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狂ったリクツの絶対正義  作者: 狂える
二章 狂人は新しい夢を見た
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第三十九話

四人の自称盗賊団員がシノト達を案内した先は、生き物の気配がまるでしないただの横穴だった。地面には踏み荒らされた形跡がなく、一目見ただけではとても盗賊達が潜む隠れ家には見えない。ワイバーンを近くに置いた一同は、揃って洞窟の奥を覗いた。


「ノアの嬢ちゃん達にはもう言ったけど、俺の名前はロクカク。あの三人は髪の短い順に、サド、ヘイム、ロマンだ。ここであったのもなにかの縁、盗賊団「赤い風のサム」にようこそだ、子連れ兄ちゃん。」


シノトに最初に話しかけていたロクカクと言う男は、道すがら自分達の紹介をしていた。ロクカクが自分の名前と、それに続いて他の男達の名前を出すたびにシノトがその男に視線を移し、男達はそれに気づいて頭を下げる。三人が三人とも山のような筋肉をしている割に気が弱いらしい男達は、何故か移動中ノスタルジアと遊んでいる時も言葉を発しようとしなかった。しかしそれは意図してなのか、ノスタルジアが話しかけても男達の反応は身振り手振りのみだ。


「えーと、ロクカクさん。それはわかりましたけど彼らはなぜ喋ろうとしないのですか?」


その言葉を聞いてなにかまずいことがあったのか、ロクカクは急に身振りが怪しくなる。それがどこか慎重に言葉を選んでいるように見えたのはともかく、シノトが特に気になったのはロクカクはなぜかその言葉を発することに恥を感じている様子だったことだった。


「ほら、ノアの嬢ちゃんっていうよう・・・・・・女の子がいるだろ?それで緊張しているんだよ。何も珍しいことじゃないだろ?」


「・・・・・・・・・・。」


間があって、恐る恐るシノトの反応を伺うロクカクを、シノトはそっと鼻で笑った。


「思ったよりも深刻でなくてなによりです。ところで誰かが立ち入った形跡が見えないんですが、本当にここがそうなんですか?」


「このやろう、俺は一応年上だってのに。まあ兄ちゃんにバレるようならここはとっくに見つかってるわな。とりあえず見ててくれ、きっと驚くぞ。」


ロクカクはそう言うと横穴の入口、凸凹した壁の一部に手を置いた。何をするのかとシノトは一連の動作を眺めていたが、突然どこかで鹿威しのような音が響いたかと思うと洞窟の天井が降り、上へと通じる新しい道がそこに出来る。


「どうだ、すごいだろ。俺達は昔正規軍で戦ってたんだが、敗走中にたまたまここで見つけてな。正規軍にいたってろくな目にあわないことは既に知っていたから、そのままここに住み着いたってわけだよ。今は金人の商隊の積荷で食いつないでいるところだ。」


「なるほど。ところで上があなた方の住処として、下はどうなのですか?普通に行き止まりですか?」


シノトの口をついて出た疑問に、ロクカクは口元に笑みを浮かばせた。


「俺達はしらないが、見てみたいというなら止めはしないぜ?まあここに生き物が住み着いていないのを考えれば、大体想像は付きそうなんだけどよ。」


ロクカクのその言葉で大体想像がついたシノトは、新しくできた道を見てとりあえずワイバーンをどこに停めておくかに興味を移すことにした。











自称盗賊団の住処は、とにかく薄暗かった。どこかに通気口でもあるのか空気は外と大差なかったものの、とにかく所々に散らばるうすぼんやりした明かりは、どこか見ているものを不安にさせるところがある。実に不気味だ。


「そうですか?僕こういう隠れ家的なもの大好きなんですけど。雰囲気もバッチリ出ていて、なんかこう興奮しますね。」


「俺もそんな感じじゃないけど、まあこういうのは受け取り手次第の話だしなあ。」


シノトとカレジの二人がそんなことを話している間に、全員が通り終わったあとロクカクが入口を元に戻したことでシノト達は後戻り出来なくなっていた。目の前に広がる道の先に何があるのか、シノト達はその足でもって確認するため先に進む。道の先はなかなか長いのか、点々とする明かりがあってもシノト達の位置から洞窟の終わりを見ることはできなかった。


「思ってたよりも深そうですね。ここはいつもこんな明るさなんですか?」


「俺らはこれくらいならすぐに慣れるからな。むしろ近々収穫があったから、今日は明かりが多い方で・・・・・・それにここは奥が長そうに見えるが、少し先で曲がってそこが俺達が普段住む場所だから、そう歩くこともないぞ。」


ロクカクの言うとおり、確かに少し歩いただけで脇に伸びる道がシノトにも目視できた。その道を曲がると、変わらぬ明るさで灯された道の先に、簡素な作りの戸がある。シノトはさっと周囲に目を通したが、罠らしい罠は見受けられなかった。


「サム、帰ったぞ。見てみろ、珍しいお客様だ。」


「・・・・・・お前は、声でかろうじてわかるからいいが、何度合言葉を言えといえば言うことを聞いてくれるんだ。」


ロクカクが戸を叩くと、しばらくして苦言とともに他の男達に比べてまた若そうな一人の男が、静かに開いた戸から顔を出した。目の上に走る大きな傷跡が印象的なその男は、シノトよりも低い位置にあるその頭を動かし、ロクカクに後ろに並んだ面々をみて顔をしかめる。


