45 スーパーレベルリース
「喰らえ……人間絶対殺すビーム!」
竜神からビームが飛んできた。
名前とは無関係に、とんでもない魔力だ。
あれが当たったら、人間じゃなくても死ぬ!
やはり俺が時間を稼がないとアリアたちが死んじゃうぞ。
「皆、先に行けー!」
俺は立ち止まり、人間絶対殺すビームへと向き直る。
レベルの差は約50000。
勝つのは不可能だが……せめて皆が逃げる時間くらいは稼がないと。
【無茶ですよ!】
ええい黙れメニュー画面。
大人しく防御結界スキルを出せ。
【……分かりました。しかし数秒も持ちませんよ】
覚悟の上だ。俺は人類全体のことを考えられるほどの器じゃない。
ベッドの上でぐーたら出来たらそれで満足な男。
だから、本当は見捨てでも自分が逃げなきゃいけない場面で、こうやって好きな女の子たちを守ろうとしてしまうんだ。
自分勝手と言いたければ言え。笑いたければ笑え。
けれど、俺にはこうするより他にないんだ。
「駄目ですテツヤさん! あなたは死んではいけない人です!」
俺が防御結界を広げようとした刹那。
人間絶対殺すビームと俺の間に、滑り込んでくる小さな影があった。
「アリアッ!?」
俺が受け止めるはずだった人間絶対殺すビームを、代わりにアリアが受けてしまう。
その結果は、考えるまでもない。
即死だ。
俺は倒れた彼女に駆け寄り抱き上げる。
呼吸が止まっている。
鼓動も止まっている。
呼び掛けても返事はなかった。
「うおおおぉぉぉぉアリアぁぁぁあああ!」
俺は絶叫しながら、
「リザレクショォォォォンッ!」
蘇生魔術を使った。
「あ、おはようございます、テツヤさん」
アリアは生き返った!
え、なんで叫んだかって?
雰囲気かな?
「ほう……蘇生魔術を使えるのか。人間にしてはやるな。五百年前の勇者よりも強いぞ。しかし……次の一撃で全員まとめて殺す!」
竜神の放つ魔力は、今までと比べものにならない規模に膨れ上がっていく。
もはや防ぐのは不可能だ。
それどころか、この山ごと消滅してしまう。
「くっ……ここまでか」
「テツヤさん、今までありがとうございました。テツヤさんと出会ってからの毎日は、本当に楽しかったです……」
「テツヤのおかげでお父さんとお母さんに会えた。感謝」
「お兄ちゃんがいなかったら、私、あの家でずっと一人ぼっちだった……ありがとうお兄ちゃん!」
「くっ、テツヤ……こんな状況だから言うが……私はお前が好きだぁっ!」
皆が死を悟り、思い思いのことを言う。
しかし、竜神の一撃はなかなかこない。
「……まだかな?」
俺はついつい聞いてしまった。
「ふはははは! 流石にチャージに時間がかかるのだ。そこで恐怖して待っているがいい人間どもよ!」
「時間がかかるだとっ!? もう時間がないと思ってテツヤに告白したのに、しばらく気まずい時間を過ごさねばならないのか……くっ、殺せ!」
投げやりなロゼッタさん。
大丈夫だよ、俺はロゼッタさんの愛も受け止めるから!
と言いたいところだけど、この状況をどうやって切り抜けたらいいんだ。
【テツヤ様、冷静になってください。レベル10000になったとき得たスキルを使えば何とかなるはずです】
むむ? 何だそのスキルは?
【これです! スーパーレベルリース!】
説明しよう、スーパーレベルリースとは。
相思相愛の相手とベロチューすると、自分のレベルをコピーして渡すことが出来るスキルである。
……何と、分け与えるのではなくコピーと来たか!
前のレベルリースだと、相手にレベルを与えた分、俺のレベルが減っていた。
けどこれなら、ここにいる全員がレベル10000になれる!
「ロゼッタさん! 俺にベロチューされても構いませんね!?」
「なっ、こんなときに!? いや……今が最後のチャンスか! さあ来い!」
アリア、ミミリィ、エリーは聞くまでもない。
というわけで、ベロチュー開始。
んちゅ、ちゅぱ……んっ、ねちゅ……ん、んんっ、はぅ……ちゅ……(かける四)。
これで全員レベル10000オーバー!
合計50000オーバー。
むむ、あと約10000足りない。
【そこで私の出番ですね!】
メニュー画面、何のつもりだ!
【レベル10000になったとき、メニュー画面は実体化の能力を得るのです!】
な、なんだってー!?
と、俺が驚いていると、目の前に爆乳眼鏡メイドが現われた!
「だ、誰ですか、この人は!」
「説明はあとですアリア様。さあテツヤ様。私にもベロチューを!」
「よっしゃぁぁ! ベロチュー!」
これで合計60000オーバー!
竜神を超えた!
「な、何という魔力だ……! しかし、勝つのは我だ!」
「それはどうかな。行くぞ、皆!」
俺たちは竜神へと立ち向かっていく。
そして激しい戦いのすえ――。
『勇者と賢者の酒蔵 ~酒造りの天才が異世界で日本酒を造ってガンガン駆け上がる~』という新作を書いているので、そちらもよろしくお願いします!