようとする。しかしチクキーが身を引いたことでその手は空を切った。リザルトがしゃにむに頭を撫でようと手を伸ばし、チクキーが素早くそれを回避していく攻防のさなか、二人の元へ兵士が駆け寄ってきて礼を取る。


「隊長、本軍が侵攻を始めました。」


「その隊長って言うの紛らわしいから名前で呼べって言っただろ。さあ行くぞ、俺たちの目的は敵後方からの潜入と挟撃だ。あああと、その前にこれだけはいっておく。」


リザルトは立ち上がると、彼より後ろに控える兵士達を見下ろした。その皆がみな緊張しきった表情をしているのを見て、剣を抜き空に掲げる。光が反射した剣は、もうひとつの日のように兵士達を明るく照らした。


「誰も死ぬな!命の危険を感じたらすぐさま逃げろ!それが戦うって事の条件だ、分かったな?」


リザルトの言葉は、兵士達に行き届いた。その返事は歓声となって返ってくる。変わった兵士たちの表情を見て満足そうにするリザルトに、チクキーは一人冷めた目でリザルトを見上げていた。


「あなたの言っていること、意味がわからないんだけど。」


「嬢ちゃんも、逃げたくなったらいつだって逃げていいんだぜ?」


「冗談言わないで。与えられた任務は死んでも達成するわ。」


チクキーの表情が一転、冗談の混じらない真剣なものに変わる。その表情に少し複雑な表情になるリザルトだったが、それにも構っていられないのか声はかけず、兵士達にゆっくりと進軍するように指示を出した。











「やっぱりというか、まあそうですよね。」


ワイバーンに乗りテクノバーンを追いかけ、やがて周りに何もない殺風景な場所に降り立ったシノトは、先に降り立って一人シノトを待っていたテクノバーンを見て、ひとりそんな事を零した。周りに人の気配がなく、隠れようにもそんな場所は見当たらない。しかしこれはシノトの予想の範疇にあることだった。


「呼ばれたみたいなんで来ましたが、一人みたいですね。」


「全員でやるには少し人手が足りないみたいですので。期待させていたら済みません。」


シノトは地面に降り立つと、先に来ていたテクノバーンと同じようにワイバーンに離れたところに行くようにと指示を出した。少々渋ったようではあるが、ワイバーンはすぐに姿は見えなくなる。


テクノバーンは、シノトの下げている剣の数を見て苦い顔をした。理由はきっとシノトが紫色の剣を三本、腰から下げているからだろう。数があればいいというわけではないのだが、念の為にシノトはできるだけ多く持ってきていた。テクノバーンはそんなシノトの装備を見て自然と唸り声を出す。


「しかしその数、ソーンのものだけではないですね。ガルバレイも支援に来ていると思っていいのか、これは厳しい。」


「全くその通りなので否定はしませんが、よく知ってますねそれ。」


「それはそうですよ。ガルバレイとニイドは二つとも最も古い国、最も長く争っていた国ですから。古い

武器を多く保有しているとなれば、当然それ相応に歴史のある国かそれを侵略した国しかないでしょう。」


そう言って、ふとテクノバーンはシノトから視線を外した。シノトは一瞬何事かと勘ぐったが、その方向がローグの街だと気づくと何か気づいたらしい。


「仲間が心配ですか?」


「どうかな、君達と違って僕らは仲間を信頼していますから。彼らならきっと大丈夫でしょう。僕としては君自身の心配の方が先ではないのかと思うけどね。」


「俺は負けませんよ。あなたは手ごわいですが、勝ってみせましょう。」


堂々とのたまうシノトに、テクノバーンは剣を向けた。いつの間にか真剣な表情となったテクノバーンは今にも飛びかかりそうな気迫を放っていたが、なぜだかいつまでも動こうとはしない。真意を測り兼ねたシノトが口を開こうとしたところで、テクノバーンの方がそれを読んでいたかのように先に口を開いた。


「笑わせるなよ。剣を突きつけられた相手を一切殺す気がないお前に、僕が殺せる訳無いだろ。なぜだ、東砦では誰ひとり生きて返さなかったおまえが、なぜ誰も殺そうとしないんだ!」


「簡単なことです。殺せと言われていないんでね。」


さして考えてもいないような即答に、質問したテクノバーンの方が動揺が大きかった。シノトをじっと見ると諦めたかのように剣を下ろし、ため息をつく。


「殺せ・・・・・・殺せと言われない限り殺す気はないと?それで納得してるんですか?」


「納得もなにも、あのときはそれが夢だったのでね。」


飄々と喋るシノト」の姿に、思惑通りに行かなかったのかテクノバーンは頭を掻いていた。次にもう一度ため息をついたあと、再びシノトに剣を向ける。


「どちらにしろ僕のやることはひとつ、勇者殿。これで三度目の勝負、さっさと勝敗を決めてしまおうか。」


「こちらこそ、これで最後にしたいものですね。」


シノトがテクノバーンの変化に気づき、剣を一本引き抜く。一触即発の空気が流れる中、先に動こうとシノトが僅かな身動きをしたとき――――――シノトの視界は白一色に染められた。

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