「ちゃんと仕事はこなしてきたようだな。・・・・・・まあ完全に行き来を止められても仕事に差し支える。今日通る商人がいたとしても見逃してやろう。」


男はそう言うと、戸を開いて中に入るように手で示した。まずノスタルジアとクル、サド、ヘイム、ロマンが入り、続いてシノト、ロクカクと続く。その間、戸を潜る面々を男が睨み続けていたのを見てシノトも少し顔をしかめたが、目ざとくそれに気づいたロクカクが慌てたように小声でそっとシノトに囁いた。


「サムの隊長は顔をしかめる癖があってな、あまり良くは思えねえかもしれないが勘弁してくれ。あれでも人柄は良いし、兵士としての能力も高い人なんだ。」


癖ならばしょうがないと諦めたのか、シノトはその言葉を聞いて眉間の皺を消して頷いた。そんなやりとりがあったと知るのか知らないのか、サムと呼ばれた男は扉を閉めるとシノト達を一瞥し、続いて説明を求めるようにロクカクに視線を移す。ロクカクも慣れたことなのか、サムが何も言わずともシノト達と会った経緯を説明した。


「・・・・・・なるほど、こんな国境付近で子供ばっかりなのにも説明がつくな。話は聞いていると思うが、俺がここの長のサムだ。快適とは程遠い場所だが、まあくつろいでいってくれ。」


サムは簡潔にそう言うと、用があったのかすぐにロクカクと部屋を出て行った。シノトはそこで改めて部屋を見渡したが、居住区というだけあって今いち統一性がないものの家具らしきものはいくつか備えてあった。しかし寝具がないところを見ると寝室はまた別の場所にあるようだ。


「あら、これまた随分と若いお客様ね。まああの戦争でたくさん死んだし、残っているのは戦いに出なかった若い子達がほとんどなのは仕方がないことなんだけど。」


シノトが部屋の観察を終えた頃、部屋の戸から首が覗いた。始めシノトはてっきりサム達が帰ってきたものと思ったが、その声と覗く顔は若い女性のものだった。少し赤みがかかった黒髪のその女性は、部屋にいるシノト達を見つけると興味深げなまなざしを向ける。


「エリザよ、ロクカクさんから話は聞いたわ。よろしくね、子連れ兄ちゃん。」


そう言うとエリザは扉からひょこっと姿を現した。シノトはいかにも年若いこの少女が盗賊団なるここにいることに違和感を覚えたが、ロクカクが言っていた他にいる四人の中にはもしかしたら彼女も含まれているのかと考えたら妥当な気がしたので何も言わなかった。


「自己紹介ありがとうございます。ところでここを出たいのですが、どうやったら出られるか教えてくれますか?」


ここに子供達を残してもいいと判断したらしいシノトは、とりあえず最寄りの用を済ますためエリザにそう言った。エリザは最初驚いたように少し目を見開いたが、シノトの表情を見て考え込むように口に手を当てると、唸りながら首を横に振った。


「それはサムに聞いてみないとわからないけど、ここはお気に召さなかった?」


「ここらへんで殺した動物を外に置いてきたんです。そう時間は経ってないんですが、今のうちに持ってきたほうがいいと思ったので。」


シノトはそういうが、エリザはしばらくシノトを観察するようにつま先から頭の上まで何度も眺めていた。そしてまた考え込み、頭を振るとノスタルジアとクルにつきそうようにそびえ立っていた三人組のうち、一人に声をかける。


「ロマンさん、シノト君が外に出るから一緒に行きましょ。ご同行いいかしらシノト君?」


男は最初自分のことかと自らを指さしていたが、それにエリザが頷くことによって諦めたのかエリザの方へ寄ってきた。シノトは男に申し訳なく思ったのか少し頭を下げたが、男は相変わらず無口で、その代わり身振り手振りで自分の気持ちを伝えるのがうまい。


「お気遣いありがとうございます、こちらこそよろしくお願いしますね。」


エリザに続いて、シノトとロマンは部屋を出ていった。











盗賊団の住処を出てすぐのことだったが、エリザが吸い寄せられるように寝ているワイバーンのところに寄っていった。ロクカクから話を聞いていたのかワイバーンがシノト達の連れと知っているらしく、近づくとシノトの方を見て触っていいかどうか確認を取っている。


「これがワイバーンかー。ここまで近くで見るのは初めてかも。」


最初はおっかなびっくり、すぐに大胆になるのは彼女の性格をそのまま示しているかのようだった。優しくワイバーンをなでている彼女の様子はとても穏やかなものだったが、その瞳の輝きが彼女がいかに興奮しているのかをシノトに伝えている。シノトはしばらく彼女が気の済むまで待っていたが、直にしばらく待つ必要があると思ったのか気になっていた事を聞いていた。


「思ったのですが、あなた方の住処にこんなに近くていいんですか?下手すると誰かに見つかる羽目になると思うのですが。」


「繋いでいないし、寝てるだけならとても人を乗せるようには見えないから大丈夫だと思うよ?まああそこだと出口近くに張られるのは困るけど、この子がいるなら長居するようなのもそういないでしょ。」


なんとなくそんな事を言うエリザに、シノトは周りを見渡しながら唸り声を上げていた。さて、エリザが気の済むまでワイバーンをなで終えると、立ち上がってシノトに急ぐように催促する。


「さっさと用を済ませて肉の処理しましょ?まさか私達には食べさせないとか言わないわよね?」


シノトはその言葉に愛想笑いで答えながらも、ワイバーンの食事が残るかどうか不安になりながらも二人に先立って進んだ。

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