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狂ったリクツの絶対正義  作者: 狂える
二章 狂人は新しい夢を見た
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第四十話

ユーサ リザルトは、今の自分の状況を仕事だとしっかり理解しているつもりだった。


もともと傭兵として仕事をこなしていたとはいえ、あまりお金に余裕があるとは言えない生活をしていたリザルトは、日銭を稼ぐために様々な仕事に手を出していた。もちろん信用を失うような仕事は今後に関わるのでしておらず、その代わりに便利屋みたいなことならいくらでもする。お使いから探し物、食堂の手伝いから、それこそ傭兵には似つかわしくない子供のお守りまで―――――――


「こら、何か言わないかリザルト!主人を退屈させる従者ではお主が私について来た意味がないではないか。」


「・・・・・・ああ、それは済まないなブルータル坊。話は聞いてやるからどんどん話せ。」


その適合性を見込まれて戦力として国軍に入った今でも、リザルトは自分が子守をしているような錯覚を覚えていた。いや、錯覚というのはもしかしたらリザルトのきのせいかもしれない。なにせリザルトがいましていることは同じ部隊に席を置く同僚、ブルータルが大隊に先駆ける先遣部隊、その中の他の隊員に迷惑をかけないように見張ることだったのだ。事あるごとにブルータルを受け流すリザルトの姿は、傍から見れば子守以外の何者でもなかった。


心のどこかでそれを理解しているのか、どこかやりきれない表情のリザルトにブルータルは子供のように顔を真っ赤にする。いや、子供のようにではない、本当に子供なのだ。シノト リクツと言うオリジナルと同じ身体能力を手に入れた七人の中でも最年少なのは伊達ではない。


「その反応、その反応なのだ!さては私の話を聞いていないな?従者としてあるまじき応答ぞ、隊長殿になんと言われるか怖くはないのか!」


「あー、確かに隊長は怖いな。まあ別にいいじゃねえか、ほらこれを食って期限直せよ。」


「おまえ私を馬鹿にしているのか!さっきで最後だといっただろう!まだあるというのなら是非ともくれ!」


とたんにブルータルが騒がしくなったので、ユーサは袋から取り出した手作りの菓子をほおってやった。ちなみにリザルト、ブルータルを始め先遣隊の面々は馬で移動している。自然、不安定な体勢で受け取ることになるのだが、ブルータルは難なくそのお菓子を取ると早速口に頬張っていた。


「・・・・・全く、特務隊というからどんな人間が来るかと思ったら。こんな子供とその付き添いとは、もしや上は我々の役割をお忘れではないでしょうな?」


ユーサがブルータルの菓子を頬張る姿に年相応の子供らしさを見ているとき、ちょうどリザルトの隣まで馬を進めていた男がそんなことをボソリとつぶやいた。リザルトがそちらを向くと、今回リザルト達が派遣された先遣隊の隊長がこちらを見てため息をついている。リザルトがそれに吊られてついため息をつくと、男の視線が一気に剣呑なものになった。


「貴様、今どういうつもりでそのため息をついた?」


「従者としてその態度はどうなんだ?主人の品格を問われるような従者など今すぐに打ち捨てられても文句は言えないのだぞ?」


男と、なぜかブルータルが馬を器用に操ってリザルトに詰め寄った。男の方は目の奥に怒りを見せ、ブルータルの方はどことなく次の菓子を期待している。ブルータルはともかく、男の方に溜めに溜まった何かを感じて、そう簡単に収められるものではないと判断したリザルトは面倒なことになったと思わずため息をつきそうになったが、その時急に何か感じたのか馬を止めた。


「おい貴様、なぜ馬を止める?」


「・・・・・・あんたはここで引き返してくれ。これはまたまずいことになったぜ。」


リザルトに続いて先遣隊の面々が馬を止める中、男が訳を問い詰めるがリザルトはその言葉に耳を貸すことなく腰から剣を引き抜く。鋼とはまた違う紫色の輝きに男は思わず目を丸め身構えたが、ブルータルはその行動を見てやっとことの次第を把握した。


