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42 行軍開始

 緊急クエスト。

 ニヴレア王国軍に同行し、古竜を討伐せよ。

 このクエストは参加しただけで金貨五枚を出す。

 そして古竜討伐に特に貢献したと認められたものには、ボーナスを出す。

 ただし、これらの報酬はギルドではなく、古竜討伐後、ニヴレア王国軍が支払う。


 こんなクエスト内容が冒険者ギルドにデカデカと張り出された。

 ちなみに他のクエストは全て停止中だ。

 とにかく全力で古竜を倒さなければならないという強い意志が国全体から感じ取れた。


 しかしだからといって、全ての冒険者がこのクエストに参加するわけではない。

 なにせ相手は伝説の古竜だ。

 誰だって命は惜しい。

 だが倒さねば国が滅びる。そして名を上げる絶好のチャンスでもあった。


 そういった思惑が錯綜し、最終的にクエストに参加した冒険者の数は約二千人。

 これはニヴレア王国にいる冒険者の三分の一くらいらしい。

 そして、近隣諸国で活躍している冒険者でも、腕に覚えがある者はわざわざやってきて参加するようだ。


 なのに、他国の正規軍が助けに来てくれるという話は聞かない。

 どうも噂では、ニヴレア王国軍が敗北したあと、その戦いで傷ついた古竜を倒し、ニヴレア王国に恩を売ることを考えているとか。

 大陸が滅びるかもしれないという敵を前にしても政治的駆け引きを忘れないなんて、俺は逆に感心してしまった。

 俺が王様だったら、大慌てで兵隊を送るね。


「テツヤさん、見て下さい。人がズラーッと並んでいますよ。行軍って細長いんですねー」


「そりゃ、何千人も歩いてるんだから、細長くもなるよ」


 学校に通っていた頃、全校集会とかで生徒全員が体育館までぞろぞろと移動する列ですら細長いと感じていた。

 しかし俺たちがベッドから見下ろしているのは、冒険者二千人に、正規軍三千人という大所帯だ。

 いったいどのくらいの長さなのか、見当も付かない。


「先頭にいるのが騎士団か」


 ロゼッタさんと最初にあったとき、彼女は小さな竜に乗っていた。

 それと同じような姿の五十人ばかりの集団が、隊列の先頭を歩いていた。

 あのなかにロゼッタさんもいるのだろう……と考えていたら、騎士の一人がこちらに向かって竜を飛ばしてきた。


「やはりキミたちか。どれだけ離れていても、一発で分かるな」


 飛んできたのはロゼッタさんだった。


「あー、騎士のお姉ちゃんだ」


 ロゼッタを見たエリーは、ベッドの上からブンブン手を振る。


「ゆ、幽霊少女……!」


 ああ、そういえばロゼッタさん、幽霊苦手なんだった。


「大丈夫ですよロゼッタさん。エリーはいい幽霊ですよ」


「いいとか悪いとかじゃない! とにかく怖いんだ!」


 これから古竜と戦おうという人が、幽霊少女にビビってどうするんだろう。

 けど、屈強な武闘家がゴキブリ嫌いということもあるだろうし、古竜は平気でも幽霊は駄目というのもあるかもしれない。


「仕方がない。古竜が出てくるまで、エリーを実体化しておこう」


 俺はエリーの幽霊モードを解除する。


「なっ!? 幽霊が人間になっただと……? テツヤ、君はそんなことまで出来るようになったのか」


「出来るようになっちゃいました」


「ふむ……実体化しているなら、まあ……怖くないか……」


 ロゼッタさんはエリーを見つめ、渋々という感じで頷いた。


「ところで、その魔法少女みたいな格好はなんなんだ?」


「みたいじゃなく、まさに魔法少女なのよ!」


 エリーはドヤ顔で小さな胸を反らす。


「私とミミリィさんで選んだ衣装なのです! 可愛いでしょう!」


「魔法幽霊少女は私たちが育てた。どやぁ」


 アリアとミミリィがエリーを左右から抱きしめる。

 それにしてもこの子たち、三日くらい前までは「古竜怖いガクブル」な感じだったのに、もうすっかり元気だなぁ。


「そういえば、こないだのモンスター大会で魔法少女の格好をしたゴーストが戦っていたと聞いたが……そうか、キミたちの仕業だったのか」


 魔法幽霊少女エリーの噂は王立騎士団まで届いていたらしい。

 もっとプロデュースして、いつかライブとか開こう!


「ところでロゼッタさん、行軍中なのに隊列を離れてこんなところに来ていいんですか?」


「団長から、カルバ山の偵察をしてこいと言われたんだ。で、上空に明らかにキミたちっぽいベッドが飛んでいたから、連れて行こうと思ってな」


「なるほど。お供しましょう」


 というわけで俺たちは、本隊に先行し、一足先にカルバ山まで飛んで行くことになった。

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