表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
5/46

05 空飛ぶベッドで町の中を進むのはちょっと恥ずかしい

「はい、皆さん、ごめんなさい。ちょっと通りますよ」


 俺とアリアを乗せたベッドは、町の大通りを進む(アリアいわく、ベイルビアという町らしい)。

 もっと高度を上げれば人をかき分けなくても進めるのだが、俺がこの世界の町を近くから見たかったので、こうして低空飛行しているのだ。


「テ、テツヤさん……これはちょっと恥ずかしいですよぅ」


 空飛ぶベッドに寝そべって町を移動するのが初めてなのだろう。

 アリアは真っ赤になって訴えてくる。

 まあ、俺も初めてなんだけど!


「大丈夫、大丈夫。馬車みたいなものだと思えば」


「かなり違うと思います……」


 ところで町の風景は、中世ヨーロッパ的な感じだった。

 俺が見ているこの夢は、ファンタジー系らしい。

 まあ、ドラゴンや冒険者がいる時点で察していたけど。


 そしてアリアの案内で、冒険者ギルドの前に着いた。

 中に入ると屈強な男たちが沢山いた。

 しかしアリアのような女の子も一応いる。

 どうやら少女が冒険者をするというのは、そこまで珍しいことではないらしい。


 アリアは受付に行って、ドラゴンを倒したと宣言する。


「え! アリアさん、ドラゴン倒せたんですか!? てっきり逃げ帰ってくるかと思っていました!」


 受付の女性はギョッとした顔になる。


「ふふ、私を見直しましたか! と言いたいところですが、あそこにいるテツヤさんに助けて頂いたのです!」


 そう言ってアリアは俺を指差す。

 ちなみに俺は、ベッドごと冒険者ギルドに入り込んでいる。

 入り口が大きくて助かった。

 なにせベッドでゴロゴロするのは至福の時間。

 可能な限りベッドから出たくない。


「テツヤさん……? 何者なの? 空飛ぶベッドごと建物に入ってきた時点で、只者じゃないのはわかるけど……」


 うーむ。

 やはり、かなり変な人に見えるか。


「俺はただの通りすがりです。お気になさらず」


「気になるわ。だってトドメを刺したのはアリアさんでも、実質アナタがドラゴンを倒したんでしょ? 登録がまだなら、是非とも冒険者ギルドに登録して欲しいわ。登録した状態でドラゴンを倒せば、『ドラゴンスレイヤー』の称号が手に入るのよ? 一流冒険者として、どこに行っても一目置かれるわ」


 登録は無料らしい。

 特に損することもなさそうなので、俺は登録することにした。

 水晶玉の上に左の手を乗せて、三秒ほどで登録は完了する。

 アリアみたいに、ギルドの紋章を出せるようになった。

 ちょっとオシャレ。


 あと、登録のために少し歩いたらまたレベルが上がった。


【レベル135になりました】


 他の人のレベルはどのくらいなんだろう?

 というか、俺以外にもレベルという概念はあるのかな?

 あとでアリアに聞いてみよう。


「ふふ。これで借金を返せますよ! テツヤさん、本当にありがとうございました。もう、何とお礼をしていいものやら……」


「お礼かぁ……別にお礼なんていいよ。そんな大したことしてないし」


 本当。テクテク歩くだけでレベル上がるから、何の努力もしていない。

 適当に殴ったりスキルを使っただけ。

 頑張り度なら、アリアのほうが圧倒的に上だ。


「いいえ。ここまでして頂いてお礼をしないなんて、アリア・アストリーの名が廃ります! 何か、私にして欲しいことを考えてください!」


 うーん。そうはいっても目が覚めたらお別れだからなぁ。


「何なら……お、おっぱい揉み放題でもいいですよ!?」


 いいね、それ!

 真剣に考えてみよう!


 ひとまず俺たちはベッドに乗り、借金を返しに行った。

 金貸し屋の扉を叩くと、なにかこう、ヤクザっぽい人が出てきた。

 こ、怖いよー。


「おいアリア! 今週の利子持ってきたのかコラ!」


「ふふん。利子どころか全部返します。ここに金貨百枚ありますからね!」


 アリアはさっきギルドでもらった、金貨がつまった革袋を自慢げに掲げた。

 するとヤクザっぽい人は、革袋ごとひったくる。


「わっ! 何をするんですか、返してください!」


「あん? 何を言ってやがる。お前は金を返しにきたんだろうが」


「私の借金は利子をいれても金貨五十枚のはずです! 半分は私のものです!」


「今まで待たせた詫び料だ。むしろ金貨百枚で済んでありがたく思えよ。ほら、帰れ帰れ」


 これは酷い。

 横から見ていてムカついてきた。

 なので俺はヤクザっぽい人にベッドごと体当たりする。


「とりゃあ!」


「ぐべしっ! てめぇ何しやがる!」


「アリアに金貨五十枚返してくれませんかね?」


「フザケンナコラ!」


 俺の誠意が伝わらない。

 仕方がないので、スキルを使おう。


「フレアアロー」


 ヤクザっぽい人の喉元に、炎の矢を突き立てる。

 あと一センチでも進むと、彼の喉はじゅっと灼ける。うわぁ熱そう!


「な、何だこりゃ! 魔術か……くそ、てめぇ何者だ!」


「通りすがりの新米冒険者です。新米なので手が滑って、このままあなたを焼き尽くしてしまうかもしれないので、早く金貨五十枚返してくださいよ」


「くそ……アリア、てめぇ、こんな用心棒を雇いやがって! 魔術師なんてどこで見つけて来やがった!」


 なんて言いながら、ちゃんと金貨五十枚を返してくれた。

 良かった良かった。


「さて、アリア。君の家まで送っていくから、ベッドに乗って」


「はい。ところでテツヤさん。今日、泊まる場所、決まっていますか? もし決まっていないのでしたら……私の部屋に泊まってください!」


 そんな。女の子が男を簡単に泊めちゃ駄目だと思うよ。

 けど、これは俺の夢だから、まあいいか!

 それ行け空飛ぶベッド。

 女の子の部屋にレッツゴー!

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
このランキングタグは表示できません。
ランキングタグに使用できない文字列が含まれるため、非表示にしています。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