「なるほど、敵が近くにいるのだな!よくやった従者よ、大手柄だぞ!」


「敵だと!?そんな、人影なんてどこにも見えないが・・・・・・。」


男のつぶやきは、そこで途切れていた。先遣隊の面々の視線は、彼らが通る道、そこに今歩いて割ってはいろうとしている人影に注がれている。先遣隊に瞬時に走った緊張とは対照的にゆったりと歩く影は、道の真ん中まで来るとそこでリザルト達のほうを向く。その人影の顔を確認したリザルトは、手袋越しに剣をさらに強く握り締めた。


「本当に生きてやがったか、まったく。この短い期間で回復しきってるなんて・・・・・・まあ化け物退治は本業なんだけどよ。」


リザルトの目には、いつか国の訓練場で見た男と同じ顔をした男が自分達に立ちふさがっているように見えた。











時を遡ること少し前のこと。シノト達三人はシノトが仕留めた生き物を回収するために、森の中を静かに移動していた。しかし何故かちゃんとした道を行くのではなく、道なき道を切り開きながらの移動になっている。なぜそんなことをしているかというと、それはシノトがエリザにこんなことを言われたからだった。


「道を通るのはあまりおすすめしないわよ?面倒事が起こるのも滅多なことじゃないしね。」


「それはまたどうして?」


シノトはそう聞き返しながら、そういえばロクカク達も案内をしているとき、ちゃんとした道はなるべく避けるように遠回りしていたことを思い出していた。舗装された道、そこを避ける理由を考えたシノトは、エリザが答える前に答えにたどり着いたのか一人頷く。


「なるほど、これは失礼しました。盗賊ですもんね、指名手配されていてもおかしくないですね。」


「変な早とちりして納得しないの。私達は確かに盗賊だけど、仕事を目撃された相手はみんな殺してるし、指名手配はされていないはずだよ。そうじゃなくて、ほらここってニイド国に近いじゃない?だからちゃんとした道は、かなりの確率で通るのよ。」


「要するに、なるべく争いごとになることは避けたいと。」


シノトがそうつぶやくと、エリザは肩をすくめた。シノトが改めて今進もうとする道を見れば、少し向こうに森の切れ目が見える。真っ直ぐに行けば当然近いのだが、シノトは仕方なく遠回りに目的地へと足を運んだのだった。






「この道を超えればすぐです。」


しかし結局は一つ道を渡る必要があるようだった。道を脇に入って少しの森の中で、シノト達はそろって道の向こう側を見る。もはや目的地は目と鼻の先だった。シノトは二人の方を見ると、お互いに意思の確認をする。


「この距離なら一人で行けますけど、どうですか?」


「ちょっとまって、遠くから馬が来る。話はやり過ごしてからにしましょ。」


エリザがそう言って身を屈めたので、シノトも慌てて身を屈める。すぐにエリザの言った通り馬が来てすぐそこの道に止まったので、来る気配すら感じられなかったシノトは素直な驚きを思わず声に出していた。


「すごいですね、どうやって気づいたんですか?」


シノトのその質問に、エリザは黙るように身振りで返答する。だがすぐそこで馬を止めた男が剣を抜いたとき、エリザは木の葉のような囁きを他の二人に聞かせていた。


「ここを離れるわよ。森の中なら馬も使えないはず、今逃げ出せば逃げ切れるわ。」


エリザの言葉にロマンは相変わらず無言で頷いたが、シノトは反応を見せることなくスグ向こうの男達から視線を離さなかった。その反応に抱いたエリザの不安は、すぐさま現実のものとなる。


「お二人はすぐに逃げてください。俺がある程度ならひきつけられると思いますので。」


エリザは慌てて止めようとしたが、その前にシノトはその場で立ち上がり道の方へわざと目立ちながら歩いて行った。こうなっては誰にもバレずに止めることはできない。エリザはほぼ反射的に腰を上げようとしたが、ロマンに止められてすぐに我に返る。だがここですぐに離れるわけにも行かず、道を塞ぐように立つシノトをただ見守ることしかできなかった。

リザルトさん   十二話のいかつい戦争上がりそうな人 彼の家柄が低いためか子供組の家柄が高すぎるためか年下には舐められがち


ブルータル君   十二話のおかっぱ頭の子供 

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