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狂ったリクツの絶対正義  作者: 狂える
二章 狂人は新しい夢を見た
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第四十五話

「ようこそ、あらソーンのかたですね?」


シノトはとりあえず普通の方法で町に入るため、街の大門の一つに来ていた。もちろんワイバーンは街よりかなり離れた森の中で大人しくしてもらっておいている。シノトは前に手に入れたフードを深くかぶって衛兵のところまで来ていたが、それが何に変色しているのかは衛兵にもひと目で分かったようだ。


しかしだからといって何ができるわけでもなく、シノトは仕方なくそのままフードの奥から衛兵を観察する。だがそんな心配も杞憂だったようで、衛兵はフードを取るように言うこともなくいくつかの質問でシノトを通そうとした。


「・・・・・・私がどんな人間か、確認しなくていいんですか?」


それはおせっかいからくるものではなく、ただ単に衛兵として機能していないと判断したゆえに、何か裏があるのではないかと勘ぐったからだ。だが衛兵の返答は、シノトの予想とは随分かけ離れていた。


「ああ、つまりあなたはこの街が初めてということですね?」


疑問に疑問で返されシノトは一瞬困惑したが、それよりもその二つがどう結びつくのか気になったのか、素直に頷く。衛兵は視線を時計にやり、そのあとでシノトに安心させるように笑顔を作るとこう説明した。


「まず誤解を招かないよう初めに言いますが、私どもは別にあなたを信用してはいません。もちろん私たちはあなた個人のことをあまり知りませんし、本来それは当然のことです。」


ですが、と続ける衛兵。そのどこか自信いっぱいに語る緑色の瞳を見て、シノトはこの衛兵がまた独特な価値観を持っていることを悟った。――――――そう、ここガルバレイ国はソーン国の人間の髪が黒いように、ニイド国の人間の目が金色の輝きを放つように、その髪と瞳の色は若い若葉のような緑色をしていた。もっとも、ここに来る前の街でそれを知ったシノトは当然そのことで驚きはしないが。


「私達はあなたのその目と、髪の色が示すあなたの祖国のことを信用しております。ですからこんな簡単に通すのです。ここではあなたの血と故郷に誇りを持って過ごしてくださいね。」


「話が飛びすぎてはいませんか?急に、というわけではないですが嘘臭く聞こえますよ。」


シノトは半ば呆れ気味にそうつぶやくが、衛兵はそれに気づかないのか表情には喜色があふれている。それがますますシノトを呆れさせているということも、もちろんこの衛兵は知らなかった。


「そういえばそうでした、あなた方からすればあれは普通のことなんでしたね。黒の民はこの街でほとんど悪さをしませんし、何よりあなた方には善人が多い。そして悪人であれば同族であろうとも殺してしまう正義感がある。これが理由ですが、納得していただけましたか?」


淀みない口調で話される衛兵の言葉に、シノトはフードの奥で眉をひそめた。もし衛兵の言葉を信じるのてあれば楽ではあるのだが、何分シノトはソーンの国の人間の知り合いが少ない、つまりこんな話を聞くのは初めてなのだ。ここまで来るのにソーンの国をわたってきたが、街を大きく避けて飛んできただけだったのがここに来てアダになっていた。


少し考え、そしてシノトはそれが今考えるだけ無駄だと判断すると小さく一つため息をつく。それはいまシノトの目の前にいる衛兵も気づかないほどの小さなものだった。


「・・・・・・それってずっと前からなんですか?」


「いえ、実はこれ国王様がずっと考えられていた政策の一つでありまして、つい半年ほど前にこうやって施工されたものなのです。」


衛兵の答えは、シノトが予想していた答えのうちの一つに当てはまっていた。それと同時にその目的もある程度理解する。シノトがそのことについて少し考え込んでいると、何を思ったのか衛兵はここを出るように促すとともにひとつ、こんなことをシノトに話した。


「あなたの国が今どんな状況にあるのかは知っておりますし、それに対して私達は今まで何もしてきませんでした。ですが、今日ここを出てすぐのところで、あなた方の希望になるような催しが行われる予定です。ぜひ見ていってくださいね。」


衛兵が言うその何か、最初シノトには検討もついていなかったが、初めて見るガルバレイ国の首都、その風景でそれを知ることになった。











街に入ってすぐ眩しいほどに緑色に輝くのは、視界いっぱいに集まっているガルバレイ国の人々の髪の色だった。その光景だけでも生粋の日本人だったシノトには真新しいものだったが、彼らが目を輝かせ沈黙してみているものはそれに輪をかけて違和感に包まれている、シノトはそう感じたのかフードの奥で密かに眉をひそめていた。


ニイド国ともソーン国のそれとも違う形の鎧は、鈍い日の輝きを反射させて列をなす。当然一国の首都でそれが他国のものであるはずがなく、それがガルバレイ国の兵士であるとあたりを付けるシノトは、同時にそれが戦いを前にした一つの軍隊であることも理解した。軍隊の前にある台には老人が立っており、これから出会う恐怖に億さない勇気を兵士達に沸き上がらせているところだった。


「なるほど、希望ね。」


シノトはその光景、さらに先ほどの衛兵が言っていた言葉から大体のことを理解した。しかしそれに裏付けがあるわけでもなく、シノトは近くにいた女性に声をかける。


「ちょっとすみません、あれについて。」


「あらやだ、お礼なんていいのよ。言うなら国王様と立ち上がった騎士様達に言わないと。」


「いえ、そうではなくて。戦争は結構前ですよね、なぜいまさら兵士が?」


女性はシノトに話しかけられた途端になにか口走ったが、シノトは話をはっきりさせるためにきっちりと否定する。シノトの疑問に、女性はさして何を考える様子を見せなかった。


「さあ?でもあなたの国、苦しんでいるそうじゃない。彼らがいればきっと心強うと思うわよ。」


「言い出したのはいったい誰なんですか?」


「お触れを出したのは国王様よ。」


女性の答えに、シノトは自然と表情を崩す。お礼を言い、その場を後にした。だがその場を離れようとしたとき、もう一度居並んだ兵士たちの方を帰り見る。どこか今まで見た兵士の中で一番見劣りしそうな集団は、それでも胸を張ってそこに立ち上がっていた。


「仲間ねえ。」


シノトはひとりつぶやいた。それはこの国に来た目的、そしてシノトがこれから巡り合わなければならない相手。実のところシノトには心当たりがあまりないのだが、なんとなくその一番の候補を見つけたからか表情も明るくなっていた。


「まあひとまず、探してみましょうか。」


そうつぶやいたシノトは、意外と多い人通りに透けるように消えていった。

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