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灰色の薔薇  作者: 白夜琉音
9/22

9.意外遭遇



20分が経過した。

今のところ後輩の監視によりSPの動きに異常も無い。


予定より早く、消せるだけの痕跡は消し終わった。


とりあえず、後は動かずにじっと待つとしようーーーーー


『っ先輩!!』


突然、後輩からの通信。


「…なんだ、イレギュラーか?」


目標(ターゲット)の秘書が何故かこっちに向かってます!

くそ、予定と早すぎる!』


「…とりあえず落ち着け、ここは寝室だし秘書が立ち寄る心配はないだろう。

ところで何故急に戻ってきたんだ?」


『わかりませんが…秘書だけ戻るってことは急な来客でしょうか…

それか俺達の目標物を取りに…?』


「まさか…。

だが、解読はあと10分ほどで終わる。ちょうど帰ってくる頃に俺らは撤退だから何も問題はないさ」


『無事終わるといいですけど…』


流石に急な来客は防ぎようがなかったか。


とりあえず、何かあっても冷静に行動すればなんとかなるだろう。


電話を切り、脱出用の細工用具以外を鞄にまとめてじっと10分を待つことにした。



*


10分後。


「えーっと…ここでいいのかなぁ…?」


上を見上げるとかなりの豪邸…


真っ白に塗られた綺麗な壁がかなり遠くまでめぐらされている。


「セキュリティ硬そうだな…絶対怖いことなんて出来ないわ…」


別に物盗んだりなんてしないけどさ。


私は秘書さんに電話をかけた。


「あ、もしもし?」


『今どこにいらっしゃいますでしょうか?』


「えーと、おそらく木村様のご自宅の前にいらっしゃると思います」


『…おや?私も家の前にいるのですが…もしかして曲がる路地を1つ間違えていらっしゃいませんか?』


私は調べた地図をもう1度見た。


あれ…?もししなくても…


………間違えてた。


「……すみません!あと5分ほどお待ちください!!」


秘書さんは電話越しに少しだけふっと笑った。


『はい、お待ちしております』



*


遠くで物音がした。


先程から10分が経過。少し早いがおそらく秘書が帰ってきたのだろう。


後輩は「もしかしたら目標物を取りに来たのかもしれない」と言っていたが、ここは寝室である。


例え秘書でも、寝室という極めてプライベートな空間に入るとは思えない。


しかし、金庫にあるものは寝室に入ってまで取り出そうと思える物でもある。


「微妙な所だな…」


いざという時に備え、撹乱する道具は出しておくか。




扉のそばに耳を当てると僅かではあるが話し声が聞こえる。


やはり来客だろうか。



そう思ってちょうど金庫を見た時に解読が完了した。


後は目標物を見つけて持ち帰るだけだ。


俺は金庫に向かい、音を立てずに、静かに金庫の扉を開けた。



中には5枚ほどの封筒があった。


この中の一つが今回の目標物だろう。


更なるセキュリティが無いことを確認し、5枚の封筒を取り出して一つ一つ中身を確認していく。


最初の3枚は木村の家族の個人情報や書類だったのでそのまま元に残した。


4枚目は木村が所属する党の誓約書。


そして最後の5枚目はーーーー


「【重要】サンシティ株式会社 極秘投資の件について……



………300万の振込みを………」




当たりだ。


俺はすぐさまその封筒だけ抜きとり、鞄にしまった。


「見つけた。今から撤退だ、準備はいいか?」


『…はい!いつでもバッチリです!』


金庫を静かに閉じ、鞄を手にして窓を開けた。



窓の外へ出てから侵入した際に使用したワイヤーを引き上げ、家の塀を超えて歩道を降りる。



回りを見渡してもSPの気配は無かった。




俺は何事も無かったかのように木村の自宅を後にした。


この先の路地を曲がれば、完全に任務完了となる。



「撤退完了。防犯カメラ、戻していいぞ」


『あ、了解しました。じゃあ、任務完了でOKですかね?』


「ああ、とりあえず(ブツ)は……」


…そう言って路地を曲がろうとするとーーーーーー



「い、一条さん?!」


「…………え?」


予想だにしない人物に出会ってしまった。




*



な、ななななんで一条さんがここに?!?!

てか、安静にしてないのがバレたー!!!


「あ、え、えと」


意外にも、一条さんも少し驚いているようだった。


「……具合、治ったみたいだね。


ところで、何故ここに?」


「え?!えーーーと……」


専属家政婦を頼まれた人を前にして、次週の依頼の話をしに行くなんて言えない………


私が返事に困っていると、彼の方から口を開いた。


「…ごめん、ちょっと忙しいから先に失礼する。

あ、明日またよろしく」


「は、はい」


去り際にしっかり微笑を浮かべ、私の来た道へ去っていった。


あぶなかった……

専属家政婦について問い詰められたらどうしようかと思った。


まあ、私の答えは変わらないんだけど…


そういえばなんで一条さんはここに居たんだろうか?


…何はともあれ、早く木村議員の家へは行かないと。


私は目と鼻の先にあるーーー次こそ間違えずにたどり着いたーーー家へ歩いていった。



その時はまさか、私の答えが変わってしまう出来事が起こるなんて知らずに。

そろそろセンスのあるサブタイトルが思いつかなくなってきた…笑

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