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08 俺、日々の地道な努力が大切とドヤ顔で語る

「目が覚めたのに、まだ夢の中、だと……?」


 おかしい。いくら夢だから体感時間がいい加減とはいえ、寝て起きて朝になってもまだ覚めないなんて。

 これ、もしかして夢じゃない……?

 俺、本当に異世界にいるの……?


 ま、いっか。

 夢から覚めたら会社に行かなきゃいけないし。

 むしろ本当に異世界のほうが嬉しい。

 二度と日本には帰らないぞー。


「あ、テツヤさん、おはようございます!」


 アリアは床で腕立て伏せをしていた。

 それも顎が床にくっつくような、ちゃんとした腕立て伏せだ。


「おはようアリア。何してるの? いや腕立て伏せなのは分かるけど」


「朝のトレーニングです。冒険者は強くなければ駄目ですからね。当然のことです」


「へえ、偉いなぁ」


 俺なんか歩くだけでレベル上がるのに。

 なんか申し訳なくなってきた。


「けど、アリアはもう借金返し終わっただろ? まだ冒険者を続けるのか?」


「当然です。借金を返し終わっても、それで人生が終わるわけではありません。私はこれからまだまだ生きていかねばなりませんから。お金を稼ぐために働かなきゃ駄目でしょう?」


「けど、だからって冒険者なんて危険な仕事じゃなくてもいいと思うんだけど。他の仕事に就くって選択はないの?」


「今更そのつもりはありません。私はもっと強くなりたいんです」


「へえ。何で?」


「強さがあれば、理不尽に立ち向かうことが出来ます。自分を守るだけでなく、誰かを助けることも出来ます。テツヤさんと出会ってますますそう思うようになりました。というわけで、私の師匠になってください!」


 何が「というわけ」なのか知らないが、アリアはぺこりと頭を下げる。


「いや、待って。急に師匠とか言われても、何を教えていいのか分からないよ」


「テツヤさんほどの実力者が何を言ってるんですか。レベル141ですよ141。どんな研鑽を積んだらそうなれるんですか? ちょっとでいいので教えて下さいよ!」


「えっと……怒るかも知れないけど……俺、テクテク歩いてるだけでレベル上がるんだよ!」


「そんな嘘で誤魔化せると思ってるんですか! 歩くだけでレベルが上がったら誰も苦労しません!」


 はい。ごもっともです。

 自分でも卑怯だと思います。

 でも本当なんだから仕方がない。

 けど、信じてもらえないんだろうな。


「うーん……あれだ! 強くなるための近道なんてないんだ! 毎日コツコツと修行するしかない! 俺に聞いて手軽に強くなろうというのは間違いだ!」


「はっ! 確かにそうですね……私が間違っていました! 流石はテツヤさん。大切なことを気付かせてくれて、ありがとうございます!」


 分かってくれて嬉しいよ。

 俺、めっちゃ近道してるけど。

 ショートカットにも程があるだろうって感じだけど。

 俺以外の人は頑張れ!


「けど……テツヤさん。偉そうなこと言う割にベッドでゴロゴロしてますね……」


「こ、これは……精神修行だよ!」


「いえいえ。昨日あれだけやる気のなさをアピールしたくせに、今更そんなことを言っても遅いですよ。けれど、テツヤさんほどの強さがあれば、それ以上の修行は不要でしょう。今まで頑張った反動でダラダラしたくなるのも分かります。沢山ダラダラしてください!」


 わーい。この子、甘やかしてくれる。大好き!


「さて。私は冒険者ギルドに行きます。テツヤさんはどうします?」


「あ、ちょっと待って。今、着替えるよ」


 何せベッドごと移動できるのだ。

 布団から出ることなくあちこちに行けるというのは素晴らしいことだ。

 今日はどんなクエストをやるのか知らないが、俺はこの世界の右も左も分からない。

 何が起きても新鮮な気持ちで望めるだろう。

 ピンチになったらテクテク歩いてパワーアップすればいい!

 わーい、お手軽。

 このお手軽さをアリアにも分けてあげたいけど、何か方法はないものか。

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