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30 でたぁぁぁ!

 これは今から十年前の話である。

 不動産屋の人いわく、その家はとある金持ちの商人の家だったらしい。

 しかし事業に失敗し、商人とその妻は自殺。

 残された一人娘は親戚の家に引き取られた。


 が、その一人娘は親戚の家を逃げ出した。

 そして、もともと住んでいたこの家に忍び込んだ。

 やがて彼女は死体で発見された。

 死因は餓死だった。


 以来、その家には少女の幽霊が現われるという。

 もしかしたら、家族との思い出がつまった家を守っているのかもしれない。


「で、これがその幽霊屋敷かぁ」


 俺は門の前でベッドに座ったまま呟いた。


「見るからに禍々しい雰囲気だな……」


 ロゼッタさんは怯えきった声を出す。


「私には普通に見える」


「ですよね。ツタに覆われてるし、庭に枯れ葉が散乱していますが、掃除したら普通に住めそうです」


 ミミリィとアリアは幽霊屋敷を見ても特に動じた様子はない。

 俺も拍子抜けしていた。

 もっとこう、黒いオーラとか出ていると思ってたのに。


「キミたちには分からないのか! 絶対に幽霊がいるぞ! 引き返そう!」


「ロゼッタさん。さっき自分の名にかけて幽霊退治するって言ってたじゃないですか」


「それはそうだが……心の準備がまだだ。出直そう!」


「思い立ったが吉日ですよ。さあ行きましょう」


「くっ、殺せ!」


 ここで「くっころ」が出るのか。

 オークいないのに。

 どんだけ幽霊怖いんだろう、この人。


 涙目になったロゼッタさんを見ながら、俺はベッドを前に進める。

 門の鍵は壊れており、押すだけで簡単に開いた。

 しかし玄関の扉は、キングサイズが通れるほど大きくなかった。

 残念。

 仕方がないので、歩いて入るか。

 よっこらしょ。

 何だか久しぶりに地面の上に降りた気がする。


 そしてテクテク歩いてドアノブに手を掛けると、新しいスキルを覚えてしまった。


【レベル1000になりました】

【ゴーストバスターのスキルを習得しました】


 記念すべきレベル1000だ。

 そして現状に最適なスキル。

 ちょっとこれ、俺にとって都合よすぎない?

 見張られている気分だぞ。


【そんなことありませんよ】


 そうか、良かった良かった。

 って、メニュー画面に話しかけられた!?


【気のせいですよ】


 ……俺、疲れてるのかな?

 メニュー画面が俺と会話しているように見える。

 きっと幻覚だ。

 気にしないことにしよう。


「テツヤさん。ドアノブを握ったまま固まってどうしたんですか?」


「金縛りか!? やはりこの屋敷の幽霊は強力だ! 日を改めよう!」


「いや、大丈夫です。考えごとしてただけなので。さあ、行きましょう」


 俺はロゼッタさんの訴えを無視して扉を開く。

 中は外見どおり、何の変哲もない家だった。

 かなりホコリっぽいが、十年も人が住んでいないのだから当然だろう。

 人の気配はまるでない。


「幽霊なんていないと思うなぁ」


「私もそんな気がしてきました! こんな立派な家が金貨百枚なら激安です! 買っちゃいましょう!」


 アリアはこの家が気に入ったらしく、大変盛り上がっている。


「もうちょっと見てから決めたほうがいいと思うけど」


 そしてミミリィが真っ当な意見を言う。

 この子は俺たちの暴走を止めてくれる貴重な人材だ。

 これからも頑張ってくれ。


「キミたち呑気だな! 私はさっきから悪寒を感じているというのに!」


 今日は暖かい日なんだけど。

 ロゼッタさんは本当に恐がりだ。

 そもそも、いくらここがファンタジー的な世界とはいえ、幽霊なんて本当にいるのか?

 なんて俺が思っていると、開けっ放しだった玄関の扉がひとりでに閉まった。

 もの凄い勢いでビタンッと。


「うわぁぁっ!」


 ロゼッタさんが悲鳴を上げる。

 その声に驚いてアリアとミミリィもビクッとする。


「大げさですよロゼッタさん。どうせ風か何かで閉まっただけですよ」


「そんなことはない! 絶対に幽霊の仕業……って、うぎゃああああああ!」


 今度は何だろう?

 今日一番の悲鳴だ。

 ロゼッタさん、恐怖のあまり、ついにおかしくなってしまったのかな?


「テ、テツヤ! 私の足首を何かが掴んでる! 掴んでるんだああああ!」


 うるさいなぁ……と思いつつロゼッタさんの脚を見ると。

 床から白い腕がヌッと生え、本当にロゼッタさんの足首を握りしめていた。

 それを見た俺たちは、ロゼッタさんと同じくらいの悲鳴を上げた。

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