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46 俺たちのぐーたらはこれからだ

「いやー、厳しい戦いでしたねぇ」


 あの戦いから丸一日が経った。

 ベッドの上でゴロゴロしていたアリアは、思い出したようにそう呟いた。


「うん。あのときばかりは、俺も負けるかと思ったよ」


 なにせ、カルバ山が完全に消滅してししまうほどの戦いだった。

 未だに疲れが抜けないので、家に帰ってきてから俺たちはずっとベッドの上でゴロゴロしている。

 ……まあ、それはいつものことのような気もするけど。


「ねーねー、お兄ちゃん。結局、竜神と戦ったときに出てきた眼鏡メイドさんは誰だったの?」


 同じくゴロゴロしているエリーが、質問を飛ばしてきた。


「そうです、私もそれが気になっていました! 戦いに必死で追及している暇がありませんでしたが……何者ですか! 私よりおっぱいが大きいなんて只者じゃありません!」


 そう、実体化したメニュー画面は、アリアよりなお巨乳な眼鏡メイドだった。

 なぜあんな姿だったのか……。


【それはテツヤ様が私に対して、そういうイメージを無意識の内に抱いていたからですね】


 なるほど。

 確かにそうかもしれない。イメージにピッタリだ。

 おっぱい揉みたい!


【で、では誰もいないときにこっそり実体化しましょう……!】


 わーい。


「で、誰なんです!」


 アリアの追及が止まらない。

 どう誤魔化そう?

 メニュー画面が実体化しましたとか言っても信じてもらえないし、そもそもメニュー画面とはなんぞやという話になってしまう。


「……メイドさんなんかいなかったよ。気のせいじゃないかな?」


「いましたよ! どうして嘘つくんですか!」


「もしかしてお兄ちゃんの愛人っ?」


「愛人!? ちょっとミミリィさん起きてください! テツヤさんに愛人疑惑ですよ!」


「むにゃむにゃ……」


 だんだん話がこじれてきた。どうしよう。


【私はテツヤさんの婚約者ということにしておきましょうか。結婚式直前に事故死して、それ以来、守護霊として取り憑き、いざとなれば実体化するという……】


 信じてくれるかなぁ?


「実は……あのメイドさん、婚約者なんだ。けれど結婚式の直前に事故で死んで……それからずっと守護霊として俺を守ってくれて、いざとなればああいやって出てくるんだ!」


「そ、そうだったのですか! そんな悲しい過去なのに詮索してごめんなさい!」


 一瞬で信じてくれた。アリアは純心だなぁ。


「お兄ちゃんに婚約者がいたんだ……けど、どうしてメイド服だったの……?」


「……俺の趣味だ」


「そ、そうなんだ……じゃあエリーもメイド服着る!」


「わ、私も着ますよ!」


「むくり。話は聞かせてもらった。私もメイドさんになる」


 三人とも目を輝かせ、メイドさんになると宣言し出す。

 これは嬉しい誤算だ。俺はメイドさんが大好きだからね!

 けど、メイド服ってどこに売ってるんだろう?


「たしか、魔法少女の衣装を買った店にメイド服があったはずです! ね、ミミリィさん」


 どんな店なの、そこ!?


「うん。色んな種類があった」


 すげー!

 エロいのもクラシックなのもミニなのもロングなのも色々買っちゃうぞ!

 わっしょいわっしょい!


 と、俺が興奮していると、家の呼び鈴がジリリリと鳴り響いた。

 はて、誰だろう?


「エリーが見てくるー」


 ベッドからぴょんと飛び降りたエリーは、可愛らしくトテトテと玄関に走って行く。

 そしてしばらくすると、


「ぎゃー幽霊娘!」


 悲鳴が聞こえてきた。

 こりゃロゼッタさんの声だな。


「聞いてお兄ちゃん! ロゼッタさんってば酷いんだよ。私の顔を見るなり、お化けでも出たみたいに」


「いや、お化けだろう、キミは……ああ、心臓に悪い」


 エリーは実体化しているのに、それでもやっぱり駄目なんですね。


「それで、なんの用ですかロゼッタさん。はっ、さては昨日、どさくさに紛れてテツヤさんにした告白の続きですか!? 恋のライバルには容赦しませんよ!」


「ち、違う! あれは忘れてくれ! 私は騎士。剣に生きる女だ。そんな恋愛などしている場合では……」


「ロゼッタさん、大丈夫ですよ。俺はいつでも、何人でも受け止めますから」


「そ、そうか! って、そういう話をしに来たのではない! よろこべキミたち。陛下が直々にキミたちへ勲章を授与してくれるようだ」


 勲章の授与かー。

 なんか堅苦しいなぁ。


「あと金貨千枚くれるらしい。昨日はゴタゴタしていて、結局報酬を支払わなかったからな」


「千枚!? 行きます!」


 日本円にすると一千万円以上の価値がある。

 しばらく遊んで暮らせるぞ。


「それからテツヤ。陛下はキミを名誉騎士にしらいらしい。私もキミがこの国の名誉騎士になってくれたら心強い。どうだろう?」


 名誉騎士ってなんだ?

 なんか凄く名誉ありそうな感じだけど。


「何のことか分からないという顔だな。名誉騎士というは普通の騎士と違い、普段は仕事をしなくていい。ただ、今回の古竜復活のような緊急事態には陛下のもとに馳せ参じ、戦うわけだ。キミに向いていると思うのだが。ちなみに、何もなくても毎月、金貨十枚もらえる。戦えばボーナスが出る」


「向いてますね。普段は寝てていいというのが気に入りました」


「凄いですテツヤさん! 名誉騎士さすテツ、ここに爆誕!」


「お兄ちゃんが名誉騎士なら、エリーは名誉妹ね!」


「じゃあ私は名誉……なんだろう?」


 ミミリィは小首を傾げて考え込む。


「ミミリィさんは名誉モフモフですね。ほら、モフモフー」


「や、やめて。名誉なんていらないからモフらないで……」


 アリアはミミリィの尻尾を撫で回す。

 やめてと言いながら逃げない辺り、実はミミリィも喜んでいる?


「キミたちはいつも元気だな……遊んでないで、早く王宮に行くぞ」


「え、今からですか!?」


 勲章の授与って、もっと式典の準備とかするもんじゃないの?


「陛下が早くキミたちに会いたがっているんだな。なにせ英雄だからな。自覚を持て」


 そんなこと言われても、俺は可愛い女の子に囲まれてゴロゴロ出来たらそれでいいという器の小さい男だから。

 英雄なんてガラじゃないと思うんだけど。

 まあ、ゴロゴロ英雄というのがいてもいいかもしれない。


 なんて考えながら、ベッドを離陸させようとした、そのとき。

 ぐらぐらと大きな地震が王都を襲った。


「な、なんだ!?」


 慌てて窓から外を見ると、昼間なのに、空全体が黒く染まっていた。

 そして、真っ赤な二つの目が空に浮かび上がり、王都を見下ろしている。


「くははははっ! 我は魔王なり!」


 今度は魔王か! 忙しいな!


「テツヤさん、さっそく名誉騎士のお仕事ですね。さすテツしちゃってください!」


 アリアはなぜか嬉しそうだ。

 そんなに、さすテツが見たいの?


「仕事なんて面倒だ。さっさと魔王を倒して寝るぜ! いくぞ皆!」


 俺たちのぐーたらはこれからだ!

なんか思いついたら続き書くかもしれません

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